傍観
夕方、母親が帰ってくる。帰ってきているの? という確認に対しては扉越しに返事をしたものの、体調が悪いから夕ご飯は要らない、と言ってその後の接触を断った。
その後、担任が家に来たと母親。背筋にゾクリとしたものを覚える。
担任は、僕のことを心配しているのだという。
心配は要らないと言って追い返すように言うと、書類を貰った、と母親。
後で受け取ると伝えると、扉の隙間から「これだけは急いで読んで欲しいと言われたわ」と、手紙を差し出される。
どうせ読んだら恐ろしい目にあうのだろう。読むことも無く破り捨てた。
ただ暇を持て余すのも退屈だ。
自室の棚にあるマンガを一冊取り出して、非常用食料をつまみながら読みふける。
スマホを買い与えられてからは、紙の本を読む機会がめっきりと減ってしまった。
こうやって久しぶりに読んでみると、集中して読むことができ、なかなかに充実感を感じる。
ニートって、こんな感じなのかな。
将来仕事につけなかった場合のことを想像し、別にこれも悪くないな、などと能天気をかました。
しかしその能天気を許さないと言わんばかりに、スマホが鳴る。
メッセージアプリの通知だった。
クラスメイトからのメッセージらしかったが、恐らくは怪異がらみ。開いたところでろくなことにならないのはもう目に見えていたので、無視を決め込む。
何度か通知が鳴ったところで、スマホの電源を落とした。
夜中、父親が帰宅。母親から僕のことを聞いたらしく、大丈夫か、と扉越しにたずねてくる。これには少し良くなってきた気がすると返しておいた。
明日は仕事を休み、看病するぞと優しい声掛けを貰った。父親からの愛情を感じるべき場面だったのだろうが、今この状況においてはただただ迷惑だった。
そんなことをされるとこの部屋から出ることができない。いくら食料を備えてあるとはいえ、浴室はまだしもトイレに行くのが億劫になる。
そのため父親に対しては、明日には回復して学校に行けるだろうから、気にせず仕事に行くようにと強めに伝えた。
就寝前。今のところ、作戦は順調。
この調子で傍観を続けていれば、怪異から逃れることができるだろう。
眠りにつけば昨夜のように、怪異は夢を通して僕に干渉してくるのかもしれない。
そう考えると寝るのが億劫だが、心構えができている分、さほどの怖さは無い。
夜も更けてきたし、そろそろ歯を磨いて寝支度を整えようとしたその時。
窓の外で幼馴染の悲鳴が響いた。
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