サイキック・オブ・ザ・デッド

ぴっさま

一章 自宅へ

第1話 日常の崩壊(5/26)

「ぐあああっ!」


勢い良く学校の階段を転げ落ちた僕は、階段下でひざを強打した。

あまりの痛みで、上げた声が廊下に響き渡る。

やってしまった!

骨が折れたかもしれない……


「ひーくん!」

「ひさと!」

幼馴染と親友が階段の踊り場から叫んだ。


い、痛い!

でも、ぐずぐずはしていられない!

痛みをこらえて一緒に転げ落ちた体操着姿の女子の頭を押さえる。

すぐに親友が階段を降りてきて、血だらけで僕に噛みつこうとするその女子を一緒に押さえてくれた。


一体なぜ、こんな事になってしまったのか……





ーーーーー





僕の名前は荒井あらい冴賢ひさと


特に背が高いわけでも、頭が良いわけでも、運動が出来るわけでも無い、何処にでもいる高校一年生だ。


親は冴えて賢くなれという意味を名前に込めてくれたらしい。

名前負けと言われない様に生きていければと思ってるけど、今のところ家の中で見つけた虫はなるべく外に逃がしてあげて殺生を避けているぐらいしか良いところが無い。


蚊とGだけは例外だけどね!


こんな僕にも小さな頃から仲の良い幼馴染の女の子がいる。

名前は武田たけだ真理まり

高校も一緒になった為、毎朝一緒に登校している。


こう言うと単なる偶然のように聞こえるけど、真理まりと一緒の高校に進学する為に僕はかなり苦労したんだ。


というのも真理まりは凄く可愛い美少女で勉強も運動も出来る。

小さな頃から密かに恋心を抱いていた僕は、猛勉強の末奇跡的に同じ高校に進学する事が出来たんだ。


高校ではなぜか同じクラスのイケメン男子、東堂とうどう達也たつやとラノベなどの話題で仲良くなり、幼馴染の真理まりと共にいつも一緒にお昼を食べる仲になっている。


僕と比べて達也たつやは凄くイケメンで背も高く、頭も良く、スポーツも万能でついでに家もお金持ちだ。

僕をはさんで一緒に過ごしてゆく中で、真理まり達也たつやがお互いにかれ合っている事に僕は気付いているんだ……


でもそれは仕方が無い事だと僕は早い段階で割り切っていた。

誰が見ても僕なんか真理まりとは釣り合わないだろうから。


いつかその時が来たら僕は笑って祝福してあげるんだ……


そんな変わらないけれども、何処かもどかしい日々を僕達は過ごしていたんだ。





ーーーーー





今日もいつものように3人で机をくっつけて教室でお弁当を広げる。

お昼は購買にパン等を買いに行く人、部室や何処か別の場所で食べる人などもいる為、教室に残る人は半分弱ぐらいだ。


僕はママが愛情を込めて作ってくれたお弁当だ。

大好きな唐揚げがあったけど、いらないと言っているのにまた野菜の盛り合わせも入っている……


「ひーくん、ちゃんと野菜も残さず食べるんだよ」

真理まりが僕のお弁当をのぞき込んで言ってくる。

この前野菜を残したまま弁当箱を閉じていたのを見られていたのかもしれない。


「うん。分かってるよ……」

僕は少し力無く答える。

野菜はあまり味がしないし、美味しく無いのであんまり食べたく無いんだ。


「ひさとはお子ちゃまだな。ちゃんと野菜も食べないと大きくならないぞ」

達也たつやも僕に注意してくる。

彼は野菜を食べてこんなに大きくなったのだろうか? 絶対お肉でしょ。


「僕はこのままでも良いんだ。将来はIT系に進むつもりだしね。キーボードとマウスが使えればそれで良いんだよ」

僕は悔しまぎれに二人に憎まれ口を叩く。



実は僕には一つだけ得意な事がある、それはプログラミングだ。

小さい頃からパパにパソコンやプログラミングについて教えて貰っているうちに詳しくなったのだ。


パパは優秀なシステムエンジニアらしく、質問には何でも答えてくれる。

余談だけど僕は自分の親をいまだにパパ、ママと呼んでいる。

だが向こうもそれが嬉しいらしいのでそのままだ。



二人は示し合わせたように僕に呆れた表情を向けて来る。

こんなところでも気が合う様子だ……


その後、食べ終わって今度の球技大会の事やラノベの新刊などの話しをしていると、外から誰かの大きな悲鳴が聞こえたんだ。


そういえば今日は午前中からやたらとサイレンの音が聞こえていたっけ……


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