第10話 初めての街

外に出ると、朝日が眩しかった。

今日は山道を歩き、街を探す日だ。


異世界に来て約1年、いよいよ人に会うかもしれないと思うと緊張してくる。どうにか敵対せずに仲良くやっていきたいな。でもまぁそれもこれも、山道を抜けてからの話ではあるが・・・


朝いちで出発した。山道を進むにあたり、使用しているスキルがある。《身体強化》だ。MPを1分につき1消費するが、スキルレベル10なので、身体能力が2倍になるという優れものだ。


通常、成人男性であれば、徒歩で時速4km、走ると時速10kmほどだろう。今のステータスでは、時速20kmで走ってもまだ余裕がある。それに加えて、《身体強化》を使用すると、時速40km以上の速度が出せるというわけだ。


ちなみに、スキルを使用すると熟練度が上がり、ある一定値を超えるとスキルレベルが上がる。スキルレベルは10がMAXのようだ。今持っているスキルは、だいたい10に上げている。


3時間ほど《身体強化》で走ったが、まだ終わりは見えない。道中、ラビットなどの魔物は出るが、持ち前の身体能力でスルーした。倒すのは簡単だが、今の目的は街探しだから、これに時間を取られるわけにはいけない。


小休憩として昼食を取り、スキル《リカバリー》を唱えた。これは聖魔法で、倦怠感などの疲れを小回復してくれる。3時間ただ走っていただけなので、これで十分に回復出来る。


休憩を終え、再度走り出した。1時間ほど走ると、木の杭が見えてきたので速度を落とした。この1年で来たことのある1番遠い場所だ。以前は《テレポート》を獲得していなかったので、このあたりで引き返した記憶がある。今日はこれから先へと進むのだ。


未知の領域であるのは間違いないので、スキル《探索》を使用しながら進むことにする。《探索》は、MP10消費することで、半径100mの状況を把握することが出来る。周囲を警戒しながら歩くにはちょうどよいスキルだ。


特に問題なくさらに3時間ほど歩いていくと、ようやく終わりが見えてきた。夕日が前から照らしており、まだはっきりとはわからないが、木々がまばらになってきている。いよいよ終わりが近づいてきているのがわかる。《探索》で確認して、森を抜けるのは確実だ。


期待に胸を膨らませ、山道を抜けると目の前には草原が広がっていた。見渡す限りの草原だ。右前方1kmほど先だろうか、街が見える。


「街だ!」


興奮のあまり、スキル《遠視》を使用。人の存在を確認出来た。長かった。異世界にきて約1年、ようやく人と出会う。


感慨深くなり、後方の山道を振り返ってみると、山道が消えていた。一面森になっているのだ。あれ?と思い森の中に入ってみると、山道に切り替わった。これは認識阻害の何かが作用しているようだ。どうりで誰とも合わないはずだ。


ひとまず小屋へは《テレポート》で戻れるので気にしなくてもいいのかな。よし、街に向かおう。初めての街。どんな人と出会うのだろうか。考えるだけでワクワクしてきて、足取りも軽くなってきた。

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