第五章 魔王の娘同士の対決!

第41話 思わぬ助っ人

 グレーデン奪還作戦が始まった。


 リシュパン城の防衛は、問題ないだろう。なんといっても、カリスの【威圧】のおかげで、弱い魔物が日和っている。おかげで敵に、数で攻め込まれない。脱退してしまったときはどうしようと考えたが、手放してもちゃんと仕事をする。さすが、悪魔の騎士だ。


 さらにシノさんが城にいる。シノさんの持つ魔力障壁は、高位の魔族にも弱体化の効果を持つ。とてつもないデバフ効果で、相手を寄せ付けない。戦線に復帰できない状態でも、自分のやるべきことがわかっていた。


 ふたりとも、すごい。


 これで、リシュパンは盤石となった。




「敵の数が、とてつもないですわ!」


 しかし、攻略予定だった砦は、強力なモンスターで埋め尽くされている。魔王軍側も、総力で挑む気だ。


「なんですの、あの女性形デーモンは?」


 女型のデーモンが、【魔神の盾】のようなシールドを装備している。

 明らかに、私のコピーだよね?

 使い手の女型デーモンも、スカートに大胆なスリットが入っていた。見た目が、ヴァルキリーの装備品に近い。マージョリーたんを意識し過ぎだろう。


『データを見ると、【闇の戦乙女ダーク・ヴァルキリー】だって』


「改造されている形跡がございますわ」


『とんでも科学力だね。でも、負けないよ!』


 たとえ相手が私のコピーだったとしても、マージョリーたんのマネごとはできない。格の違いを、思い知らせてやる。


「またお目にかかりましたね、わが妹イーデンよ」


 ケフェスが、砦の天井に立っていた。


「先日はクーデターのためにあなた方を足止めしなければいけませんでした。ボクは直接、キミと戦えませんでしたね」


「ケフェス、わたしはあなたを姉とは呼びません。わたしは、人間です!」


「それがあなたの出した結論ですか。いいでしょう。どのみちあなたは、俗世に染まりすぎた。あなたなんかには、我々魔族の理想など理解できない。愚かな人類として、滅びなさい!」


「やらせない。たとえ相打ちになっても!」


 ケフェスが振るった軍刀を、イーデンちゃんが受け止める。

 二人が斬り合うところに、闇の戦乙女が割り込もうとした。 


「イーデンさん、あのデカブツは、わたくしが抑えます。あなたは、ケフェス嬢と一騎打ちをなさい!」


「お願いします、マージョリー姉さん!」


 おお、姉さん呼びが、定着しているね。もはやイーデンちゃんのお姉さんの座は、完全にマージョリーたんのものだ。ケフェスは実の姉かもしれないが、絆の力はマージョリーたんの方が上だ!


『いくよ、マージョリーたん。マップ兵器、展開!』


 私は翼を発動し、グライダー状態になる。


「覚悟なさいまし。【ウイング・ブラスター】!」


 マージョリーたんが私を掴んで浮遊した。敵陣に、突っ込んでいく。

 広げた翼の間に、特殊対魔術フィールドが展開された。障壁に飲まれた魔物たちが、内側から破壊されていく。術式障壁が、魔物の肉体を構築している魔石を砕いたのだ。


『待って。マージョリーたん、止まるよ!』


 私は、マップ兵器を抑え込む。

 闇の戦乙女が持つ盾が、赤黒い障壁を展開した。

 こちらのマップ兵器とぶつかって、爆発する。

 私とマージョリーたんが、吹っ飛んだ。


「思っていたより手強いですわね」


『実力は、見た目だけじゃないってわけか』


 これで、大丈夫なのか?


「くう、新手ですわ!」


 アマネ姫の召喚獣を模したグリフォンが、闇の戦乙女にまたがった。


「任せてよ!」


 ヴィル王女が、ケラウノスランチャーを発射する。

 だが、戦乙女のヤリから稲妻が発動し、王女の電撃砲を相殺してしまう。


「伏せて」


 青黒い雷撃が、グリフォンの翼を引きちぎった。さらにもう一撃が、グリフォンのノドを貫く。


 グリフォンが爆発して、戦乙女が飛び退く。


「今の攻撃は……まさか!」


 マージョリーたんが、青い閃光が放たれた方を向いた。


「借りは、返した」


 そこには、ゴーマ三姉妹の三女、フィゼが。

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