幕間#2 十天守護者、集結
「…はい、なるほど、わかりました。いますぐ招集して緊急会議を始めるとしましょう。…貴方はそこで調査を続けてください」
青年は魔法通信で伝令を受け取り、何かを承諾していた。そして魔法通信を切った後、椅子に座り、困った様子で頭を抱えていた
「困りましたね…最近になってこういうことばかり…こちらの戦力状況も見直さなけれないけないのでしょうか…いえ、今はそんなことを考えている場合ではありませんね、一旦全員を集めて会議しないと…」
そうして青年はもう一度席から立ち、魔法通信機を手に取り、緊急会議を取ることを全員に伝えた
「さて、会議室に向かうとしますか…また、面倒なことにならなけれないいのですが…と、ポーラーも連れていかなくてはなりませんね。」
青年は先ほどよりもめんどくさそうにしながら、部屋から出る。長い廊下を歩いていくうちに、青年は一つの部屋の扉の前で立ち止まり、ノックをした。
「ポーラー、行きますよ。めんどくさがらないでください。貴方も“
そう青年が扉の向こうにいる人物へと声をかけると、扉が開き、中からめんどくさそうな顔をした男が出てきた
「…ほんとに行かなくちゃいかんの?」
「当たり前です。それに今回は無理をしてでも連れて行きますよ。とんでもなく重要なことですから、聞いてもらわないと困ります」
「ならここで話していってくれよ〜…俺まだ眠たいんだけど…」
「ダメです来てください!ほら行きますよ!」
そうして青年は男の腕を引っ張りながら、会議室へと連れて行く。
「わかった!わかったから腕離せ!ちょ!痛い痛い痛い!」
男は大声でそう言いながら青年へそう懇願するが、話す気配は全くなかった。
「話したら貴方逃げるじゃないですか!会議室に着くまではこうやって引きずりながら行きます!」
「逃げないから!逃げないから離してくれ!」
「ダメです!信用できません!」
軽い漫才まがいな事をしながら長い回路を進み、ようやくと言った感じで会議室の扉の前へ着いた
「さぁ、入りますよ」
「お前、馬鹿力がすぎるだろ…」
男は青年に呆れながら、めんどくさそうに起き上がり扉を押して中へと入った
「おっす〜みんな久しぶりだな〜!元気してた〜?」
「また遅刻かポーラー!これで何回目だと思っている!?」
扉の向こうには円卓があり、そこには6人の人間が座っていた。扉の向かい側にある席に座った男はポーラーと呼ばれる男に対して怒鳴る
「そんなん今気にしても意味ないだろ〜?さっさと始めようよ会議。ささっと終えてささっと各々の時間を潰そうじゃないか」
「ポーラーには今更何言っても通じないの知ってるでしょ?こいつ極度のめんどくさがり屋なんだからさ」
ポーラーの言葉に続いて、少女は言葉を綴るが、その声色は呆れそのものだった
「…今回かなり重要な会議ですからね。早くには終わりませんよ」
その言葉を聞いた途端、ポーラーの表情は明らかに嫌そうなものへと早変わりした
「はぁ…なんで俺こんなとこに選ばれちゃったんだろ…」
そうして渋々と言った感じでポーラーは扉の1番近い椅子に座り、だるそうな姿勢で円卓に腕をついた
「貴方という人は…まぁいいでしょう。今回の会議の内容についてです。前置きは無しにして、早速本題へと移らさせていただきます。」
そしてポーラーを除く円卓に座る人間が表情に緊張を持つ。
「1番大事な重要事項です。今回の異形殲滅作戦において派遣された“
「なんだと!?」
その報告を聞いた途端、円卓に座っている人間ほぼ全てがひどく驚いた。
「
「なんて惨い…誰がやったの?」
少女が青年へと問いかけるが、青年は首を横に振り
「残念ながら、殺害した人物を特定できていません。あまりにも痕跡が少なすぎるので。…追跡しようとしても無駄ですよ、リフリア。おそらく、私たちが今まで発見できていない異形がやったと推測されます。」
「なるほどね…また調べなきゃならないことが増えたってこと?」
「そういうことになりますね」
円卓に座る人間たちは、それぞれ難しい表情をした。
「そこで、私たち自身の強化を提案します。」
その提案に真っ先に興味を持ったのは、意外にもポーラーだった
「へぇ?俺らを鍛える的な感じかい?どうしてまた急に?」
「今回の件といい、先日のネクスが行った掃討作戦の時の被害もそうですが、最近、異形の戦闘力が上がってきているように見受けられます。現に今こうやって、”
「それで今のままじゃ危ないじゃもしれないから強化しようっていう魂胆ね…いいね、結構理に適ってるじゃん。」
ポーラーが今までにないくらいに興味を持ったため、その場にいる全員がポーラーのことを訝しげな目で見つめた
「皆なんでそんな目で俺のことを見てくるんだよ。そんなに意外かよ俺が会議の内容に興味を持つことが」
「いや、君みたいなやつでも意外と聞いてるんだなって、そう思っただけ」
「失礼だなルーファ。俺だってちゃんと聞いてるんだぜ?変な偏見を持つのはやめて欲しいな。」
ポーラーはカラカラと笑い、視線を青年へと向き直した
「具体的にはどういうような感じで俺たちのことを強化するんだ?」
「そこのあたりは色々話し合って決めるつもりです。まだ明確には決まっていません。ですが決まったとなれば、すぐに実践を開始するつもりです。」
「わかった。そういうことなら報告を待つとするかね。邪魔して悪かったな。話を続けてくれ」
「はい。それでは次の報告です。本来定例会議で話す内容なのですが、緊急会議のついででもいいでしょう。今現在の”
「そこからは俺が話す。」
「おや、何か発見したことでもあったのですか?」
先ほどポーラーのことを怒鳴っていた、金髪で高身長の端正な顔立ちの男が、青年の言葉を遮って言葉を発した。それに対して青年は咎める様子もなく、気になると言った様子で男の方を見る
「騎士団のレベル自体が上がってきているのが確かなんだが、それと同時に騎士団に所属する団員の驕りが目に見えて増えてきている。鍛錬を怠っているわけではないのだが、あの傲慢さには目に余るものだった。それに関しての対応を考えたいと思っている。」
「ふむ…なるほど…わかりました。報告ありがとうございます。そちらの件は、“叡智”殿にも相談してしっかり話し合いますね。他に何か報告はないですか?」
男は納得した様子で頷き、それ以降の発言はしなかった。そしてその言葉を発したと同時に、1人だけ、挙手したものがいた。
「いいか?」
「…珍しいですね。一度の会議であなたが二度も口出しをするなんて」
「おいおい酷い言いようだな…って、言われても仕方ないか」
挙手した人物は、ポーラーだった。ただでさえ彼が会議で発言することは滅多にない。それゆえに、一度発言しただけでかなり驚かれるのだが、二度目の発言ということで、全員が目を大きく開けて非常に驚いていた
「こっち側の、異形の理解を深めないか?」
「と、いいますと?」
「最近は座学?っていうんだっけか…それをしてないだろ?それにお前が言ってた通り、最近異形側の戦闘力が大幅に上昇しているときた。だからこそ、今までの理解力じゃなく、新たな発見をするためにしばらくは一般兵士を送り込むのをやめて隠密兵を送る。んで、その隠密兵が持ち帰ってきた記録を、新たに文献に記してこっち側の異形の理解を深めて警戒を強めるって言った意味でのものなんだが、どうだ?」
その意見を言ったことで、その場にいるもの全員はひどく驚いた。が、依然として青年は驚く様子を見せていない
「なるほど…確かにいい作戦ですね。ですが、もし隠密兵の存在がバレてしまったときはどうするつもりなんですか?」
「そりゃもう仕方ないから諦めるしかないな。それくらいあっちのレベルが高かったから、もしくは───」
「こちらのレベルが低かったから…というわけですか…」
「そういうこった。流石レヴァン!理解が早くて助かるねぇ」
レヴァン、と呼ばれる青年はそういうのいいですから、と言い、次の内容に移ろうとしたのだが、ポーラーの先の言葉に激怒するものが1人いた
「ふざけるのも大概にしろ!兵士を侮辱する理由なぞ貴様にはないはずだ!」
「侮辱なんてしてないさ。それにお前も言ってたじゃないか。最近の兵士の傲慢さはヤバい。その事実も俺は知ってる。それで死んだのは傲慢で自惚れた結果って言えないか?」
「ぐ…それは…」
「ほーら、何も言い返せない。お前も心の底では感じてくことは一緒なんだよ。シャル。」
シャルと呼ばれる男は、完全に黙りこくってしまって、その表情は怒りに満ちていたが、少し理解したというような、そんな感じだった
「…今回の緊急会議は終わりです。みなさま集まっていただきありがとうございました。あとは各々公務にお戻りください」
「いよーし!みんなお疲れ〜!次の定例会議にまで生きてたら会おうぜ〜!」
真っ先に部屋から飛び出していったのはポーラーで、円卓に座っていた人間も、次々と会議室を出ていった
「はぁ…あとから、シャルさんの元へ行かなくてはなりませんね…全く、ポーラーもイタズラは程々にして欲しいものです…」
こうして、激戦が終わった後の、人間による緊急会議が終わり、人間側と異形側の新たなるストーリーの幕が上がろうとしていた…
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