第31話 『♡ Kyoko Love ♡』

31.


 どこまで本気だったのかは分からないけれど一度彼からの

プロポーズを断ってからは、ランチもアフターも誘われなく

なっていた・・のだが、年が明けた頃からたまに誘われそうな雰囲気が

あって、何気にやんわりとスルーして誘われないように気をつけていた。


 プロポーズされて気持ちがふわふわしちゃって気が緩んで

油断してしまった。


 垣本さんからプロポーズされても受けるつもりはないけれど

一応今は付き合っていることになる。


 付き合いたいと言われつつも曖昧な関係でここまできていた

けれどはっきりと好きだとも先日言われている。


 なので亀卦川さんからランチを誘われた時、私は彼を通路の端に

連れて行き


 「誘ってくれてありがとう。

 実は今、ちょこっと付き合ってる人がいて・・」

と、まるで内緒話のように掠れた声の微妙なイントネーション

で囁いた。


 「恭子ちゃんって案外律儀な人だったンだ。以外~。

 分かった。分かった、フリーになったらまた、飯行こっ」


 「うん、また・・」


 ひゃぁ~、フリーでいる期間が随分長くて、男性からご飯誘われて

断るってこともほとんどなかったから、ドキドキしちゃった。


 やっぱり誘われて断るっていうのは、精神的にしんどい

ものがある。


 見かけによらず、私って律儀なのだ。


 でもあの、『好きだ』という直球の球が飛んで来ていなければ、ランチ

くらい・・と、付いて行ったかもしれない。

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