第22話 2度あることは3度あって欲しくない
うわぁ金が無くなった!。
孤児院を建てるために使った当時の金額を思い出し、叫んで飛び起きてしまった。
今でこそ良かったと胸を張って言えるけど、あの時は本当に悲惨だった。
後悔こそしてはいないが、当時の冒険者ギルド全員から心配される程度には依頼を受け続け、子供達の生活を安定させるまでに1年の半分は働き続けてた気がする。
全部終わった後に聖女にしこたま怒られた事も思い出してしまった。
あの人が本気で怒ったのはアレが初めてだったけど......泣きながら怒られると心が物凄く痛いって事が分かったよね。
......ちくしょう最悪の目覚めだ。
1人で頭を抱えていると横から誰かに抱きつかれた。
「レオス! 起きたのね!」
目と鼻の先に、目と額を赤く腫らしたミリシアの顔が見えた。
ちっちかっちかい!。ミリシアさん近い!。
「体は! 痛みとか無い?」
体? いや額以外は痛く無いけど......。
改めて意識すると額が少し痛い気がする。それ以外の異常は感じる事は出来ない。
「良かった......急に飛び起きたからビックリしたわよ」
急に起きる。
ミリシアの額。
俺の額の痛み。
なるほどな。
ミリシアさん......すいませんでした!。
おもわず前世の魂が表に出て来てしまい、教科書があれば見本として採用される程に綺麗な土下座を披露する。
土下座を知らないミリシアだが意味は何となく分かったのか慌てて俺を立ち上がらせた。
「別に良いわよ! そんなに痛くなかったし。それより本当に体は大丈夫なのね?」
あぁ助かったよ。あのままだと出血がヤバかった。
「でも、アンタがあれだけの怪我を負うなんて相当強かったのね」
強いってのもあるけど、常識がまるで通用しなかった。
攻撃の瞬間も直撃した瞬間も何も分からない.....気がついたら吹き飛んでた。
正直、ナナシの攻撃もそこまで効いて無かったし。もしかすると物理攻撃に耐性があるのか?。
ダメだないくら考えても情報が少なすぎる。
今はダンジョンの調査を先に済ませよう。
確かこの下が終着点とか言ってたな。
「アイツの言う事を信じるの?」
ミリシアが散らばった食料を拾い集めながら聞いてきた。
信用は出来ないけど、あの場面で嘘をつく必要もないから一先ず信じてみようか。
もし罠だった場合は、2人で切り抜けて帰ろうか。
「そうね、ポーションもほとんど使っちゃったし。タイミング的にもちょうど良いわ」
ミリシアの集めてくれた食料の残りを見れば後、1日分があるかどうか。
このダンジョンの敵の強さを考慮しても帰りには余裕を持たせて起きたい。
俺の言葉にミリシアは頷いて立ち上がった。
「さぁ行くわよレオス!」
あいよ。
そう言えば、ロイドさん達は?。
「ロイドさん達は先に帰って貰ったわ、食料と念の為にポーションも多めに持たせたから大丈夫だと思う」
まぁ、あの人達なら大丈夫でしょ。もし仮に迷子になっても見つければ良いだけだしね。
きっとあの人たちなら何処のダンジョンでも生きていけそうな謎の信頼感がある。
その際は原住民化してそうだけど。
『メシだー!』
『ヒャハー!』
『オレ くうふく』
うん、大丈夫だな。
俺たちは白い影で攻撃の余波で荒れ果てたダンジョン内を歩く。
幸い、先ほどの白い影の殺気でこの階層内のモンスターは全て魔石へと変わっていたから、直ぐに下に階層へ続く転移陣へ辿り着く事ができた。
「さぁ行くわよ!」
あぁ! 『ナナシ』も後少しよろしくな!。
ミリシアが頷き、『ナナシ』の刀身が揺らめき準備が出来た事を伝えてくる。
じゃあ行くぞ!。
俺が転移陣へと手を触れると視界が切り替わった。
切り替わった先にあったのは今までの森ではなく......。
四方を黒い壁に覆われ、剥き出しになったダンジョンコア。
そして......。
「貴様ら! そこから一歩でも動いてみろ!」
夢で出てきたロリコン野郎だった。
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