251. アネット様の処遇
アネット様についてだが、マクファーレン公爵家やヴァードモイ侯爵家で預かるのはよくないそうだ。
結局は王家の人間として預かることになるし、素性が知れているから行儀見習いなどにすることもできない。
ほかの貴族の家も同じ。
正体がばれればお家騒動の火種になる。
そうなると、そういった貴族の家系からほどほどに遠く、アネット様を預けても大丈夫そうな私に白羽の矢が立ったということらしい。
うん、さすがに待ってほしいかな。
「ええと、アネット様を私が受け入れるメリットってなんですか?」
「そこが問題なのじゃ。お主に対してなんの対価も示せないようでは話にならぬ。お主、ほしいものはないか?」
ほしいもの……ほしいもの。
いきなり言われても困るな。
額に手を当てて考え込んだあげく、思いついたのはひとつだけだった。
「魔石がほしいです。アネット様まで抱えると魔石を取りに行く時間が取れません。魔石を継続的に用意していただかないと私の稼ぎに支障が出ます」
「ふむ、わかった。お主に魔石取り扱いの免許状を渡そう。それとは別に定期的に魔石を納品することも契約書に起こす。魔石はどれくらいのものを求める?」
「ええと、オーガ以上を魔石を40個以上は毎週ほしいです。それでマナスパイダーシルクまではやっていけてますので」
「……つまり、フロストスパイダーシルクは作れぬか」
「フロストスパイダーシルクを作ってたころは、フロストワイバーンを相手にしていたんですよね。それと同等の魔石がほしいです」
「それも飲もう。ほかに要求はないか?」
ほかに……ああ、そうだ。
これもはっきりさせておかないと。
「アネット様の護衛が足りません。いまいる護衛は私の護衛に来ているメンバーなので、アネット様の護衛まで手が回るかわかりません。護衛を増やすことはできますか?」
「護衛か。ちとむずいな。アネット様のそばに置いても問題ないと判断できるほど信頼できる護衛がいまのところいない。プラム様、ダーシェ公国から呼び寄せてはいただけませんか?」
「無理がある。リリィは儂の恩人だから護衛兼召使いを呼んだが、アネットという娘は儂となんの関係もない。リリィのところに来るのであれば気にかける程度はできるが、完全に護衛をできるかというとそうではない。さすがに無理筋だぞ」
「そうですか。困りました……」
うーん、ルマジャさんは本当に困っているみたいだ。
マクファーレン公爵様もヴァードモイ侯爵様も難しい顔をしていらっしゃるけど、口を挟まないということはこの件はルマジャさんに一任されているんだろう。
変に貴族の圧力で私に押しつければ私がいなくなると考えているんだろうね。
実際、私はダーシェ公国に渡る伝手があるし。
私もアネット様のためになにかしてあげたいけど難しいな。
護衛の件が片付けば迎え入れてもいいんだけど。
「ふむ、さすがに困っているようだな」
「プラムさん、さすがにちょっと」
「足りないのは護衛じゃろ。ならば護衛の手を増やせばよい」
増やせばよいって……。
みんなそれができずに悩んでいるのに。
私たちの思いを知ってか知らずか、プラムさんはひとつの解決策を挙げてくる。
「リリィのテイムモンスターを増やすのじゃ。無論、弱いモンスターでは意味がない。強いモンスターでリリィがテイムできそうなモンスターを探せ。ルマジャ、お主は冒険者ギルドの総元締めなのだから不可能ではないだろう?」
プラムさん、さすがに無茶ぶりだと思う。
でも、ルマジャさんも反論しなかったということは、それが最善だと思っているんだろうね。
でも、私ってテイマーだけどタラトは特別だからなぁ。
ほかのモンスターってテイムできるんだろうか。
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