第27話 穏やかな日々

ジョンとエヴァは軍の車に揺られ、朝方隣国の国境付近へと到着。

車を降りたあと、軍の車はそこから立ち去り、2人はそのまま国境へと向かう。

隣国の国境ではゲートに警備隊がおり、亡命しに来たことを伝える。


2人は隣国の警備隊の車に乗せられると、そのまま警察署へ連れて行かれた。

警察ではここに来た事情を聞かれ、その後は警察の監視のもとホテル住まいに。

1ヶ月ほどしたところでこの国での身分を与えられ、ジョンとエヴァはこうして隣国の国民となった。


ホテルを出たあとは先に亡命していたジェイソンの元を訪れる。

2人は彼から聞いていた場所へ足を運ぶと、ちょうど庭で洗濯物を干そうとしているジェイソンを見つけた。


「ジェイソン!」


その言葉にジェイソンが振り向き、2人の方へと駆けつける。

3人は再会を喜び、そして抱き合った。


ここからはジェイソンの家で3人暮らしがスタート。

ジョンは心身を癒すため、2人に甘えさせてもらい、家で毎日のんびりして過ごす。一方、エヴァはジェイソンと一緒に家電の修理業を行うことに。


隣国での生活は穏やかなもので、ジョンはとても癒されるような日々を送っていた。

それから3ヶ月が経ち、半年、1年、そして2年が経過した頃、ジョンは随分と良くなっていた。


今でも過去のフラッシュバックはあるが、以前ほど感情に飲み込まれることはなく、体の力みもかなり取れている。

また、人前では苦しみながらも平然を装っていたが、今ではそうした必要もほとんど無くなった。

彼はこれまでの自身の体験を本にまとめてみようと思い、今は少しずつ執筆している最中だ。


「息抜きに散歩でも行くか」


朝早くから執筆していたジョンは気分転換に外へ出る。

家の外に出ると気持ちのいい空が広がっていて、そのまま近所の丘まで歩くことに。

丘へ上がると町全体が見渡せ、より一層気持ちよさは強くなる。


「あぁ~、気持ちいいなぁ」


ジョンは自然を全身で感じながら歩いていると、前からひとりの少年が走ってきた。


「おじさん、波が穏やかだね」

「おじさんって俺のこと?まぁそれはいいけど、波って?」

「波動のことだよ。知らないの?」


ジョンは少年の言葉に「波長のようなものかな?」と勝手に納得する。


「たしかに今俺は穏やかな気分だよ」

「なんで?」

「気持ちがいいから・・・かな」

「そうなんだ」

「君はどんな今気分かな?」

「僕も穏やかだよ」


ニコニコしている少年はとても気持ちがよく、なぜか一緒にいるだけでどこか癒されるような感覚があった。


「波動はね、無いほうがいいんだよ」

「波動を高くしちゃうと低くなるし、低くしちゃうと高くなっちゃうんだ」

「それってどういうこと?」

「人生が山あり谷ありになっちゃうよってことだよ」

「???」


ジョンは少年の言葉の意味が分からなかった。

この少年は一体なぜそのような話をするのか、彼はそれが気になった。


「波動ってよくわからないんだけど、それって何?それと山あり谷ありって?」

「僕ね、神様とおしゃべりできるんだ」

「そ、そうなの?」

「そうだよ」

「さっき言ったことは全部神様から教えてもらったんだ」


ジョンは彼の言ってることがよくわからなかった。

だが、少年が最初に「波が穏やか」だと話しかけてきたことを思い出し、「本当にそういうのがわかるのかもしれない」と感じていた。


「君、名前は?」

「僕?」

「僕はね」


「ルシフェルだよ」


その言葉のあと、2人の間をそっと風が吹き抜け、ジョンの上に何かが落ちてくる。

彼が両手を出すと、そこには白い羽が。


「それあげるね」


少年はやさしく微笑んだ。


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