第四十五話 偵察
俺たち4人、改め6人はドグとヤウンを先頭にした縦隊を作って先ほど離脱した戦場が見える位置まで戻ってきた。
「止まれ」
前を歩いていたドグが握った右手を顔の横まで上げると俺たちはその場で静止した
「どうだ?敵はまだいるか」
「そうっすね。今は略奪の真っ最中のようです」
「数は」
「山賊連中はおおよそ100人前後ってところっすかね」
俺の問いに対してヤウンが簡易的な望遠鏡を覗きながら答える
「どうやら山賊共は投降した帝国兵をふんじばって転がしてるようだな。おっ!あの馬鹿少佐もまだ生きてるな」
「彼らは戦力として使えそうなのか?そうなら助けたいところだな」
ドグが報告してくるのを聞いたルイスが1人ごちるのに対してヤウンは険しい顔をして腕を組んだ
「どうっすかねぇ。武器は取り上げられてますし、戦意を失っている奴も多いですから……。数だけは150人ぐらいいますけどね」
「でも、このままだと殺されちゃうんでしょ?かわいそうだよ」
「そうは言ってもなぁ。いまはバラト大佐の率いる本隊が戻ってくるまでの撹乱ぐらいしかこの人数ではできないな。ましてや、救助なんて無理だ」
残念ながらベル君の要望に応えられるほどの力は現状ないのだ
「しかしだな、我々の人数で撹乱と言っても何ができる?」
「そうっすねぇ、正直なところ。大佐殿の本隊に合流するのが得策かと」
どうやらドグとヤウンは大佐の本体と合流したいようだ。
しかし、本隊が合流するためには街道を迂回して森を抜けてくるか障害物をどかすしかない。しかも、本隊が俺たち最後尾の部隊の異変に気付いている保証もない。
「山賊共め、我々の酒を浴びるように飲みやがって!許せん!」
「アンタ、酒と仲間とどっちが大切なのよ?」
「時と場合によるな!」
賑やかなアイツらは置いておいて俺はルイスと作戦を練る
「どうする?このまま監視し続けて本隊の合流と呼応して攻撃するのはありだ」
ルイスは無理はしたくないらしい
「しかし……。本隊の合流までに奴らが逃げないという保証もないぞ?」
「逃げるなら、逃せばいいだろ?別に俺らの懐が痛むわけでもない」
それはそうなのだ。しかし、一度許すと二度三度と襲われるし、俺が行き来する街道に山賊が跳梁跋扈していては夜も眠れない
「だが、このままと言うわけにもいかないだろ?一先ずは撃退する方向で考えよう」
「ま、そうだな」
ルイスも納得してくれたようなので二人でウンウンと悩む
するとベル君が俺の服の裾を掴みちょいちょいと引っ張ってきた
「ねぇねぇ、やっぱり捕まってる人たちを助けようよ。助ければきっと戦力になってくれるよ」
「だがなぁ、奴らは助けたら逆に脅威と見做されて殺されるかも知れないぞ?」
ルイスが諭すように言うがベル君は首を横に振るとにっこりと笑った
「でも、何もせず殺されるよりずっといいはずだよ」
それは確かに一理ある。どうせ殺される可能性が高いのだ、彼らも足掻けたほうがいいだろう
ルイスも同じ結論に達したのか肩をすくめている
「じゃあ、奴らを助ける方向で行こう」
「ん?決まったの?」
雑談をしていたはずのヘレナたちがいつのまにか後ろに来ていた
「なら、ドグとヤウンを連れて俺が縄を切って回る。ルイスとベル君とヘレナはトラックのそばに積み上げてあるライフルを騒ぎに乗じて回収してくれ。解放した兵士に与える」
「じゃあ、俺たちはルーク伍長について行けばいいわけっすね?」
「そうだ、いろいろ思うところがあると思うが今回は指揮下に入ってくれ。よろしく頼む」
ドグとヤウンは顔を見合わせると綺麗な敬礼を一つして見せて先行して捕虜になっている兵士たちの方へ木々に隠れながら接近していった
「これは、ひとまず認めてもらえたってことなのかな……?」
「さぁな?アイツらの真意はいまいちよくわからん」
ルイスは肩をすくめながらも武器の点検を始めていた
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます