第34話 -おっさん-

「よぉ!シュン!」


突然、店の奥から声が聞こえる。

その声は低くて重い。


「よ!おっさん!」

シュンが返す。

そして、声がした方を向いてみると、そこには1人の男が立っていた。

背は僕たちよりもかなり高いように見える、口の下には髭が生えている。

今はシュンと仲良さそうにしていて、笑顔ではあるけど、少し怖い。


「おっさんはよせって言っただろうが。オレァまだ20代だ。」

「来年も20代なんすかー?」

「っ……ともかく!俺はクリエットって呼べっつってんだ!」


「っと……今日は何しにきたんだ?」

「あーそうだったそうだった!こいつに武器、防具を繕ってほしいんだ。」

「えーーっとその坊主にか?」

こっちに視線が向く。

「えーーっと、あのーー、そ、そうです。」

あああああ、会話できないってぇぇぇぇ。

そんなふうに悶絶してると、

「……なるほどわかった。予算はいくらある?」

「50万。」

「50万!?」

シュンの答えに思わずクリエットさんは驚く。

「ははw。俺が渡しただけだっつーの。」

「何だよ。驚かさないでくれ。」


いや納得するのかそこ。


「なんか要望はあるか?」

「えっ、えー、あ〜〜。」

僕が話さずにいると、

「俺の装備みたく、動きやすいやつにしてやってくれ。」

「そりゃまた何でさ?」

僕も気になる。

「こいつAGIもSTRもめっちゃ低いから、重テェ装備なんか着せちまったらもはや動けなくなっちまうからなw」

……確かに。

その提案は合理的で、納得できた。

「っつーわけで、レザー装備とかそう言うやつにしてやってくれ。」

「わかった。明日には準備しとけばいいな?」

「ああ。」



「じゃあなおっさん〜」

「だ〜〜か〜〜ら〜〜おれは」

バタン、とドアが閉まり、その声は遮られる。

「えっと……そんな適当で大丈夫なのか?」

いつも通りの声で喋りかける。

「大丈夫大丈夫w」


結局あのまま流れるように武器も決まった。

僕は全く会話についていけなかったけれど。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る