第六章 さらば壁役令嬢! 真のエンディングへ!
第49話 壁役令嬢、推して参る
下準備として、やれるだけのことはやる。
サブリナに、私をフル改造してもらった。耐久性はもちろん、攻撃力もさらに上げる。ここで、敏捷性にも改造ポイントを振った。
「これって意味がありますの、ダテさん?」
そっか。マージョリーたんは盾に回避率なんて必要なのか、と思っているんだろう。
『あるよ。反応速度が上がるんだ』
とっさのときに、すぐ構えられるように。
あとはお決まりの魔力を上げていく。
「激レア素材は、どう運用しようか?」
『では、装甲値をさらに上げて』
レアな素材を手に入れたので、もう五段階、改造を施してもらう。
おそらくゲミュートは、ゴーマを取り込んでいるだろう。かなりの攻撃力になっているはずだ。その威力は、シノさんを一時、戦線から離脱させたくらいである。
装甲が厚いに越したことはない。
『他には、【エナジーシールド】もつけるよ』
エナジーシールドとは、魔力で全身を覆う防護フィールドのことだ。【神格化】によってマージョリーたんの全身を覆うことになったから、必要になった。
「フル改造特典は、どうするんだ?」
インテリジェンス・アイテムは、フル改造すると特典がもらえる。
ゼットさんも、同じようなセッティングにしようとした。
『待って! イーデンちゃん、それは何?』
私は、イーデンちゃんが持っていた『ある武器』に着目する。
『それだ。それのおかげで、イーデンちゃんは【神格化】したんだね』
「かもしれません」
『大事に持っておいてね』
「はい」
残念ながら、そのアイテムは改造できない。が、持っているだけでも十分だ。
続いて、メンバー全員の技能を調節してある。
今まで世話になってきたマージョリーたんの【大富豪】を廃棄した。
「ダテさん、よろしいので?」
『もう資金稼ぎの必要がないからね』
資金はすべて、ゴドウィンたちに投下する。素でも十分強かったが、これからはともに戦うことになる。よって、武器にフルチューンを施す。カリスのマップ兵器【マキビシ】で削り、ゴドウィンやビリーの物理攻撃でとどめを刺すのだ。
イーデンちゃんの【治癒からの学び】も、技能リストから除外した。
マージョリーたんもイーデンちゃんも、もはやレベルはカンストしている。
代わりに【神格化】の効果を増やすため、攻撃に特化した技能をつけた。
「ダテさん、わたしたちの魔力量は上げなくて、いいのですか?」
確かに、不安にはなるよね。【魔力回復】や【魔力量+三〇】などは、私もつけるかどうか考えた。しかし、そちらはシノさんに。味方を補助する役のヴィル王女にも、この技能はあげている。シノさんにあげるため、ずっと温存してきた。
『問題ない。むしろ回復や魔力容量アップ系の技能は、【神格化】持ちにはつけない方がいいんだ』
「といいますと?」
あとでわかるよ、と、イーデンちゃんに伝える。
『マージョリーたん、イーデンちゃん、【神格化】の真の恐ろしさを、ヤツに、ゲミュートに思い知らせてあげるよ』
後は、最後までなしとげるだけだ。
魔界までやってきた。
空は血の色に染まって、生き物の気配がしない。感じるのは、魔物の息吹だけ。
王都と同じ大陸に位置しているのに、ここだけ別世界のようである。世界から切り離した感じだ。
今日は、全員を引き連れている。マージョリーたんを先頭に、隣にはイーデンちゃんが。
「よろしいのですね?」
「はい。孤児たちに、別れのあいさつもしてきていません。必ず帰りますからね」
本来ならば、イーデンちゃんはもう戦わなくていい。しかしマージョリーたんの妹として、戦いたいと願い出たのである。
「いやあ。二人ともバフを撒く係になっちゃったけど、いいのかしら?」
「ここまで敵が強いと、我々はもう戦力外です。全体攻撃魔法を当てても、通じなくなってきましたから」
他には、ヴィル王女とアマネ姫だ。
「マージョリーお嬢様、姫様たちの警護はお任せを」
カリスもいる。もう魔族側に、王城を責める余裕なんてない。安心して最強の戦力をぶつけられる。
「ラストバトルか、緊張するぜ」
「気が抜けていないだけ、マシだ。仕留めよう」
最後に『雷鳴』が、フルメンバーで揃う。
「ヤツには、借りを返す」
シノさんも、現場復帰だ。
『マージョリーたん、覚悟はいい?』
連れていないのは、ゴットフリートだけだ。ゲミュートでもある彼と、本体であるゲミュートを引き合わせるワケにはいかない。物理的に、取り込まれる危険があるからだ。最期の時まで、グレーデンの民のために使いたいという意志を尊重した。
「構いませんわ、ダテさん。一晩中泣きましたから、もう大丈夫ですわ」
とかいって。マージョリーたんのまぶたは、未だに腫れていた。
「ゴットフリートさまはゴットフリートさま。ゲミュートはゲミュートと、割り切りますわ」
『わかった。マージョリーたんの考えをムダにしないために、私はあなたを守るだけだよ』
マージョリーたんが、盾である私を構える。
「いざ。壁役令嬢マージョリー・ジンデル。推してまいります!」
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