私と孤独な深海龍【短編・原作】

神砂アリサ

私と孤独な深海龍

―溺―

【1】孤独

 ぐおんと唸る片隅の冷蔵庫。

 私より、余程「価値のある」存在。


 ナースコールを押す勇気も無い私は、かさかさのベッドで独り。圧し殺した涙が、既に溢れ返った心に満々なみなみと注がれる。


 助けて欲しいなんて言えなかった。

 沢山の優しい人たちに迷惑をかけすぎたから。


 ねえ、どうやって消えようか。


 抱き締めた大きな深海龍は、私とおんなじに震えている。右耳の冷たいイヤホンには未だ、救いのない沈黙が響いていた。

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