05.魔法の存在

「聞いたかバレ? 魔法だってよ」


 グッデはまるっきり信じていない。僕も信じられるはずがなかった。でもどこか信じている。これは、傷が一瞬で治ってしまうということ並に、常識はずれではないのか?

「魔法が存在してるのかよ?」


 やっとグッデは黙っておじいさんの方を見た。

「あるとも。この町ではもう二十年前に最後の魔法使いが亡くなったから知らんのも無理はないが。四人の偉大な魔法使いのうちの一人は、王自ら国を滅ぼして、魔術で化け物になったという噂も聞いておる」


 今度はグッデも笑わなかった。いや、笑えなかっったと言うべきか。おじいさんは、演奏家達の遥か向こうを見据えて語り出す。


「わしは昔、開かずの扉を見つけられなかったが、わしの友人が北門に偶然出くわしたそうじゃ。外は夏じゃったのに雪が積もっとったらしい」

 頭が混乱しそうになる。ただでも年中涼しい気候だが、さすがに夏に雪は積もらない。

「それでそれで?」


「その門に触れた途端、指に火傷を負って逃げ帰ったそうじゃ」

 いつの間にか信じていないにも関わらずその話に引き込まれていた。二人で顔を見合わせる。そう簡単に信じられる話じゃなかったが、おじいさんが嘘をついているとも思えない。


「僕はおじいさんを信じるよ」それに、魔法が存在していることの方が楽しいではないか。グッデはわざとらしくため息をついた。

「おまえが信じんならおれも信じる」

「今のわざとらしすぎない?」

「いや、でもおれだって魔法使って女の子にもてたいし」

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