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放課後。店への道を歩いていると、生け垣の陰から鳥山さんが飛び出してきた。どうやらそこのカフェを出たところらしい。彼女は少し赤みのさした頬をこちらに向けた。

「せ、瀬川君、偶然だね」

「鳥山さん、学校は?」

彼女だって六時間目まで授業があるはずだろう。この時間にカフェで寛いでいるなんて些か不自然だ。

「うちは今日は午前中授業で……。三年だけなんだけど」

鳥山さんは僕の質問に早口でそう答えた。聞いたのは僕だが、正直彼女の授業が何時までかなんてどうでも良かったりする。

「このカフェね、この間荒木と初めて入ったんだけど、雰囲気よくて気に入っちゃった。荒木のくせにいい場所知ってるわよね」

「そうなんだ。荒木さんはこの辺詳しいんじゃないかな」

「あ、あのさ、もし良かったら瀬川君も一緒にお茶……」

その時ものすごい突風が吹いて、僕も鳥山さんも思わず固く口を閉じた。道端に落ちていたビニール袋が大きく舞い上がる。

「じゃあ、僕仕事溜まってるから」

ビニール袋がゆっくりと着地するまで彼女の言葉の続きをたっぷりと待ったが、結局何も言わないので僕からそう切り出した。鳥山さんは途端に慌てたような顔をする。

「えっ、あ、そうよね。うん、仕事頑張って。いえ、頑張りましょう」

僕は彼女に手短に別れの挨拶をして店への道を急いだ。頭の中は昨日店長に頼まれた仕事のことでいっぱいだった。



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