562. 火山の鍛冶場

 モダルファスたちが調べ終わった幻想金属は、やっぱり高純度なものが大量に保管されているようだ。

 これで幻想金属の問題もばっちり解決だろう。

 鍛冶はヴァードモイの鍛冶場とここ、どっちがいいかわからないから、戻ってテイサさんに聞いてみよう。


「ふむ。そんな辺鄙な場所に鍛冶場をねぇ。そいつは行って確かめるしかないな」


「いいんですか? お店を留守にすることになりますけど?」


「いいんだよ。急ぎの仕事は全部終わらせてあって依頼は入ってない。それよりも、その大量の幻想金属とやらを確認したい」


「わかりました。念のため、アリゼさんも来たいと言っているので一緒に来てもらいますね」


「そんくらい構わんさ。準備するから明日まで時間をくれ。それじゃな」


 私との話が終わると、さっさと店の看板を『閉店』に替えて準備を始めたようだ。

 私たちが出ていけば扉の鍵を閉めるほどの念の入れようである。

 これはかなり気合いが入っているな。


 そして、翌朝。

 気合いが入っていたのはテイサさんだけじゃなかった。

 ハノンさんも気合いが入っていたし、なんならアリゼさんも気合いが入っていた。

 なぜだ?


「商業ギルドといたしましても、大量の幻想金属が保管されているという事例は聞いたことがありません。そのため、現地調査を行う予定ですね」


「商業ギルドには売りませんよ?」


「もちろんです。むしろ、リリィ様の物だと主張できるよう、ヴァードモイに持ち帰り、屋敷の宝物庫にしまっておいていただきたいものです」


 ……ああ、それで今回はルミテグランドウィングもついていくのか。

 ルミテグランドウィングだとドラゴン様のねぐらまで上れないんだけど、どうしてついてきたのか疑問に思ってた。

 あの鉱石を運ぶためだったんだね。

 それでも、麓まで鉱石を運ばなくちゃいけないから一作業だけど。

 そこはまあ、うまくやってくれるでしょう。

 私はどう考えてもやらせてもらえないから黙ってる。


 実際に鍛冶をするテイサさんたちと、余った鉱石を運び出すグループのふたつを引き連れた私たちは、一度ドラゴン様のねぐらまで上がり、そこから斜面を下って先日の鍛冶場へとたどり着いた。

 相変わらず、年季は感じられるものの、がっしりとして頑丈そうな建物だ。


「リリィ、幻想金属ってのはどこにあるんだ?」


「ん? あっちの建物が倉庫になっていて山積みにされていましたよ。一応種類ごとに分かれていたみたいですから、見ればすぐにわかりますって」


「よし。じゃあ、ちょっと行ってくる!」


 テイサさんが駆け出していってしまった。

 ハノンさんも頭を振りつつテイサさんのあとを追う。

 やっぱり、ふたりとも幻想金属の山には興味があるみたいだね。

 ……まあ、興味があるか、誰でも。

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