普通から外れた迫害種族
宇賀 狐音
序章 異形と出会い
#1 逃走と遭逢
「はっ、はっ、はっ!」
私は今、人間から逃げている。追いかけっことかそういうのではなく、相手は全力で私のことを捕まえて、殺そうとしてきている
「はっ、はっ、うわぁっ!」
ずっと全力で走っていたために、足がもつれてこけてしまった
「う…く…」
「居たぞ!捕まえろ!」
かなり全力で走っていたのでだいぶ距離を離したと思ったけど、もう兵士が見えるとこまで追っかけてきていた
「やば…!こっの…!」
私はすぐに立ち上がり、また走る。特別罪を犯したわけでもないのに私が殺されようと追いかけられている。その理由は、私が『異形』へとなってしまったからであった
「くそ⋯!なんでこんな仕打ちを受けないと行けないのよ!」
私はそう叫びながら、森の中を走る。兵士の姿が再び見えなくなったところで、近くにある草むらに身を隠した
「はぁ…はぁ…はぁっ…」
「まだ近くにいるはずだ!絶対に逃すな!」
兵士の分隊長のような人だろうか。声が近くなって来たため、私は息を殺した
「…チッ、逃したか。捜索を続けろ!絶対にやつを逃がすな!」
声が段々と遠くなっているのが分かってきたため私は胸を撫で下ろした
「はぁっ...はぁっ...たしか、この近くに...」
私はなんの考えもなしに森の中を走っていた訳では無かった。この近くに、『異形』が住んでいる村があるという噂があったためである。まあ所詮噂は噂だと言われればどうしようもないが、異形になってしまった身の寄せどころがない私にとっては、それが唯一の希望だった
「う…めまいが…さっきまでなんともなかったのに…」
追いかけてられている緊張の糸が切れたのだろう。久々にずっと全力で走っていたのだし、体力の限界はとっくに突破していることもわかっていた。足も思うように動かなくなってきた。肺に空気が刺すように胸に激痛が走る。
「あと…少しかもしれないのに…」
今、戻ってきた兵士に見つかったら?確実に逃げれない。捕まえられて殺されるだけなのはわかっていた。
「う…く…」
ここまできて倒れる自分に不甲斐なさを感じながら、私の意識はそこで途絶えた。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「ん…」
私が次に目を覚ましたときは、見知らぬ天井が広がっていた。人間の実験施設か何かだろうか
「拘束器具は…つけられてない…ここは、どこ…?」
すると突然、入り口のカーテンの向こう側から2人の人が出てきた
「あ!目を覚ましたんですね!よかった、もう死んじゃってるのかと…」
人間か?それともまた別のなにかか?私はなにもわからないため、出てきた2人のことをとても警戒していた
「ふふ、そう警戒なさらないでください。あなたを傷つけるつもりはありませんから。」
「そう言っても、まだ無理な話だろう。事情を知らないなら、警戒されても仕方がない。」
女の人の方が、そうでしたね。というと、こちらに向き直ってきて
「一つずつお前の中にある疑問を解いていこうか。まず、ここは俺たちの村の診療所。お前が森の中で倒れているのをコイツが見つけてきてここで保護した。だからお前がここにいるんだ。」
そして…と、男が溜めてから
「お前が1番気になってること、俺たちが何者なのか。そしてここはどこなのか。ということに答えようか。俺たちはお前と同じ『異形』。そしてここは『異形たちが暮らす村』だ。お前も、噂には聞いたことがあるんじゃないか?」
どうやら、女の人が倒れている私のことを見つけて、ここまで運んできてくれたらしい。そして何の偶然か、ここは私の目的な場所であった『異形たちが暮らす村』であるそうだ
「すみませんね、目覚めたばかりでまだ混乱しているかもしれませんが、そういうことです。理解できましたか?」
「あ、はい、大丈夫です。」
たしかにまだ状況の整理はついていないが、理解することはできた
「…まあそういうことだ。お前の目的は何か知らんが、少なくともここに来ることだったんだろ?そうじゃなきゃ、ただ闇雲に森の中を走るなんてこと本当のバカしかしないはずだ。ずっと走っていたとしてもいつかは捉えられ、殺されるだけだしな…って」
「こーら、口が悪いですよ」
「わかった、わかったから、たたくのやめてくれ…」
女の人が口を膨らませながらポカポカ叩いている様子は、なんだか微笑ましいものだった
「すみません、ヘインさん、とっても口が悪いんです。でも、悪い人じゃないので、勘違いなさらないであげてくださいね。」
「は、はい」
ヘイン、というのはこの男の人の名前だろうか
確かに口は悪いが、匿ってくれたあたり、悪い人ではなさそうだった
「さて、自己紹介から始めましょうか。私はメディ•フェイリアです。よろしくお願いしますね♪」
「…ヘイン・トラスト。気軽にヘインと呼んでくれて構わない。」
「あ、えっと、メイプル・ウィートです。」
「メイプルちゃんですね!覚えました♪」
メディさんはニコッと笑って、嬉しそうにそう言った
「…そろそろ見回りに行ってくる。」
「はーい、いってらっしゃ…!?」
すると突然、外でなにかが爆発したかのような轟音が聞こえてきた
「…見つけられたか。まあいい、手間が省けた。」
ヘインはそう呟くと、外に飛び出していった
「あ、え、え?」
「…私たちも避難しましょう。こういうことは結構起きたりしますから。それに、彼のことなら心配入りませんよ。彼、強いので」
そうは言いながらも、メディさんはとても心配そうな目をしていた。
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