第2話 透明な壁をぶち壊す
彼女を呼び出した。
話もしたことがない彼女が、来てくれるかなんて半分は期待していなかった。
物静かな彼女は、もしかしたら不快に感じているかっもしれない。よくも知らない同級生の派手な女が
「放課後、3-2の教室にきて!待ってるから」
なんて、雑な呼び出し・・・不愉快だよな。
”あいつ、もう少し気の利いた援護射撃できないのかな?”
と、友人を少し恨むが、乗り気でない事を頼み込んでやってもらったんだ、声をかけに行ってくれただけでありがたいと思おうと心を落ち着かせた。
教室の真ん中,自分の机に腰かけて気長に待つつもりだった。が、直ぐに教室後ろの戸がゆっくりと開き、彼女が恐る恐る顔を出し中を確認するようにチラッと見た。
そして、俺を見つけるとあからさまに”えっ?”という表情をしてもう一度戸を閉めた。
俺はそちらに駆け寄り少々強引に戸を開いて
「中で話してもいい?」
そう言うと、ぎょっとした顔で彼女はこくりと頷き
教室の中へ入ってくれた。
”ごめん
意味不明だよな・・・緊張するよな・・・。
でも、俺もめっちゃ緊張してるから、我慢して最後まで話聞いてくれ!”
そう願った。
今はただ、彼女が来てくれたことだけで、透明な壁に向かい一歩前進だった。
率直にうれしかった。
今、俺の口元がにやけてしまっているのを抑えることに必死なことは、気付かれていないと思う。
数週間前から計画を立てていた。
生まれて初めて告白するのだから、結構な覚悟がいった。
告白には慣れていた。
しかし、”される”ではなく”する”のは初めてで
こんなにも人に思いを告げることが難しく苦しい悩みだとは知らなかった。
この気持ちを知っているのは、仲間の中でも二人だけ。
同じ部活である陽介とマネージャー兼中学からの同級生の双葉だけだった。
「告るの?」
双葉は突然の俺の報告に目を丸くした。
そうだよね、人として距離感って大事だよな。
「やっぱ、急に告るって変かな?」
不安げな俺に陽介は、
「いいんじゃねぇ
お前なら絶対に断られないだろ!」
そう言ってほほ笑んだ。
そんなに簡単な相手ではないよ陽介。高校に入ってすぐに彼女を知った日から、何度となくかかわろうとするが、ことごとくそれは叶わなかった。
俺と彼女の間には、なにか見えない壁の様なものがあって、
一定の距離より近づけなかった・・・。
友達関係だって全く違っていたからかな?避けられている気さえしていた。
俺の周りは派手で声が大きな奴らが多いから、若干ひいちゃってるのかも。
もしかしたら、嫌われているのかもしれないとも感じるほどだった。
それを乗り越えるには、”告白”しかなかった。
自分の気持ちを一方的に伝えるのだ、本当に非常識なやり方だ、でも、そうでもしなければ彼女との間にある見えない壁を壊せない気がしていたんだ。
俺は、あまり乗り気ではない双葉に頼み込み、彼女を放課後の教室に呼び出してもらった。
双葉はモロに嫌な顔をして
「私だってあの子と話したこともないんだから、その時点で”嫌です”って言われても裕翔の失恋はを、私のせいにしないでよ。」
そう言い残して嫌々な空気間を背負い、何かブツブツ文句を言いながらも行ってくれた。
分かってる、人のせいにはしないよ。
こうやって呼び出しを双葉にお願いして、急な告白をすることだって、どれもこれも全部を計画し決断したのは俺自身なんだから・・・もしだめでも
プランBへ進むだけ!!
まだそちらは考えも纏まってはいないけど・・・嫌われてしまうまでは諦めないつもりではいた。
俺は結構な覚悟を持って人生初の告白へ進もうとしているのだから。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます