第150話 小学校グループの参加(2/2、2/3)

僕と綾音さんは一旦キャンピングカーに戻り、皆に帰還の挨拶をしてからパパへの報告を行なう。


精神感応テレパシーで簡潔にだけど情報共有は行っていたから、説明には余り時間は掛からなかった。


「そうか、ご苦労だった。もちろん、その子供達が望むならホワイトフォートに迎え入れよう。しかし、もう一つの集団はダメだな。俺が言えた事じゃ無いかも知れないが、聞いた内容だとかなりリーダーの独裁体制になってしまっているんだろう。映画だと全滅パターン一直線だな……取り敢えず、小学校グループの参加が決まったらモールは諦めて小学校で訓練の体制を整える方針でいこう。綾音さんもご苦労だったね」


「いいえ。お役に立てた様で良かったです!」

「お姉ばっかり、ずるい!」


1号車のメンバーも話を聞いている中、パパに労われている綾音さん見て茜さんが子供のように駄々をこねる。

あんまりへそを曲げられても困るから明日は一緒に来てもらっても良いかも。


「なら、明日の朝は返事を聞きに行くだけなんで、茜さんも一緒に行きますか?」

「うん! 行く行く! やった!」


茜さんは即答してくる。

僕は確認の意味を込めてパパを見た。


「まあ短時間だから良いだろう。明日の確認は三人で頼む」

「「「はい!」」」


その後、僕は各キャンピングカーの燃料補給、汚水処理、食料等の補充を行って、就寝したのだった。





ーーーーー





翌朝、早く起きた僕は白蛇さんへのお祈りと日課のトレーニングをこなし、朝食を摂った後、10時ぐらいに小学校へと向かった。


僕は左右の手を綾音さん茜さんと繋いで低空飛行してきた。

当初は三人だから絨毯を出そうと思ったんだけど、綾音さんから無言で手を伸ばされたのでそれに応じた形だ。


綾音さんは前回と同じ様に少し赤くなっていたけど、茜さんは空を飛んでる〜と大喜びだ。


僕達はついでとばかりに金網もそのまま念動力テレキネシスで乗り越えて校庭に降り立った。


「お〜い! 冴賢君!」

「お、女の子が増えてる〜!」

「お兄ちゃん!」


僕達に気付いた小学校グループの子供達が、二階から僕達に手を振ってくれる。

雄二ゆうじさん直哉なおやさんも二階から話し、真子ちゃんも僕に手を振ってくれた。


「おはようございます! 真子ちゃんもおはよう! とりあえず、そちらに行きますね」


僕達はみんなに手を振り返すと、二階へと上がっていった。





ーーーーー




僕と綾音さん、茜さんが挨拶をしつつ教室に入る。


「「「おはようございまーす」」」


「「「おはよう〜!」」」

「「おはようございます!」」

「「お兄ちゃん、お姉ちゃん、おはよう!」

「「おはよう、冴賢君!」」

「お兄ちゃんおはよう!」


みんな笑顔だ。

真子ちゃんも走って来てくれたので、頭を軽く撫でてあげる。


「やあ、おはよう! 昨日はありがとう。みんな美味しく朝食をいただいよ。余った卵と納豆は取り合いだったよ」

「ねえねえ。その可愛い子、誰? 昨日は居なかったよね?」


雄二ゆうじさんが笑顔で僕に話し、直哉なおやさんが質問してくる。


「紹介しますね。昨日一緒だった綾音さんの妹さんで、平坂茜さんです」

「初めまして、平坂茜です。 パンデミック前は高校一年生でした! 得意な武器は薙刀です! みんな、よろしくね!」


「「「「よろしく!」」」」

「「「「よろしくお願いします!」」」」


直哉なおやさんは茜さんを見詰めて少し赤くなっていた。


直哉なおやったら、すっごく鼻の下が伸びてる〜!」

「う、うるさいよ有紗ありさ!」


「ホントの事でしょ〜」

「このお!」


「お前らな〜、これから大事な話があるんだぞ」

「うっ! そうだったゴメン、つばさ


少し騒がしいけど、こういうやり取りも学生らしくて良いなと僕は思った。





ーーーーー





僕は代表者の雄二ゆうじさんに尋ねる。


「それじゃあ、返事を聞かせてもらえますか?」


「うん。昨日は夜遅かったので今朝になるんだけど、みんなと相談したよ。やっぱり僕達も参加させて欲しい。秘密の倉庫の物資も節約しても後二、三ヶ月しか持たないし、水汲みに行ったりするにも危険がある。ここには教材もあるんで勉強させるには丁度良かったんだけど、僕達だけで暮らすのはもう限界があると思ったんだ。それに冴賢君、綾音さん、今日来てもらった茜さんも凄く良い人みたいだしね」


「まあ日本政府うんぬんの前に、大人達は誰も俺達を助けようとしてくれなかったからな。大人は信用は出来ないのは変わらないが、お前達なら信用できると俺も思う」


つばさ、もっと素直に頼みなさいよ〜」


有紗ありさの言う通りよ。冴賢君は雄二ゆうじと真子ちゃんを治してくれたでしょ? そんな人達の集団が悪い人のはずが無いわよ」


「そうそう。茜さんも可愛いしね!」


雄二ゆうじさんが代表して答えてくれ、他の高校生達も同じ意見の様だった。


「歓迎します。事前にリーダーである僕のパパからの承認も貰っていますので、安心して下さい」


そして、僕と雄二ゆうじさんはにこやかに握手を交わすのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る