第89話 バリケードを築こう(8/22)

僕はパパと相談してこの集落を含めた街全体をぐるっと、今の何百倍もの規模のバリケードで囲ってしまおうと考えた。


とりあえず、それで生存圏を確保したうえで余裕が出てきたらバリケードを順次拡張して東側の海の方まで伸ばし、将来的に魚介類や塩などの海の幸を入手する事が出来るようにしたいというのがパパの計画だ。


白蛇さんに教えてもらった土操能力グランキネシスで高さ10m、太さ1mほどの土壁を築き固定化してしまえば容易には壊せなくなるので、変異体を含む感染者に備えるバリケードにする想定だ。

流石に川は遮断できないので金網か何かで通れなくしようか。


バリケード構築後は領域内にいる感染者は僕の超能力で全て排除する。

遺体は申し訳ないけど二次感染が怖いのでアイテムボックスに入れて破棄させてもらおう。


領域内にまだパラパラと生存者がいるみたいだけど、とりあえずバリケードで囲った後で集落に入るかどうかを選んでもらう事にした。


もし入らない場合はそのままそこで暮らしてもらうか、その近辺をバリケード範囲外に引き直すか出て行ってもらうかの三択になる。

よほど酷い人で無ければ出て行ってもらう様な事はしたくはないけどね。


バリケードを構築して感染者を一掃した後は住みやすい街づくりだ。

今の住宅は基本的にはそのまま使用する事にして、古い建物やもう使用しない大きい建物は取り壊してユニットハウスやプレハブ住宅などを立てて、新しい住居にしようかと思っている。


いずれ僕が居なくなった時のため何処かに水道設備や発電設備なども作りたい。

でも今は色々な技術者が不足しているので将来の話だ。





ーーーーー





僕と明日奈さんは絨毯で空に浮かび上がり、明日奈さんが地図を見ながらナビゲートしてくれた位置に土操能力グランキネシスでバリケードとなる土壁を構築して行った。


少しやってみた感じでは一時間で300m分ぐらいが限界だった。

たぶん慣れればもっと少し早く作れそうだけど、全て終わるまでは何週間も掛かりそうだ。


僕がこの作業でいない間の食料だけど、集落では電気が復活したので冷蔵庫をたくさん並べて食材を大量に確保してある。

避難民の皆さんは食事係がそれを使って調理して食べさせているはずだ。

明日奈さん、莉子さん、秀彦君、光司君、美久ちゃん、早苗ちゃんと子供達4人も同じ様な感じだ。


お昼頃になってお腹が空いた僕達は一旦休憩にし、空中で絨毯に乗ったままでお弁当を広げた。

これは明日奈さんが今朝お弁当用に作ってくれたサンドイッチだ。

二人で青空の下で食べるお弁当は凄く美味しい!

笑顔で食べながら僕と明日奈さんは会話する。


「ねえ。バリケードで街を囲って安全になったら、冴賢くんと私と莉子ちゃんで一緒の家に住まない?」

「うん。えっ!」


思わず頷いてしまったけど、その意味を考えてびっくりした!

しかし、僕が美人の女の子二人と住むなんて良いのだろうか?


「でも、僕と一緒でいいの? それに秀彦君は?」

「うん!……一緒が良いと思うの。莉子ちゃんもそう言っていたし。でも秀彦君はもちろん一緒じゃないとね! 一人には出来ないし」


「そ、そうだね。そうすると、光司君のところはどうしようか?」

「そうねえ。光司君と美久ちゃんは一緒だとして、早苗ちゃんたちにも聞いてみないとだけど、7人一緒が良いかも」


「うん。大きい家があれば行けそうだね。あと……弟の明人君たちはどうしようか? 変異体の件もあるから、ここに迎え入れた方が安全だと思うけど」

「明人……そうね。出来れば迎えに行ってもらえると嬉しいわ。その時は私も着いていくから」


「うん、わかった。だけど、バリケード作成はまだまだ掛かりそうだから、明日の朝から迎えに行こうよ。早ければ早いほど良いと思うし」

「そうね。……私事で申し訳ないけど」


「ううん。前にも言ったと思うけど、明日奈さんはもう家族同然だよ。だから僕にとっても明人君は家族だよ!」

「ありがとう冴賢くん……」


明日奈さんが手を伸ばして僕の手を掴み、僕も軽くだけど握り返す。


僕たちは青空の下で真っ赤になりながら、しばらくそのままでいるのだった。

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