レオスのざまぁ探求記

幕間 ???と『ざまぁ』の話

『ざまぁされるためにはどうしたら良いか? 難しい事を聞くね』

 

 コレは、俺が金級冒険者に成り立てで獅子宮殿もマオとファルシアしかいない頃に偶然知りあった魔工師との会話だ。

 

 彼も俺と同じく女神から与えられた無理難題に振り回されていたらしく、こうして偶然出会えたのは僥倖だった。

 

 しかも! 俺とは違って前世の記憶をしっかりと保持しているようで非常に頼もしい限りだ。

 

『ざまぁにも色々種類はあるけれど代表的なパターンの話をしようか』

 

 どうやら俺と彼の生まれた場所では『ざまぁ』や『成り上がり』などの娯楽が一般的で、彼自身も多少は詳しいらしく、こうして酒を奢る対価として色々教えてもらえることになった。

 

 彼は俺達では考えも及ばない発想で『こんろ』や『シャワー』などの画期的な発明をし続けて、魔工具の技術を飛躍的に押し上げた天才だ。

 

 そんな彼なら俺の知らない『ざまぁ』について教えてくれるはず!。

 

『うーん、まずは有能なのに無能そうな奴を見つける事からスタートじゃないか?』

 

 いきなり超絶高い障害が現れたな。

 

 てか、なにその具体的だけどフワッとしたアドバイス。

 

『オレが知る『ざまぁ』の第一条件だけど?』

 

 思ったよりも難易度が高くて、顔も思い出せない女神が恨めしい。

 

 とりあえず、そこは置いておいて見つけた後はどうする?。

 

『適当に難癖つけて追放する』

 

 どうして?。

 

 そんな事したらファルシアに殺されそうなんだけど。

 

 そこも置いておいて、その後は?。

 

『無謀に高難易度ダンジョンに挑んで全滅寸前まで追い込まれる』

 

 ......はい。

 

『その間に追放された奴が才能を開花させる』

 

 ............は......い。

 

『ボロボロになって帰ってきた時に、華々しく活躍してる『主人公』と再会して、評価が逆転した時に『ざまぁ』されたと言えるかもね』

 

 うん、竜王様にソロで戦い挑んで勝つ方が可能性あるな。

 

『逆にそれで可能性を見出せるキミが怖いよ』

 

 え、本気? 盛って話してない?。

 

『なんならコレでも最低限だけど......出来そう?』

 

 ほっ他のパターンはありませんかね?。

 

 多分、俺には難易度が高すぎる。

 

『他に......うーん、キミが達成しやすそうな状況だと』

 

 酒を口に含みながら言葉を探している。

 

 そんなに難しい事なのか......内心絶望していると次の言葉で希望が見え始める。

 

『もしキミより能力が高くてカリスマや求心力がある奴が現れたとしよう』

『ソイツがキミの座を引き摺り落としでもしたら一部の人達は『ざまぁ』と思うんじゃないかな?』

 

 なるほど! それなら俺にも出来そうだ。

 

 そうなると......今の段階でファルシアが最有力候補だな。

 

 『植物支配』のギフトは地上なら強力無比で汎用性も非常に高い。

 

 何故か他のエルフ達から敬われているからカリスマもある.....おや? 今の段階で俺より凄くないか?。

 

『......そもそもキミにその役割は向いてないと思うけど、あの駄女神は何を考えてるんだろうか』

 

 ん? ゴメン、聞こえなかった。

 

『いや、なんでもないさ。それよりキミの役に立てたかな?』

 

 もちろんだよ! 正直このままだとゴールが朧げにすら見えなかったからな。

 

 いやぁ助かった!。

 

 俺は彼の肩を優しく叩きながら上機嫌で酒を煽るように飲んでいく。

 

 コレでゴールが見えた、後は最後まで走り抜けるだけだ。

 

 /////////

 酔い潰れたレオスを見ながら酒精が強い酒を呑む。

 

『そもそもコイツに無様な悪役とか似合わないでしょ......どうせ魂を弄ったなら性格も弄れば良かったのに......詰めが甘い』

 

 コイツは自分の立場や役割を理解していても、他人が不幸になりそうなら役割を投げ捨てて動いてしまうだろう。

 

 つまり、向いて無さすぎる。

 

 いったいコイツの何を見て選んだんだか......まさか何も考えずに?。

 

 ははは! まさかそんな事は無いよな?......あり得そうだ。

 

 未だにハッキリと覚えている女神の顔を思い出すと酒が一気に不味くなった。

 

 まぁ良いさ。

 

 オレの役割は地球の道具を普及させ世界の文明を少しでも発展させる事。

 

 まぁ元々、技術職だったオレからすれば簡単すぎる内容だったから子供の内に解除されたけど......コイツのは無理じゃないかな?。

 

『まぁお前なら、なんやかんやで呪いに打ち勝てそうだけどな』

 

 女神の犠牲者の先輩として困った時ぐらいは力を貸してやろうと決めて、酒を飲む。

 

 ......そろそろあの駄女神に天罰が落ちないかな。

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