第91話 仏の顔も三度まで(8/22)
婦人警官の米倉が僕に銃口を向けたまま話す。
「手を挙げなさい! 今度は逃げられないわよ!」
「そうだっ!」
僕たちは、米倉とあの時の警官とその他三名の警官たちに半包囲された。
銃口を向けられた明日奈さんや明人君たちは、当たり前だけど凄く怯えている。
万が一にも引き金を引かれた時の事を考え、僕は皆を庇うように前に出た。
「どういうつもりですか? 一般人に銃口を向けないで下さい! 僕たちは犯罪者じゃありませんよ!」
「あなたはこの前私と、この岸田くんを殴って銃を奪ったでしょう!」
「それはあなたが逮捕状も何も無しに、いきなり銃口を突きつけて来たからですよね? 今みたいに!」
「いいえ、公務執行妨害よ! だれか今のうちに、この子を逮捕して!」
米倉はどうしても強行手段に出たいみたいだ。
銃もあるし自分たちの方が強いと思っているんだろう。
「冴賢くん……」
「大丈夫だよ、明日奈さん。みんなもね」
僕は怯える明日奈さんと皆を落ち着かせるように言葉を掛けた後、米倉に向き直って宣言した。
「警告します! 今直ぐに銃口を降ろして下さい。特に、米倉さん! 僕はならず者たちに監禁されていたあなたと女性たちを救ったはずだ。それなのに僕に執拗に付き纏ってこの仕打ち! 恩知らずにも程がありますよ!」
もう怒った!
仏の顔も三度までだ!
僕はこれだけ言っても向けられたままだった警察官の拳銃全てを、アイテムボックスに格納した。
「えっ!」
「何っ!」
「拳銃が無い!」
「馬鹿な!」
「あれっ!」
構えていた拳銃がいきなり無くなって混乱する警察官たち。
僕は
(ゴッ! ドン! ガッ! バキッ!)
「えっ、これは! 何が起こったのよ!」
絶対的に有利だと思っていた状況から、拳銃を全て取り上げられ全員殴り倒された警官たちをみて米倉は呆然としていた。
「気絶させただけで殺してはいませんよ。あと米倉さん、自分だけ無事で済むとは思ってないですよね?」
「ひいっ! あ、あなたは一体何なのよっ!」
「それを知る必要はありません。これから僕の敬愛する神の言いつけ通り、執拗に僕に害をなすあなたに罰を与えます!」
僕はそう言うと再びサイコアクセルを発動し、渾身の力を込めて米倉にアッパーを打ち込んだ。
顎だけを狙って力を入れて打ったので、恐らく顎が砕けたはずだ。
米倉は脳を揺らされそのまま崩れ落ちるように気絶する。
ここに整形外科の医者がいるとは思えないけど、顎が粉々にされてこれから相当痛い思いと不自由をするはずだ、それを持って罰としておこう。
僕は倒れている警察官を一箇所に集め、二階にいる警察官に皆を引き取るように告げると近寄って来そうな感染者達をバールで一掃し、今回は目撃者が多いので拳銃を適当に置いてその場を後にした。
ーーーーー
僕は先頭に立って感染者に対応しつつ1kmぐらい進んで曲がった路地で、三号車となる豪華キャンピングカーをアイテムボックスから取り出した。
先に曲がって直ぐに取り出したので、あたかもずっとここにあった様に見える。
「さあどうぞ、乗って下さい」
「乗りましょう」
「「「「……」」」」
明人君たちのメンバーは固まっていたけど、僕と明日奈さんが乗り込むと恐る恐る着いてきた。
僕は運転席に座ってエンジンを掛け車内を明るくする。
そしてシャワー用にバスタオルなどのアメニティも用意しておいた。
「凄え……」
「ホント、家みたい……」
赤羽君と川村さんだったかな?
このモーターホームとも言われる大型のキャンピングカー中を見て驚いている。
「とりあえずそこのテーブルに座って。何か飲み物でも飲んで」
「明人たち、何にする? 冷たい物でも温かいものでも何でもあるよ」
「姉さん……それじゃあホットコーヒーを」
「……私は温かいレモンティーをお願いします」
明人君と彼女の石崎さんのリクエストを聞いた僕は、キッチンに立って電気ケトルに水を入れて湯を沸かしつつ、アイテムボックスからドリップ式コーヒーとレモンティのパック、カップを取出して、明日奈さんにバトンタッチする。
砂糖とコーヒーミルク、マドラーは小さい籠でテーブルに用意した。
残りの二人にも聞いてみよう。
「君たちはどうする?」
「お、俺はコーラをお願いします!」
「あたしも同じで……」
「女の子は甘い物でもどうかな?」
「「は、はい!」」
僕は女子二人が頷くのを見て、アイテムボックスからペットボトルのコーラ二本とチョコパフェを明日奈さんの分を含めて三つ取り出してテーブルに置いた。
そうしているうちにお湯が沸いた様で、明日奈さんがにっこり微笑んでコーヒーとレモンティーを淹れて持って来てくれた。
「はい、どうぞ〜。遠慮しないでね〜」
四人は久しぶりだろうと思う好きな飲み物を味わい、一息ついたみたいだった。
明日奈さんにもウーロン茶を渡して、ソファーでチョコパフェを食べてもらう。
女子たちは甘いチョコパフェを味わい、凄く幸せそうな笑顔を見せてくれるのだった。
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