#35 それぞれの動向
〜前回の最後〜
なんだが不穏な異形衆のボス!だが今はそんなことは関係ない!そしてそれぞれの目的のために動き出すメイプルたち!さぁ、どんなことが待ち受けているのかな?
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〜ヘインとメディ〜
ヘインとメディたちは、ソルグロスのところへと向かっていた。ボスから聞いた話によれば、ソルグロスは偽名で、本名は“シャガラ”。そのソルグロスは既に死んでいるとの話を聞いたからだ。
「ソル!いるか!」
「おん?なんやそんな大声出して、なんか緊急事態でも起きてん?」
少し驚いた様子でソルグロス、いや、シャガラがヘインとメディのことを見た
「少しお前と話したいことがあってな。」
「全然ええけど。ちょっと待っとってな。準備できたら呼ぶわ」
そう言い、シャガラは自身の部屋の中に戻っていった。そうしてしばらく時間が経った後、再び部屋の中からシャガラの「入ってええで」という声が聞こえたため、ヘインたちは部屋の中へ入っていった
「で、話ってなんや?」
「お前の本名についてだ」
「あ〜…もうバレたん?」
特に焦ると言ったようなそぶりもなく、シャガラは平然そうにそういった
「焦らないんですね…」
「いやまぁ、バレるのは時間の問題やったからな。そう雄焦ることでもないやろ」
「なるほどな…それはそうと、なんで俺たちに情報を偽ったんだ?」
「だってあんときは仲間なるんかは不確定やったし、しかも言おうと思ってたタイミングで勧誘に成功するわ、言うタイミング完全に逃しとったんや。それに関してはすまへんな」
「…意外とあっさり答えるんだな」
ヘインは正直、ここまで正直に答えられるとは思っていなかったため、少しだけ驚いていた。
「まぁもう仲間になったし、別に偽る必要もないしな。…ぶっちゃけ、故人の名前を使うんは、ワイとしても心地は悪かったし。」
「じゃあもっと他の名前で偽ればよかっただろ…」
少し呆れ気味に、ヘインはそういう。シャガラもそれに笑い、「確かに」と、そういった
「ほんじゃま、改めて自己紹介と行こうか。ワイの名前は『ソルグロス・フュズィーク』改め、『シャガラ・リヴェル』や。ほいで、“八獄”『大叫』を務めとるもんや」
「お前八獄だったのか!?」
「おん?八獄のメンバー誰か聞いてないんか?」
不思議そうな顔で、シャガラはヘインにそういうが、ヘインは階級のことしか聞いていないため、とても驚いていた
「聞いてないも何も、俺たちは階級の話しかされていない。誰がどの役職かなんて、一才聞かされていないぞ」
「はぁ?うそやろ…いやまぁ、ボスのことなら有り得ん話でもないわな。」
呆れた様子で、シャガラは嘆息をつく。
「でもまぁ、ここでワイが教えるんも味気ないし、自分で探してみるのも一興やな。それで?ワイに関しての話はここまでか?」
「あ、ああ、とりあえず聞けたいことは聞けたから一応用は済んだ」
「ほんなら良かったわ。これからどっかいく予定でもあるんか?」
「いや、特に何も…」
なら、と、シャガラがあることを提案する
「リュウゲンに案内して貰えばええやん。他の八獄の居場所」
「お前はいかないのか?」
「いや普通に面倒やから行かんけど。それにワイだってちょっとやりたいこともあってん」
「そ、そうか」
「リュウゲンなら多分そこら辺をほっつき歩いとるから、見つけ次第声かけてみいや」
そう言って、シャガラは自身の作業に戻った
「教えてくれてありがとな」
「別に感謝されることなんてしてないわ。仲間なら当然のことやろうし」
ヘインとメディは、一礼して部屋を出ていき、リュウゲンを探しにいく
「ところでメディ、さっき部屋にいた時、何も話していなかったが何か思うところでもあったのか?」
「うぇ!?いや!何もないですよ!ちょっと緊張しちゃって、何も言葉が出なかっただけです!」
「…?まぁ、大丈夫ならそれで良いんだが…」
声をかけただけでとても驚いたメディに対して、少しだけヘインは不審に思ったが、野暮な詮索はしまいと、何も言わずにいるのだった
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〜メイプルとクレア〜
「さぁ!早くきてください!いろいろ街回りたいとこあるんすよ!」
「はいはい、今日はいくらでもついていってあげるから」
クレアとメイプルは、とても楽しい時間を過ごしていた。先ほどのヘインたちの時のような、少しだけ厳しい雰囲気などではなく、そこにはただ出かけた先で買い物などを楽しむなんの変哲もない平和な日常を過ごす、年相応の少女たちの姿があった
「こうやってみるとほんっとに広いっすね〜!こんな街があるなんて全然知らなかったっす!」
「それは私も思った。たしかにこんな広い街なのに、今まで知らなかったっていうのも不思議な話だよね」
この町はこれまで知られていなかったのが不思議になるレベルで大きく、他の街と比べても遜色ない発展度合いだった
「とりあえず、ご飯食べにいくっすよ!さっきからお腹空いててもうそろそろ限界なんすよ!」
「そうだね。時間も時間だし、回るついでにどこか探そうか」
そう言ったような感じでのんびりと街を散策していたのだが
「ん?あの人…」
「どうしたっすか?先輩?」
メイプルは、ほんの少しだけ見たことのある人物がその目に留まっていた
「ほらあの…白い軍服みたいな…」
「え?…あ、あの人っすか?」
背が高く、端正な顔立ちの青年で、まさしく“騎士”のような出立だった。その青年は噴水の近くで多くの観衆に囲まれていた。その青年の表情は非常に困っている様子だった
「凄い困ってるっすね…しかも囲んでる人の半数が女の人…まぁでも確かに、あんだけカッコよかったら、ああなるのは仕方ないことっすよね。」
「確かにそうだね。じゃ、ご飯食べに行こっか!…って待って、よくよく考えたけどお金持ってるの?」
「ああ、そのことなら心配無用っす!」
そしてクレアは自身の持っている小さなバッグから、お金を入れるための袋のようなものを取り出した。中にはそこそこのお金が入っているように見受けられ、メイプルはそれに対して非常に驚いていた
「いつの間にそんな資金を…」
「リュウゲン先輩がくれたんすよ。この街じゃこれないと不便だろって、お金の出どころ聞いたらポケットマネーかららしいすけど…」
「ええ…後でお礼しとかなきゃ」
メイプルはまさか“組織”から出たお金ではなく、リュウゲン自身の懐からクレアちゃんに渡すとは思っていなかったため、そのことに対して非常に驚いてしまっていた
「結構入ってるっすね…使うの怖くなってきちゃったっす」
「ま、まぁ渡してくれたのなら使おう?もし余ればちょっと返すような感じでさ…」
流石に気が引けたのか、メイプルもクレアも、若干使うことに対して躊躇が出てきていた。
「とりあえず、ここのお店は入りません?色々美味しそうなやつが結構あるんすよ!」
「躊躇ってても仕方ないか…そうだね、とりあえず入ろう」
そうして、メイプルとクレアは、お店の中へと入っていった。
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〜レツハ〜
「ここら辺にいるって聞いたんだけど…今いねぇのかな?」
レツハは、1人で“八獄”のメンバーを探していた。他の人に情報を聞きながらも、どこにいるかは不明瞭なため、困難を極めていた
「おっかしぃなぁ…聞いた話だとここら辺の森で監視作業してるみたいなこと言われたんだけど…もう少し探してみるか」
