第28話
「これも私の空属性のオリジナル魔法でして……、物の出し入れを自由に行えるんです。生きたままの人や動物を入れることはできませんが」
「まぁ……ヴィレーナならあり得るか……」
「ヴィレーナ様ですものね……」
「疑うような真似をしてしまい申しわけございませんでしたぁぁぁ!!!!」
カイン騎士団長とチュリップは呆れ、御者は土下座をして謝ってきました。
「いえ、気にしないでください。ハッキリと言えなかった私もいけなかったのですから」
私がそういうと、今度はカイン騎士団長とチュリップがまたもあの体勢になり、私に対して頭を下げてくるのです。
「二人とも、跪かないでください……」
「そうはいかない。国をも破壊できるであろう上級モンスターを退治したのだ。もはや国民誰もがヴィレーナを敬うのは当然のことだ」
「もうなにがなんでも一生ヴィレーナ様の侍女を努めたい所存であります! あなたさまはメビルス王国の誇りです!」
だから倒したって言うのを躊躇っていたのに……。
私はこのあと必死に説得して、今までどおりに仲良くしてくれるように土下座してお願いしました。
二人の馬車に同乗して王宮に戻ります。
道中、キーファウス殿下とも遭遇し、彼の群青色の瞳から安堵した眼を見て私もホッとします。
さて、王宮に戻るとすぐに報告しなければですが……。
カイン騎士団長が、国王陛下とキーファウス殿下に上級モンスターを討伐したことを報告してしまい、やはり跪かれてしまったのです。
私がもう一度土下座をしたことは言うまでもないでしょう。
「それにしても、まさか本当に奇跡を起こしてくれるとは。私の婚約者になってほしいと言ったが、これでは釣り合わなさすぎる……」
「そんなことはありませんから」
私はつい、なにも考えずにキーファウス殿下にそう言ってしまいました。
「あの大きな地震を起こしたバケモノを倒すようなヴィレーナ殿と息子が婚約とは私も華が高い」
「バケモノ……」
「この王宮にまで二度揺れが起こった。一度目は少々揺れた程度だったが、二度目は明らかに天変地異クラスだろう。よほどのバケモノだったのだろうな」
「…………」
私は、なにも言えませんでした。
おそらく二度目の揺れの原因は私で、山を破壊してしまったことを言う勇気がまだなかったのです。
しかし、私の困った態度に鋭く感づいたのがキーファウス殿下でした。
「ち、父上……。ちょっと……」
キーファウス殿下はあたふためきながら国王陛下の耳元でなにかを呟きます。
すると、国王陛下も顔を真っ青にしながらガタガタと震えはじめました。
これは間違いなく私が山を壊したことがバレてしまったに違いありません!
大急ぎで私は国王陛下に土下座をします。
「すみませんでした!!」
「すまぬことを言ってしまった!!」
「「へ?」」
なぜか私と国王陛下が同時に土下座をするという、前代未聞の異様な光景が広がったのです。
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