第14話 学校からの脱出(6/1)
「ふう。登るのはそれほど怖くなかったかな……」
再び屋上に戻った僕はロープを回収してプロテクター装備に着替える。
そしてもう階段はやめて長いロープで一気に地上まで降りてしまおうと考えた。
ヘルメットとリュックをアイテムボックスに格納し、校舎の裏側をサーチして近くに感染者がいない事を確認して長いロープを鉄柵に厳重に結び付けた。
「行くか……」
僕はなるべく下を見ないようにして、後ろ向きになり壁を足に付けながらゆっくりと降りてゆく。
白蛇さんの身体強化のお陰で握力も上がっていたので、特にロープを離してしまう様な事は無く無事に地上まで降りる事が出来た。
僕はアイテムボックスからヘルメットを取り出してかぶり、バールを握って校門の方に歩く。
途中体育館を目にしたが感染者が相当数いるようだった。
恐らくは犠牲者も多かったのだろう……
僕に気付いた感染者がこっちに顔を向ける。
まだゾンビ化して日が浅いのでボロボロ感は無いけけど、代わりに衣服や傷口に付着した血が生々しく、こちらを恨めしそうに濁った瞳で見つめている。
中には僕が知っていた先生や生徒もいるようだ。
それを考えるとお腹の真ん中あたりがエズいて気持ち悪くなったので、学校での感染者の顔は極力見ないように注意した。
足を怪我している時は感染者に囲まれて絶望的な気分で歩いた場所も、白蛇さんに回復&強化された今は飛ぶように移動できる。
校門あたりにも僕に気付いた感染者がいたけど、かまわずダッシュして学校を後にした。
ーーーーー
とりあえず自宅に向かってなるべく真っ直ぐに進む事にする。
感染者と戦いたくない僕は、サーチを使いながら目立たないよう中腰でなるべく音を立てずに移動した。
市内は見る限り感染者だらけであり、車も相当数は道路に放置したままだ。
中にはチカチカとハザードがついたままの車もある。
もう電気が来ていないので信号機は停止し、遠くで鳥が飛んでいるのが見えた。
サーチ結果を見ると青い点の生存者の反応も結構見かける。
遠くに大きなタワーマンションが見えた。
きっとあの規模のマンションだと生存者はいるだろうな。
だからといって僕に何ができるわけでもないけど。
商店街や駅前は感染者が多いだろうと思い、少し遠回りしながら移動する。
だが、どうしても感染者が複数いて通れない箇所もあった。
「う〜ん。どうしようかな?」
まだ感染者を倒す決心がつかない僕が進めないでいた時、別の方向からトラックがやって来た。
そして5、6人ほどの人が荷台から降りて通行に邪魔となる感染者を倒し始めた。
さすまたの様な器具で拘束して頭を叩き潰す。
僕はそれを見て胃に込み上げる物があったが、不自然にならないようアイテムボックスからリュックを出して背負った。
「おい君!」
その中の一人が僕に気付いて声を掛けてきた。
「我々は市役所の者だ。君は一人なのか? 何処から来た?」
「僕はこの市内の〇〇高校の学生です。これから横浜の実家に帰るところです」
「横浜か……結構遠いな、大丈夫なのか?」
「はい。見ての通り対策はしてますので」
「そうか、それなら良いが……そういえば君と同じ〇〇高校の子が同じ避難所に何人かいたな」
「えっ! その人達の名前とか分かりますか?」
僕は真理と達也か、桑田さんかもと思って聞いてみた
「う〜ん。悪いが名前までは分からないな。男女合わせて10人ぐらいとしか。避難している学生さんは警察署や他の役所の方にもいるらしいがね」
「そうですか……」
「何なら避難所に来てみるか? 俺達はこれから近場のスーパーまで物資の調達に行くけど、終わり次第避難所に帰るから」
僕は考える。
もし真理達が避難所にいるとして、二人に会ったら僕はどうするんだろう……
それを考えると積極的に会いたくは無い。
もし会う事があれば僕の方が耐えられないだろう。
桑田さんがいるのであれば極力手助けはしたいと思ってるけど、幼馴染の彼氏がいるだろうから無理に探すことも無いだろう。
「ありがとうございます。でも僕は帰りを急ぐ事にします」
僕はそう言うと他の人に挨拶をしつつ、感染者が倒された後の道を進んでいった。
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