356. キブリンキ・サルタスの提案をヴァードモイ侯爵様と共有

 ヴァードモイ侯爵様にお伺いを立て、面会の許可を得た。

 説明役にキブリンキ・サルタスの1匹も一緒だ。

 最初の説明だけ私がして残りはキブリンキ・サルタスに任せたけど、ヴァードモイ侯爵様も困ったような顔をしている。

 まあ、当然か。


「話はわかった。街の防衛に力を貸してもらえるのならば、増やしてもらっても構わない」


「え、いいんですか、ヴァードモイ侯爵様?」


「リリィが契約できる範囲でという限定付きだ。さすがにキブリンキ・サルタスとはいえ、テイムモンスターではないモンスターを街中に入れるわけにはいかぬ」


 これもまた当然か。


 結論としては、私がキブリンキ・サルタスの『混沌の渦』まで巣分け前のキブリンキ・サルタスたちを迎えに行き、話に応じてくれた子の中から契約できたキブリンキ・サルタスを街に連れてくることとなる。

 今回は大規模な従魔が増える前提ということで、テイマーギルドから特別に人を派遣してもらうようだ。

 うん、話が大きくなってきたぞ。


「それで、キブリンキ・サルタスの『混沌の渦』とはどこにあるのだ?」


「私もそれはまだ聞いていません。ねえ、どこにあるの?」


『ここからだと少し遠いな。西にある大きな川ひとつと大きな岩山をふたつ飛び越え、大きな山3つに囲まれた窪地に『混沌の渦』はある』


「ええと、とりあえず離れた場所ってこと?」


『そうなる』


「……どうしましょう、ヴァードモイ侯爵様?」


「地図を持ってこさせよう。おおよその位置がわかるはずだ」


 ヴァードモイ侯爵様は家人に指示してヴァードモイ周辺の地図ともっと広い地方の地図、それから旧国の地図を持ってこさせた。

 その中から先ほどキブリンキ・サルタスが示した場所を探していくと、旧国の地図の西の端に該当する場所がある。

 どうやらここらしい。


 問題は、ここはいまだと西側国家の領地内であり、マクファーレン公国に所属しているヴァードモイ侯爵様や私が、おいそれと入っていくことができない場所であるということだ。

 さて、どうしよう?


『あまり深く考えるな。飛んでいけばいい』


「飛んで? 鳥便でも使うの?」


『いや。我々は蜘蛛だ。糸を使い、風に乗ることで空も飛べる。タラトもその応用で空を飛べるだろう』


 えっ、そんなことができたの?

 タラトに聞けば、できないこともないと言うし、蜘蛛って不思議。

 でも、これで移動手段は決まったわけだ。


 だけど風に乗って移動するってことは、移動も風任せなんじゃないかな?

 決まったところに飛んでいけるんだろうか?

 ちょっと不安である。

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