第11話 再婚
今日は2度目の結婚式だ。前の結婚式から1週間しか経っていない。どうやら私の気が変わらない内にと超特急で準備を進めたらしい。
「なんて美しいんだ……」
リーベルトは頬を染めて少し照れながらドレス姿の私を褒めてくれた。そう言えば、1度目の結婚式では相手から褒め言葉1つなかったことを思い出す。
「リーベルト様も大変よくお似合いです」
背も高く筋肉もある。何故彼が今まで未婚だったのか不思議なくらいだ。小国と言えど王族だし、イケメンだしさらに性格もいい。話はいくらでもあったと思うのだが。
「国の安定のために諸外国を周らせてばかりいましてね……リーベルトには悪いことをしました」
王には罪悪感があるのか本当に申し訳なさそうに教えてくれた。そもそもリーベルと本人が結婚に消極的だったということだが、それよりあちこちの国とコネを作ったり情報を得たりと忙しかったらしい。うちの国にもよく来ていたという話だ。
私が彼と初めて出会ったのは8年も前、彼は今25歳だから……
(私が10歳で、リーベルトが17歳だったのか)
あの時はもう少し大人に見えた。後で聞いた話だが、その時リーベルトは遊学中でうちの国に居たそうだ。
城のパーティで私との結婚を意識し、自身をアピールするために様々な年齢の異性から逃げている最中、たまたま出会ったのがリーベルトだった。上手くソイツらから隠してくれたのだ。いつしかパーティではいつもリーベルトの姿を探すようになった。そしてその時はいつも故郷の話をしてくれていたのだ。小さいけど穏やかで美しい故郷の話を。
「2人に会われたのですね」
リーベルトは私の手をとり、優しい声で尋ねた。
「ええ。リーシャの方は恩赦を与えて解放しました」
彼女は鼻血も流したし、ある意味王子の本性を炙り出すのに一役買ってくれた。昨夜様子を見に行ったら、鼻水を流しながら泣いて謝ってきたのだ。どうやら彼女の世話役が、切々と何が悪いのかどう悪いのか説いてくれたらしい。
「ごめんなざい~!!! 本気で王妃になれるって夢みぢゃっだのぉぉぉ!」
美女のガチ泣きと言うのはなかなか迫力があった。この反省が本当かどうか確かめようがないが、彼女は2度とこんなことをしないと誓い、また爵位のない元の生活へと戻ることになった。ただ、父親とは別々だ。おそらくその方がいいだろう。
実はその前に王妃から頼まれて、レオンに最後のチャンスを与えに行っていたのだ。幽閉された部屋の中は暴れた跡があり酷いありさまだった。
(いやぁ時間の無駄だと思うけどな~)
「母上! 俺はあのアバズレに騙されていたのです!」
期待通り、レオンには反省の色などなかった。あれこれと他人のせいにして母親に助けを求めていた。真実の愛はどこいったんだ?
「アイリス姫! 本気ではないのでしょう? あのような女に俺が本気になるとでも? ただの遊びです。貴女も不倫は許して下さるとおっしゃっていたではないですか!」
なんて言われた時は私も流石に頭がくらくらした。どんだけ都合がいいんだお前の頭は。
「そんなに嫉妬しないで。これからいくらでも抱いて差し上げますから」
ここで私の右ストレートが綺麗に決まった。イメージ通りに出来たが、やはり拳が痛い。
「うがあああぁぁぁ! 痛い! 痛いよぉ! 医者を呼べぇ! このクソ女ァァァ」
ただ鼻血が垂れているだけなのだが、大騒ぎだ。そのまま再び兵士に取り押さえられ、私と王妃は部屋を出た。
「申し訳ありません……」
一応王子の母親なので謝っておく。
「いえ、そんな……こちらこそ無理を申しましたのに……さらにご不快にさせてしまって……」
意気消沈具合が半端ない。母親だもん。いくら息子がアレでも心配は心配だよね。
「流刑で、少しは改心してくれるといいのですが……」
静かに涙は流しているが、息子の刑の覚悟はできたようだった。
(腐っても母親だもんな……)
どんなに非常識だと言われても、息子を見捨てることは難しいのだろう。親という立場、一国の王妃という立場の両立があの息子によって難しくなってしまった。
今後私だって同じ立場になるかもしれない。よくよく考えて行動しなければ。
昨夜のこんな経緯を、リーベルトはすでに知っているようだった。
「お疲れさまでした」
そういって、私がレオンを殴った拳を優しくさすってくれた。
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