第22話 区役所へ(6/4)

翌朝また早く起きた僕は少しバールの素振りと筋トレの後、朝食の準備を行った。


アイテムボックスから昨日のお米の残りと大き目の土鍋を取り出し、ペットボトルの水でご飯を炊き上げる。


そして昨日と同じ要領でおにぎりを沢山作り、アルミホイルに2個ずつ包んでゆく。

大量に作ったのは今日は佐々岡さんを区役所に送り届けた後、そのまま強行軍で桑田さんも送る予定だからだ。


そして僕達は朝食のおにぎりを食べ、佐々岡さんの家族に会うために区役所を目指した。





ーーーーー





サーチで感染者の状況を確認しながら慎重に進む。

あまり迂回する余地が無いため、必要であればバールで感染者を倒しながらだ。


しばらく進むと赤いレンガ作り風のしゃれた作りの建物が見えて来た。

あれが区役所だ。


サーチで確認すると大勢の生存者がいることがわかる。

僕は区役所がまだ健在である事に安堵した。

映画だと避難所に行ってみたら全滅だったというパターンが少なくないからだ。


でも区役所の周囲にはパッと見て分かるくらい大勢の感染者達が蠢いている。

周りに倒れている死体もあるので、恐らく区役所の人達が戦ったのだろう。


「あれが区役所だね。どうやって中に入ろうか?」


僕はどうやって区役所に入れるかを考えた。

侵入経路は塞がれていると思うし……


「何か合図とか出来ないかな?」


桑田さんの提案だ。だけど……


「難しいね。何をやっても大勢の感染者がこっちに来ちゃいそうだし。倒すには数が多すぎるね……」


僕達が途方に暮れていると、急に区役所の裏の方からガラガラと大きな音や怒鳴るような大声がした。

感染者達は全てではないがその音に反応してその方向に移動してゆく。

そして感染者が区役所の入り口からいなくなったタイミングで扉が空いて、中から十数人の人が踊り出て来た。


そのうちの数人は警察官の様だ。

その人達は少なくなった入り口近くの感染者達を倒しながら、急ぐように進んで行く。


「行こう!」


僕はチャンスだと思い隠れていた場所から飛び出した。





ーーーーー





「あの!! すみません!」


僕は二人より先に進み出て、警察官の人に声を掛けた。

万が一の場合は二人を逃がさなければならないからだ。


「止まって!」

「え! 区民の方ですか?」


警察官達は凄く警戒し、スーツ姿の男性が質問してくる。

たぶん区役所の職員なのかも知れない。


「はい。区役所に入れて貰えませんか?」

「私の家族が避難してるんです!」


「太田さん。私はすみませんがこの方達の受け入れを行います」

「分かりました! よし、行くぞ!」


僕と佐々岡さんの言葉で、区役所の職員らしき人が僕達を区役所に入れてくれる事になったようだ。

太田さんと呼ばれた警察官の人達はそのまま何処かに行ってしまった。


区役所の入り口まで戻ると入口が開き、入れてもらう事が出来た。

入ると複数の人達に囲まれ、その中の年配の人に質問を受ける。


「君達は何処から来たんだ?」


「僕達は〇〇高校の一年生です」

「学校で避難してたんですが、逃げて来たんです!」

「私の家族がここに避難してるんです!」


僕、桑田さん、佐々岡さんはそれぞれ答えを口にする。

桑田さんは制服、佐々岡さんは自宅で着替えた私服だけど、僕は全身プロテクター装備なので少し怪しまれているような気がする……


「そうか……大変だったね。悪いが怪我をしているかを確認させて欲しい」


年配の警察官がそう言うと、別室で身体の状態を調べられる事になった。

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