第4話 嫌いだ


 

 「さあ、こっち来て!」

煌は、握手した伊吹の手をそのまま掴み、

囲んでいた人混みを書き分け、伊吹とともに人混みから脱出した。

 

 伊吹は、その煌の強引さに引いていた。

人混みから脱出すると、さっと手を振り払って、握手を解消した。

 

 馴れ馴れしいな、と、

伊吹は煌の事が更に苦手になっていた。

 

 「あ、ごめん、痛かった?」

煌は慌てて、伊吹を気遣った。


 煌は真っ直ぐな瞳で、少し心配そうな顔をしている。

 

 どうにもやり辛い、伊吹は煌に印象を追加した。

 

 「いや。それより、ここがユートピアか?」

伊吹は、自分の聞きたい事を聞く事に専念した。

 

 「うん!そうだよ!」

目を細めて煌は笑って答えた。

 

 ぶりっ子、自分の事を可愛いと思っている奴程可愛くないのに、と伊吹は思った。

伊吹は、煌に辛辣な嫌悪すら覚える様になった。

 

 「ここに、ミュージシャンはいますか?」

目線を煌から逸らし、辺りを見回して伊吹が言った。

 「伊吹は、音楽が好きなのか?」

伊吹の視界に入る様に、移動しながら煌は言った。

 

 伊吹は、煌を嫌いになった。

 

 質問を質問で返せる人間に碌な人は居ない、と、伊吹は思っていた。

さっさとミュージシャンに歌を聞かせて貰い、

こいつとは関わらない様にしよう、

伊吹はそう思った。

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