第2話 選択肢
黒よりも黒い、影すら存在しない場所で、
異物の者は言った。
「やあ青年、待ってたよ!」
スポットライトで上から照らされた異物の者は、
オーロラカラーの大きな布を被さっており、
人間の頭部らしき場所には、クエスチョンマークが描かれた仮面を装着していた。
同じく、青年にもスポットライトが当たる。
「ここは、」
青年は、辺りを見回すが、黒くて何も無い。
見えるのは、異物の姿だけだった。
「さあ、青年よ、さっさと始めよう!
君には二つの選択肢がある。
一つ目、ユートピアの世界に転生して、加えて一回だけ、君の願いを叶えられる権利が与えられる。
そして二つ目、現実の世界に転生する。勿論、別の人間として、だ。記憶も持たず、
何の権利も持たず、ただ生まれ変わるだけだ。
さあ、どちらか選ぼう。」
両手の様な物を横に広げて、異物の者は言った。
「俺は、死んだのか。」
青年は言った。
「そうだ。青年、名前は?」
異物の者が問いかけた。
「伊吹、イブだ。」
伊吹は答えた。
「イブ?お前は男なのにか?変だな。
まあいい、さあ、ユートピアと、クソみたいな現実世界、権利を与えられた転生とただの生まれ変わり、どちらを選ぶ?さあ!」
異物の者が、伊吹の返答を催促する。
「ユートピア?何だそれ?」
伊吹は落ち着いた口調で言った。
「行けば分かるさ!お前、変わってるな、死んでも、俺の姿を見ても、ユートピアと聞いても、何も動じないな。どうした、大丈夫か?」
異物の者は、伊吹の扱い方に少し困惑していた。
「ああ、大丈夫だ。いつもこうだ。バンド、音楽以外、何も興味がない。
ユートピアにする。ユートピアの音楽を聴いてみる良い機会だ。」
伊吹は、表情を何一つ変えずに答えた。
「本当に変わっているな、お前。まあ良い、ユートピアだな、分かった!
後、願いは何だ?どんな力も手に入るぞ!」
異物の者は力強く、そう言った。
「その権利、後でも良いか?早く行きたい、ユートピアに。」
伊吹はそっけない口振りで言った。
「まあ、後でも良いが。伊吹、変なやつだ。
伊吹が何を望むのか、少し興味が湧いてきたよ、俺は。では、またな!」
異物の者がそう叫ぶと、スポットライトが二つ消えた。
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