第96話 俺様の王国(武装グループ)

俺はこの武装グループといえるチームのリーダーだ。


俺は小さい頃から人より体が大きくて筋肉質、ケンカで負けた事は無かった。

俺より大きい奴とケンカしてやられても負けたなんて思わないからだ。

相手が負けを認めるまで何度でも立ち向かう。


耳が裂けようが鼻が折れようがおかまい無しで相手も同じ目に合わせてやる。

そうすると結果として相手が泣きを入れて最後は俺の勝ちになるんだ。


俺の家は古い市営団地でスラムみたいなところだった。

ここら辺に住む奴はみんな大体貧乏だ。

周りには俺と似たような奴も多い。


親は俺の事なんか関心が無く自分たちで適当に好き放題暮らしている。

辛うじて飯は食えているけど高校行かす金なんか無い中学でたら働けってさ。

じゃあお望み通りケンカの腕を活かしてヤクザにでもなるかな。


だが俺は中学卒業後にヤクザにはならなかった。

俺より偉い奴がいてヘコヘコするのが嫌だったからだ。


だから表向きはフリーターの体で、裏では同じ年代のケンカ仲間や手下を集めてチームを作って暴れてやった。

無茶ばかりやった結果、数年経って結構チームは大きくなっていた。

色々悪い事もやって立派な半グレ集団になった。


今じゃ近隣のヤクザにも一目置かれてる。

強ければ金も手に入るし、女も寄ってくるしな。


そうした日常の中でパンデミック騒ぎが起こった。





ーーーーー





俺たちのチームは夜に暴れたんで寝ていたが、起きたら凄い騒ぎになってた。

俺はこの混乱をチャンスだと思って、騒ぎに乗じて銀行を襲ったり女をさらったりやりたい放題していた。


だが食糧に事欠く様になったんで仲間を集めてショッピングモールを占拠した。

ショッピングモールに元いた者は女以外は追い出してゾンビどもが入れないようにバリケードを築いた。


そしてしばらく立て籠もっていた俺たちは、さらなる物資を手に入れるため手っ取り早く避難所を襲う事にした。


数に任せて避難所を占拠した俺たちは女は犯し男と子供は惨殺した。

もう警察もクソも無い。

力ある者が正義となる俺様の時代が来たんだ!


数人混じっていた警官の拳銃を手に入れ、それを使ってまた次の避難所を襲う。

そうやって物資を得てさらに仲間を増やしながら避難所を襲っていた俺たちは、ある時恐ろしい脅威に出会った。


先行した仲間がたった一人の敵にほとんど殺られてしまったらしい。

遠くから姿を見た者からの報告だと青白く光る化け物だという事だった。


奴に出会った者は全て問答無用で真っ二つに斬り殺されたらしい。

報告を聞いて直ぐに撤退を決めたんで、それ以上の被害は抑えられたが100人近くの仲間が死んでしまった。


それから数日後、手下に様子を見に行かせたが避難所はもぬけの殻だった。

狐につままれた様な感じだったが、それからも俺たちは各地の避難所への襲撃を続け仲間となる人員を補充しながら武器も充実させていった。


このままの調子で俺様の王国を作るのも良いだろう。





ーーーーー





昨日また避難民への襲撃が成功した俺は有頂天になっていた。

だが浴びるように飲んだ酒で頭が痛いし何やら外が騒がしい様な気もする。


手下が大変な勢いで飛び込んで来て、ここに襲撃をかけて来た奴がいると喚いた。

そいつにもう何十人も殺されたらしい。


おれは拳銃を持った戦闘部隊での迎撃を指示した。

これであっという間に勝負が着くだろう。

だが、10分ぐらいして戦闘部隊が半壊して逃げ帰って来やがった。


聞けば青白い光を纏った恐ろしいほど強い男だと言うことだ。

近付けば有無を言わさず手足を切断され、遠くから炎の玉のような物で焼き殺され逃げようとすれば青白い何かで両足を吹き飛ばされるらしい。


まずい! 以前100人以上殺られた奴かもしれない!

俺は逃げるかどうか迷い、監禁している避難民の女達たちを人質にする事にした。


そして奴がやって来た。

俺は人質に銃を向け、止まる様に叫ぶ。


「と、止まれ! こいつらが殺されてもいいのか!」

「……」


奴はゆっくり歩いて近付いてくるのをやめない。

おれは女達の一人を無理やり立たせ、こめかみに銃を突き付けた。


「とまれ! 撃つぞ!」


奴は止まらない。


「本当に撃つぞ!」


それでも止まらない。

奴は全く動揺せず無表情に見える。


「クソッ!」


俺はヤケクソになって人質の女のこめかみを銃で撃とうとしたが、何故か引き金を引くことが出来ないし身体も動かない。

どうなってやがる!


「莉子さんのご両親のかたきだ! 地獄に落ちろ!」


奴はいつの間にか俺の近くにいてそう言うと、青い刀みたいな何かで俺の両腕と両脚を斬った。


もう終わりだ。

俺は激痛の最中さらに腹を裂かれた。

もう何もできず、自分の命がただ流れ出てゆくのを感じる。


今度は俺がやられる番だったんだな。

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