第25話 暗闇での戦い(6/4)

僕がLEDランタンを壊し、部屋の明かりが無くなった。

途端に辺りが真っ暗になる。


「何っ!」

「コイツ、明かりを!」

「くそっ! なんも見えねえ!」

「おい、懐中電灯だ!」

「は、はいっ!」

「はい!」


その隙に僕はさっきまでの位置関係とサーチ結果を信じて高速で移動し、青と重なった黄色の中心点に力を込めてバールを振り降ろした。


(ドガッ!)


「ぎゃっ!」


桑田さんを押さえていた男はバールを額に食らって倒れたようだ。

僕は驚く桑田さんの手を引いて、位置を覚えていたトイレに桑田さんを押し込めて小声で話す。


「すぐに鍵を閉めて!」


「荒井君!」


桑田さんが僕の名を呼ぶが、強引にトイレのドアを締めた。

本当はこのまま逃げた方が良いのかもしれないけど、さっき桑田さんの手を引いた時に白蛇さんのあの言葉を思い出した。


『最後に言っておくわ。あなたを裏切ったり理不尽に攻撃してくる者には相応の罰を与えなさい。あなたに神罰の代行者の地位を与えておきましょう』


そう。たしか白蛇さんが言っていたはずだ、僕を神罰の代行者とすると。

白蛇さんの言葉ではもう神様はこの地にはいないんだ。


僕は神様の代わりなど出来ないし全てを罰せられる訳では無いけど、この男達をこのまま野放しにするときっと次の被害者が出るだろう。


ならば僕が神罰の代行者として、ここで無法者を罰さなければならない!

そう思うとなぜだか体の内側から力が湧いてくるようだった。




ーーーーー





僕は決意を固めて男達のところに戻る。


そして素早く懐中電灯を持った男に飛び込み、バールの曲がった部分に掌をあて、それを支えにして尖った先端を懐中電灯の光で見えている男に突き入れた。


(ドチュッ!)


「がっ!」


口を開け悲鳴を上げる事も出来ず、ビクンビクンとした状態から倒れる男。

素早くバールを引き抜き、間を開けずにもう一人の懐中電灯を持った男にも同じようにバールを突き刺した。


(ドチュッ!)


懐中電灯が2つとも床に落ちて狭い範囲を照らす。

残った男達は半パニック状態になっているようだ。

僕もお腹の中心辺りに込み上げる物を無理やり抑える。


「な、何だ?」

「何が起こってんだよ!」

「おい! 返事は?」


僕は残った3人のうち、2人をサーチで位置確認してバールで殴る。


「がっ!」

「あがっ!」


そして最後に残ったリーダーの武器を持った腕と胴体を滅多打ちにした。


「ぐがああ! もう、もうやめて、くれ……」


僕はアイテムボックスから新しいLEDライトを取り出して、明かりを灯す。

リーダー以下、全ての男達が倒れている。

2人は胸から血を流して死亡し、3人は頭をバールで割られて倒れ、リーダーの男は武器を手放して床に蹲っている。


「おい!」

「ひぇっ! は、はい!」


コイツらの生殺与奪は今は僕が握っている。

僕は情報を吐かせるため、なるべく尊大に振る舞う事にした。


「お前達は何者で、なぜ僕……俺達を襲ったかを話せ!」

「仲間が望遠鏡でおま……あなた達を見つけました……それで女がいるので奪おうと……」


「仲間は全部で何人だ?」

「30人ぐらいです……」


「ここに来たのはお前達だけか? この後の予定は?」

「お、女を奪ったらアジトのビルに戻る予定でした……」


え! ならコイツらが戻らないと仲間が探しに来るかもしれない。

すぐにでも殺して移動しないと。


僕は無言でバールを振りかぶった。


「ひ! ひいっ! こ、殺さないでくれっ!」

「荒井君だめっ!」


いつの間にか後ろにいた桑田さんが、僕を声で静止する。


「桑田さん! でもコイツらはここで殺しておかないと、また別の誰かが犠牲になるんだ! 大丈夫、僕が始末するよ」


「それでも駄目だよ……人を殺すなんて……ね、このまま逃げよう!」

「……」


僕は桑田さんに白蛇さんの話はしていない。

だからもう神様はいなくなっていて、この世界も以前の様に平和にならないという事を知らないんだ。


ここで殺すのがベストのはずなんだけど……

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