第6話 『荷物持ち』
ロディが獅子宮殿入ってから既に20日程度の時間が経った。
ミリシアやファルシアの教え方が良いのと本人のやる気が高い事が相乗効果なって見ていて楽しい程に頼もしくなった。
簡単な討伐依頼ならソロで完遂出来るし、ダンジョン内でも不足なく連携も取れる。
それ以上にロディの『荷物持ち』の汎用性が非常に高いことが嬉しい想定外だ。
そうしてロディの事を考えるたびに考える事がある。
それを考えれば考えるほど分からなくなるんだ。
どうしてロディは冷遇されていたんだ?。
確かに『荷物持ち』は戦闘系では無いから評価はされにくいが、それを差し引いてもダンジョンへ入った事のある冒険者なら彼女の有能さに気付くはずだ。
まず学習能力の高さと周囲を見る目。
後方から全体を冷静に見れるのは一種の才能だ。
次にギフト。
行きは魔工具の運搬を任せて、帰りは魔石とかの戦利品を任せる事が出来るのは大きすぎる。
それに戦闘面でも成長が著しい。
最近は武器を荷物として認識する事が出来たから重い剣でも軽々と振り回す事が出来るようになった。
まぁ、まだ数打ち物みたいな安価な物じゃ無いとダメみたいだけど。
総合して見てみると、身内の贔屓目を抜きにしても喉から手が出る人材だ。
ミリシアが見つけてきてくれて本当に良かった。
うん......やっぱりおかしいな。
もしかしてロディは。
突拍子もない思いつきを笑いながら一蹴する。
しかし、一度考えた可能性は消える事なく俺の頭の中に残り続ける。
もしかして誰かに狙われているのでは無いか?。
突拍子もない事を考えてしまうが、あの時に現れた男もロディを狙っていた。
考えすぎだとは思うが......それこそ貴族がロディを手に入れようとパーティーの人間を買収して陥れようとしていた?。
もし心が折れて、村へ帰る途中で拐えば冒険者ギルドは手出しが出来ないし、探す人は誰もいない。
勘違いならそれで良い。
ファルシアに少し相談してみようか。
杞憂ならそれで良い、俺がファルシアに狐堂のワッフルを渡せば良いだけの話だからな。
そうと決まればファルシアを探そう。
俺は隣で書類を纏めているファルシアに先程の考えを伝える。
「分かりましたが、考え事の間に書類は減りましたか?」
あっ。
/////////
「じゃあロディ、依頼完了の報告しといてくれる? アタシはちょっと武器のメンテに出してくるからいつものサンドイッチ屋で集合ね!」
うん! 任せて!。
ミリシアちゃんと一緒に商業ギルドの方を隣町へ護衛する依頼を完了させて王都へ帰って来ました。
最近は色んな場所へ行くことも増えて、色んな経験を積む事が出来て毎日が楽しい!。
ボクでもモンスターを倒せるようになって来たし、ミリシアちゃんとファルシアさんと3人でダンジョンにも潜る事もあるし......少しずつ成長してるんだって自信を持って言えそうかも!
そう思ってた。
「おっ久しぶりじゃねぇか『荷物持ち』!」
冒険者ギルドに入った瞬間に向けられた声にボクの体は固まって息が上手く吸えなくなる。
どうして......どうして!。
「何コイツ震えてんの? まるで私たちがいじめてるみたいじゃん」
声を聞くたび、見られるたびに何も考えられなくなって目尻に涙が浮かぶのを抑えられない。
「そうだ! お前さ獅子宮殿に拾われたんだろ?」
「私たちも紹介してよ! アンタが入れるなら私たちなら余裕でしょ!」
肩を掴まれる。
それだけの事でボクの体は震えが止まらず吐き気さえ覚えてしまう。
断らないと......断らないと!。
「頼むよロディ」
「ねぇねぇお願いよぉ」
『お前みたいなゴミはいらねぇや』
『目障りだからどっかに消えてよね! キャハハ惨めすぎて笑える!』
顔が引き攣り、思わず後退りしてしまう。
それを見て不愉快そうに顔を歪めて2人が距離を縮めてくる。
「なんだよ荷物持ちのくせに!」
「もしかして調子に乗ってる? 運良く獅子宮殿に入れたからってさ」
運......そうだよね。
ボクはミリシアちゃんと幼馴染だったから獅子宮殿に入れただけで実力じゃ。
考えれば考えるほど居場所だと思っていた獅子宮殿が自分には不相応ではないかと思い始めてくる。
それでも......。
「お前みたいな『荷物持ち』より俺らの方が上手くやれるさ」
「だからさ! アンタの居場所を私たちへ頂戴よ!」
ふざけるな!。
嫌だ! 嫌だ嫌だ嫌だ!。
ボクだって獅子宮殿の一員なんだ!。
どんなに不相応でも、どんなに馬鹿にされても!。
この場所だけは譲りたくない!。
「獅子宮殿に入りたいなら! ボクと戦って勝てたら良いよ!」
立ち向かわないと!。
ボクだって、ボクだって!。
獅子宮殿の一員なんだから!。
/////////
「レオス!」
どうしたミリシア?、あれロディと一緒じゃないのか?。
獅子宮殿でファルシアとデルタが集めて来た情報を整理していると扉を勢いよく開けてミリシアが飛び込んできた。
その顔は焦燥に染まっている。
......何があった。
「ロディが!」
最悪だ、気づくのが遅すぎた。
「ロディが居なくなったの!」
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