レツハが聞いた情報によると、ここには”八獄“『黒縄』がいるといわれていた。性別は女性で、水色の髪をしているという容姿の情報まで聞いたのだが、何一つとしてその痕跡すら見つけられていなかった
「さってと…まだこっちの方行ってないんだよな…ちょっと休憩していくか…ん?なんだ…?ガサガサしてるけど」
すると突然、草むらの中から黒い影が飛び出し、一瞬でレツハの後ろへと到達していた
「動かないで。騒いだら殺すから。」
「随分と物騒だねぇ…同じ“
「出鱈目を…」
レツハは後ろから首元にナイフを突き立てられる。だがレツハは、それに焦った様子はなかった
「出鱈目じゃないぜ?試しに見せてやろうか?」
「なにを言って…っ!?」
レツハは自身の首元に突き立てられたナイフを素手で握り、手をシュッとスライドした。その奇想天外な行動に、突き立てた人物は驚き、距離を取った
「一体何をしてるの!?」
「何をって、言っただろ?見せてやるって」
「別に見せてって頼んでないでしょ!?」
「言ってなかったっけか?まぁ別に仲間っていう証明にもなるし良いだろ」
するとそのレツハの手や、血が付着したところが燃えはじめた
「それが…貴方の?」
「そう、“血液が可燃性、爆発性のあるものになる”っていうのが俺の異形だ」
「随分と危険な異形だな。…?ところでお前、燃えているが大丈夫なのか?」
「ダメに決まってるだろ、今にも溶けそうだ…」
「わあああああ!!!今すぐ火を消してえええええ!」
謎の人物はレツハが燃えているのを見せて、非常に焦る。レツハも、不完全燃焼から発生した一酸化炭素で少し意識が朦朧としてきていた
「ごっめ…とりあえず…湖に連れてってくれ…」
「馬鹿!?馬鹿なの貴方!?」
「親切なんだなぁアンタ…」
レツハの火が消えた後、その謎の人物はレツハのことをおぶって近場の湖へと運んでいた
「ごめんなさい。突然首元にナイフを突き立ててしまって」
「いいや、いいんだ。突然来たこっちも悪いんだし、別に焦ることでもなかったしな。それに、お前の身体能力から見るに、少なくとも人間ではなさそうだったからな」
「よくわかったわね…ほいっと」
「どわぁっ!」
ついた湖の中にレツハを放り込んで、そんなことを話していた
「いっつつ…急に湖に投げるなよな…ところで、アンタ何もんだ?」
「私?私は『レヴィ・ヴァイア』。君が探している『黒縄』よ。」
「ああ、アンタが…っておい、なんで俺が探してること知ってるんだよ」
「それはリュウゲンからの情報ね。彼が、「今度ここに新人が来るから、いろいろ世話してやってくれ」って。私は嫌だったのだけど、まぁ1人くらいならって感じで、渋々受け入れたのよ。」
水色の美しい長髪を揺らし、嫌そうな顔でレヴィがそう言う。
「俺の世話でもしてくれるってのか?」
「そうね。しばらくの間だけだけど、リュウゲンのやりたいことが終わるまでは、私と過ごす形になるわ。お仲間のことは安心して良いわよ。多分、“八獄”のメンバーがそれぞれの面倒も見てくれるはずだから」
「そうかい。そんなら俺は役得なとこに来ちまったのかもな」
「あら、どうして?」
レツハはそら、と言いそのまま言葉を綴る
「美人さんと2人で過ごせて喜ばない男はいないだろ?」
「ふふ、口は達者ね。素直に受け取って良いのかしら?」
「もちろん構わないぜ。俺は正直なことしか口にしないからな。」
レヴィはレツハに対して
「これからよろしくね。レツハさん?」
「呼び捨てで大丈夫だぜ。こっちこそよろしくな。レヴィ」
「許可してないのに急に呼び捨てだなんて、失礼ねぇ」
「おっと、悪りぃ」
「ふふ、いいのよ。全然気にしてないわ」
そうして、レツハは新たな仲間と意気投合したのだった
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