第37話オーク牧場



ああ、このままドラゴンを連れて行けないなーー。


「シロらは、ここで待機してくれないかな・・・」


『何かあれば呼んでくだされ。すぐに参ります』


「うん、わかった。その間に向こう側で好きに狩りをしていいから」


『それは、ありがたき言葉です』


その言葉を聴いた白いドラゴンが飛び去っている。


『御主人の前で失礼な・・・』


「いいよ。腹が減ってたんだ」


『それではお気をつけて・・・』


シロも飛び去ったよ。


山の頂上から、一番近い牧場へ瞬間移動だ。

草がおおい茂る場所へ出た俺は、「ペッペ、ペッ!」草が口に入りやがった。


その草を分け入った先に、柵が・・・

その柵からは、無邪気に走り回る小さなオークが見えていた。

小学校1年の背丈のオークがつまずいて鳴いている。


そこに1人の男が歩いてきて「傷を治れ」と唱えた。

あれは・・・テイマー専用の癒し魔法だ。

魔物しか癒せない魔法の一種らしい。

あの男の証言と同じだな・・・しかし、複雑な気分だ。


『パパ、大好き』と言って抱きつく幼いオーク・・・


無邪気にだまされてるぞ。

なんか「やるせない」気分と怒りがフツフツと湧き起こる。



そんな場面に・・・あれは・・・日本人か・・・

荷台を引く男は、黒髪の黒目だ。


「何をもたもたしている!はやくしろーー」


あの男が笛らしい物を吹いた。

音はまったく聞こえない。


これって犬笛みたいに人間が聞き取れる周波数より高い音が鳴ってるのか・・・


あっちこっちにいる幼いオークがゾクゾクと集まりだす。


「よく集まってくれた。我が子よ・・・今から兵士の儀式を行なう」


あ!幼いオークが喜んでるぞ。


「我こそ相応しいと思う者は、前に出てこのオーブに触れるのだ」


身長が1.5メールを達したオークが、あの男の前に54人も『兵士の儀式に参加します』と名乗り出ていた。


1番に名乗り出たオークがオーブに触った瞬間に淡く光りだす。


「お前は、成人だ。帝国のために戦ってこい」


『頑張って帝国のために戦います』


ああ、なんて悲劇だ。

親殺しのために戦場で死ぬのか・・・


あの男を殺しても・・・ここの幼いオークは、俺を親殺しとして憎むだろう。

ここまで育てられたのだ。


これは、解決方法ってあるのか・・・


あ!飛行物体が・・・降りて来たぞ。

開口部が開いて54人が乗ってしまう。俺はどうしたらいいんだ。


ああ、飛び去ってゆく。



「ミヤ!食事を与えておけ」


あの男は帰ったぞ。


ミヤと呼ばれた男は、とぼとぼと荷台を引き去ろうとしている。


「おい!俺は日本人のさかきだ。助けに来たぞ」


目を丸くして驚いて口をパクパクとしてるぞ。


俺はミヤを落ち着かせて色々と話した。


「え!ミヤもテイマーなのか・・・」


「だからって、こんな所へは来たく無かったよ」


「他の9人は知らないのだな」


「多分だが・・・あっちこっちのテイマー牧場に散らばってると思うが、何処なのかは分からないよ。情報が全然入ってこないからね。言葉も片言しか分からないから・・・」


「9人を探し出すまで待ってくれるね」


「君の話を信じるよ。君は大勢の日本人を助けたんだ。だから信じて待つよ」


足が小刻みに震えていた。

多分・・・我慢してるのだろう。


「約束するよ、絶対に助けるから・・・」

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