第22話 獣魔王
仄暗い部屋の片隅、冷たい青い光が大きく太い背中を照らしている。身体中の各部の筋肉が瘤のように膨らんでいる。肩などまるで大きな岩の塊を貼り付けたようである。
『獅子王』である。数ある獣魔の中でも君臨する圧倒的な力をもち、獣魔たちの王としてリーダーの役を担っている。妖魔たちも一目を置いている強者である。
「おう、獅子王。今戻った。今、マースさまが、妖魔王さまに報告されているところだ」
「そのようだな。今、妖魔たちが妖魔王のところに集まっている。ふふふ、聞いておるぞ。オレの耳に入った情報では、ヤツらに攻められて、目的の魔人の処理さえできずに、尻尾を巻いて逃げ帰ったようだな」
獅子王の厳しい口調に、熊王、白虎、狼牙の3体が思わず気色ばんだ。
「グルルッ、逃げて来ただと! ふざけるな獅子王、お前に何がわかる」
獅子王の一言に、感情を抑えきれなかった狼牙が、歯を剥き出して威嚇した。
「グオォーッ!狼牙!このバカ者が!」
獅子王の咆哮に空間が大きく揺れた。軽く振るった右腕の強烈な衝撃に、狼牙が弾き飛ばされ岩壁に激突した。
獅子王の恐るべき腕力、軽く腕を振るっただけなのに、狼牙の口許からは、青い体液が流れていた。
「狼牙、誰に口を聞いている!文句があるなら、かかってこい。いつでも相手になってやるぞ」
獅子王の怒りを含んだ響き渡る声が、空気をビリビリ震わす。
「まずはお前を喰らってやろうか。オレはな、今、腹が減っているんだ」
熊王も白虎もまったく為す術がなかった。怒る獅子王に逆らっても到底勝つことなどできない。3体が同時にかかっても、無理であろう。それほど力の差は大きいのだ。
狼牙は我を忘れていた。屈辱を受けて頭に血が上る。口許を濡らす青い体液に染まった鋭い牙を噛み鳴らした。
「グゥオォーッ!」
牙を剥き唸りをあげて獅子王に向かって飛ぶ。獅子王の太い喉元を狙って。
止める間もなかった。獅子王の喉元を引き裂く思いを乗せて、稲妻のような素早さで飛びかかる狼牙を。儚い思いではあったが・・・・・
鋭い牙が喉元を引き裂く寸前に、大きく裂けた上顎を、獅子王の鋼のような右手が、下顎を左手が掴み停めた。
「グゥオゥーッ!愚か者がぁ!」
肩の大きな瘤が動く、腕の太い筋肉が力強く波打つ。上下の顎にかけられた両手に力が漲る。
「ベリッ、バリバリッ」
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