秤ノ守
新木一生
序章
序幕
夕刻、丘には紅い絨毯が敷かれている。
ひざまずく男が一人と、それに向かい合って立つ女が一人。
彼女の後には人間が続き、肩には建設用具を担ぐ。
固唾をのみ込まざるを得ない彼の光景は果たしてなんと表現すればよいのか。処刑か、栄典か、叙任か。
男のまさに目の前に、銃口がある。
終わりが差し向けられているというのに、男はなおも気味の悪い笑みを絶やさない。太陽は彼の味方をしているらしい。
彼女の顔は分からない。
二言三言、彼女が言う。滴が落ち、銃を両手で構え直した。
引き絞る。引き絞る。
寸秒。
男が両手を広げ、接近する。
その手が届くことはなかった。何も掴むことはなかった。
女は用無しの鉛をだらりと引きずって、後の人間たちの肩を叩く。
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