第五十八話 奇妙な縁
父であるフランツが今計画しているであろうことや直面している危機について、自分の憶測や見てきた事を交えて説明した。
その過程で上からの圧力の中でフランツの息子である俺が帝国軍に徴兵されたのかもまとめて説明した。
爺さんに俺が帝国軍にいるワケを話し終わると爺さんは深く頷くと深くしわの刻まれた目で俺の顔を見た
「わかった。ワシもここで隠居を決め込もうと思っておったが、こんな若造が頑張っておるのにクサクサしておる場合では無いな」
そういうと、爺さんはニヤリと笑い、いつの間に解いていたのか、ロープから抜け出すとすくっと立ち上がると今までのヨボヨボとした動きから打って変わってくるりと踵を返すと森の中へスタスタと歩いていった
俺は呆気に取られていたが慌てて爺さんに声をかけた
「お、おい!どこに行くんだ?」
「はん!わしはわしにしか出来ぬことをやりに行くのよ。しばしの別れじゃ、お主も生き残れよ」
あまりにも、突然のことに慌てていると爺さんは木のうろの中から緊急のために用意してあったのか、鞄を取り出すと意気揚々と足取り軽く森の中に消えていった。
俺がポカンとしていると森の奥から怒鳴り声が聞こえた
「主要な街道に戻りたければ家の中の地図を使え!目印を追いかければ帰れるはずじゃ!他にも使いたいものがあればくれてやる!」
その声はだんだんと遠ざかり聞こえなくなってしまった。まるでそこには何もいなかったように一陣の風が吹いて落ち葉を運んでいった。
にしても、本当に突然元気を取り戻したな。何があの爺さんのトリガーになったのか知らんが、元気を取り戻せてよかった。
元気が1番って前世の某プロレスラーも言ってたしな。ウンウン
さてと……。ドグとヤウンになんて言い訳しようかな。
俺は少し頭を抱えながらも「まぁ、なんとかなるか」という楽観的なイメージを持っていた。
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ここでの出会いがカナリアという国の歴史において大きなうねりを巻き起こしていくことはこの時の俺はまだ知る由もなかったのである
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