60. ブラジャーとショーツ
革鎧は男性用も用意することになり、合計30売れた。
男性の方が少しばかり値上げさせてもらったけど仕方のないことだ。
私は女性なので女性を応援する。
さて、今日やってきたのは商業ギルド。
アリゼさんと一緒に個室で商談だ。
「リリィ様、なにか変わったものでもお作りになりましたか?」
「変わったものというか……この国って女性用下着がないですよね?」
「この国と言うより、この付近の国々すべてで存在しておりません。それがなにか?」
「それを解消するための下着を持って来ました」
私がリュックから取り出したのはブラジャーとショーツ。
一般的な形のブラジャーとショーツだ。
前にも言った気がするけれど、この世界にはどちらも存在していない。
女神様が用意してくれた服にはあったけどそれだけのはずだ。
実際、これを取り出したときのアリゼさんもどう反応すればいいのかわからないでいるし。
「あの、これは?」
「この胸の膨らみの形になっている下着がブラジャー。見ての通り胸を締め付けるのではなく支えあげ、包み込むようにして作られています。いままでのように、布で巻いて潰すといった生活からは解放されますよ」
「なるほど。ですが、こちらのものは……」
「そちらはショーツと言います。見ての通り腰にはく下着、ドロワーズの代わりですね」
「えっと、形をみればなんとなく用途はわかります。ですが、その……破廉恥では?」
そう、この世界で女性が生足を晒すのは破廉恥な行為となっているのだ。
なので、夏真っ盛りないまでも全員長ズボンかくるぶし丈のスカートをはいている。
私は気にせず膝下丈のスカートにガーターベルトにガーターストッキング代わりの膝上まであるソックスをはいているけどね!
「アリゼさん、見えないところの服を代えるだけですから破廉恥ではありません。それに、夏場はドロワーズだと蒸れますよね?」
「うっ、それは……」
「ショーツだとその点もある程度改善されますよ? そちらは試供品として差し上げますので試しに使ってみてください。明後日、結果を聞きに来ますから」
そう言って私は席を立つ。
ブラジャーとショーツの魔力に堕ちるがいい!
○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●
約束の日、商業ギルドを訪れたらアリゼさんが入り口で待ち構えていた。
どうしたんだろう。
一言二言あいさつを交わすとすぐさま個室へと移動することになった。
そして、出てきた話題はやはりショーツとブラジャーについてだ。
「なんなんですか、あの下着は! 胸を押さえつけるどころか持ち上げることで楽になりました。ショーツもはくまでは勇気がいりましたが、いざはいてみると肌触りがよく、紐で締め付けもしないので快適です。一体どんな魔法を込めているんですか?」
「魔法というか、エンチャントはかけました。ブラジャーには【通気性上昇】と【肌触り良好】をショーツには【汚染防止】と【消臭】です」
「【汚染防止】と【消臭】……」
「下着が汚れていたり臭かったりするのは嫌ですよね?」
「はい。その通りです。それで、ショーツはスカートの中なのでばれませんでしたが、ブラジャーは出勤してすぐ同僚にばれました。私だけ胸を押さえつけず、胸の形がはっきりしているのですから当然です」
「ですよね。何枚必要ですか?」
「初めから売る目的で来ていたんですね」
「商人ですから」
私は銅商人、儲けが出そうにないことはしない。
いや、魔法裁縫の修練の傍らというのもあるけど。
「ブラジャーはたくさんいります。商業ギルド中の女性職員全員が欲しがっていますから」
「そこまでですか。とりあえず50枚はあるんですが……足りませんよね?」
「まったく足りません。商業ギルドは女性職員の数も多いんです。替えの分を考えるとひとり5枚はほしいです」
「わかりました。これが終わったら冒険者ギルドに売り込みに行こうかなと考えていましたけど、商業ギルドの売り込みが終わってからにします」
「ありがとうございます。それからショーツも話しましたが、こちらは賛成派が四割、反対派が六割といったところです。とりあえずある分だけ売ってください。反対派にもはかせて利便性を知らしめてみせますので」
うーん、アリゼさんがショーツ信者になってしまった。
結局、ブラジャーもショーツも大量にお買い上げいただくことができ、いい売り上げになったよ。
ブラジャーとショーツの新案登録も済ませたから、作りたい人は商業ギルドから図面を買うことも出来るし、買わずに模倣品を作れば商業ギルドから摘発されることだってある。
うーん、知識チートは使えないかと思っていたけど、思わぬところで使えてしまった。
ちなみに、余談。
「どうして商業ギルドばかり優先して冒険者ギルドには回してくれないんですかぁ!?」
商業ギルドの分が回りきったあたりで冒険者ギルドにも話が入ってきたらしく、受付のお姉さんから泣きつかれた。
冒険者ギルドの職員にも売ってあげることを約束したら落ち着いたけど、私、銅商人だってことを忘れられてないよね?
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