第115話 集落の命名(11/29〜12/1)

僕達の集落は当初の三倍以上もの人口に膨れ上がり、農業以外にも養鶏、白蛇学園、様々な商品を扱っている集約店舗、美容院、大衆食堂、治療院兼薬局、パン屋、書道・華道の教室など多くの形態のお店などが増えていた。


その他組織的な物としては、集落の元からの住民が主体となる壁を見守る守備隊や、物資調達、僕がリーダーの壁外生存者を救出する救助隊、それからインフラ整備などがある。


そのうちの物資調達は壁外が変異体の件もあって危険な為に一旦凍結している。

また、インフラ整備はその知識がある人がまだ少ないため、今のところ各住宅のプロパンガスの整備だけを、僕が在庫を渡して請け負ってもらっている状況だ。


人口がかなり増えてきたので、僕が集約店舗に卸す量もそれなりに増えている。

そのうち二号店を開くことになりそうだし、目標の人口に達したら未来永劫アイテムボックスに頼る事はできないので、生産力を上げていく事に注力する事になると思う。





ーーーーー





今日は僕が前々から計画していた親睦を目的としたバーベキューの日だ。

集落の全員だと大変な事になるので僕達に近しいメンバーだけを招待している。


メンバーはパパ、ママ、玲奈と僕、明日奈さん、莉子さんと弟の秀彦君、光司君と美久ちゃん、早苗ちゃんと子供達の五名、明日奈さんの弟の明人くん達四名、武装グループから救出した小谷静香さん、虎太郎さんと妹の鈴花ちゃん、救出した高校の生徒会長だった細井悠里さんと川上京子先生、そして最近参加した平坂さん一家だ。

後、ご近所枠としてママが武田さん家にも声は掛けているはずだ。


午前中の早いうちから女性陣には僕が提供した食材で下ごしらえをしてもらい、男性陣は椅子やテーブル、炭やバーベキューコンロなどの準備を進めた。


ちょっとしたパーティーなのでお酒も用意して飲める人には飲んで貰う。

と言っても成人している大人はパパ、ママ、小谷さん、川上先生、平坂家の母、武田さん夫婦だけだ。


僕達は和気あいあいとバーベキューを楽しんでいた。


真理も僕達とは少し離れているんだけど、武田さんやママ、玲奈達と楽しそうにしている。

ママや玲奈も真理とは前と変わらない様に接してくれている様だ。



「冴賢殿。またお肉が焼けた様です。これをどうぞ!」

「はい、これもこれも。野菜も食べなきゃね!」


「お二人とも、ありがとうございます! 美味しそう。いただきます!」


綾音さんと茜さんが僕に食べ物を取ってきてくれる。

少し明日奈さんと莉子さんの視線が痛かったけど、断わるのも申し訳ないのでありがたく頂く事にした。


(モグモグ、モグモグ)

うん! お肉も野菜も美味しい!


「ふふっ。お口の周りが大変」

「急いで食べるからよ。秀彦みたいになってる」


明日奈さんと莉子さんが、左右からナプキンで僕の口の周りを拭いてくれる。

莉子さんは秀彦君の面倒も見ながらだから申し訳なく思う。


「隊長、お飲み物のお代わりをどうぞ!」

「すみません。ありがとうございます」


そして悠里さんも減っていた僕のジュースを注いでくれた。


「大将、何と言うかハーレム状態だな」


明日奈さん、莉子さん、悠理さん、綾音さん、茜さんに囲まれ、五人の女子にあれこれとお世話されている僕を見て虎太郎さんが言ってくる。


「ハ、ハーレムなんて事はないですよ? 僕が付き合っているのは明日奈さんと莉子さんだけですし……」


「そうか? 皆そんな感じに見えるぞ」


「私は冴賢殿に危ないところ助けられた身なのだから、奉仕するのは当然の事」

「そうよ。私もお姉も銃で撃たれた足まで綺麗に治してもらったし!」

「私も隊長には色々と助けていただきましたので、飲み物のお酌ぐらいはさせてもらわないと……」


綾音さん、茜さん、悠理さんが話す。


「冴賢くんに助けられたって言うのなら、みんな同じだけど。でもそれを言い出したら、この集落の半分時以上はそうじゃない? 気にしなくてもいいのに」

「まあまあ莉子ちゃん。私達もお肉とか食べようよ。これ、凄く良いお肉だよ」


「ふ〜ん。正妻は余裕ね」


莉子さんが少し膨れたように言い、明日奈さんが丸く収めてくれるけど、茜さんが少し不満そうに告げる。

僕はこのままじゃ不味いと思って、少し話題を違った方向に向ける。


「このお肉は最高級の黒毛和牛のブロック肉だよ! 前にもアイテムボックスから出したんだけど、アイテムボックスと言えば、最近奇妙な事があるんだ」


「奇妙な事ですか?」


早速、美久ちゃんと一緒に肉を頬張っていた光司君が食い付いてくれる。

光司君は何気にいつもこうやって助けて欲しい時に僕を助けてくれるんだ。

何かと良く気がつくし、もう家族同然の仲だけど得難い人材だと思う。


「うん。僕のアイテムボックスは過去に売っていた商品であれば999999個、約百万個のストックがあるんだけど、最近減った数が少し戻ってる事に気付いたんだ!」


「「「「「「 ええっ! 」」」」」」



「これはパパにも報告しているんだけど、一番分かり易いのは卵かな。卵はやっぱりみんな使うんで、養鶏だけじゃ追いつかないからアイテムボックスから出していたんだけど、それが一日20パックぐらいの感じで戻ってるみたいなんだ。ありがたい事なんだけど、何でかなって? 最初に消費した頃は戻るなんて無かったしね」


この後は皆であれやこれやと、アイテムボックスの謎に関する話題で持ちきりとなった。





ーーーーー





そして楽しいパーティの最後に、パパが参加者の注目を集める。


「え〜聞いてくれ! 前々から要望のあった集落の名前だが、全員への周知に先駆けてここで発表する。この集落の名前は……「白き砦、ホワイトフォート」だ。これは今後はこの集落が恐らく人類最後の砦となるという意味と、白蛇様にあやかってのホワイトだ。近日中に集落の全員に周知するが、みんなもその名前で活動する事になる事を覚えておいてくれ!」


それを聞いた皆で、笑顔と共に一斉に拍手が行われる。


僕達はこのホワイトフォートで素晴らしい命の大切さを感じ、これからも皆で助け合って生きて行こうと改めて誓い合うのであった。



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