第371話 合流

「私は何も感じ取れませんでしたけど……あの男は、何かを感じ取ったのでしょうね」


イシュドが別行動を取った後、ミシェラは異常な狂戦士が意味もなく無駄な行動を取ったとは思っておらず、素直に自分たちが感じ取れない何かをあの男は感じ取ったのだと認めた。


「一人で行ったってことは、マジでAランクモンスターの気配でも感じたってことだろうな……イシュド的には寧ろ良い機会って感じなんだろうけど、俺らとしては勘弁してほしいってところだよな」


「……まだ、私たちはそういった怪物と渡り合えませんからね」


何か一部だけでも通じるなら、自分もAランクモンスターと戦ってみたいという気持ちを持つイブキ。


イブキもミシェラたちと同じく、イシュドと出会ってから確実に成長しており、ミノタウロス戦で放った居合・三日月は見事な一撃であったが、それでも確実にAランクモンスターに通じる攻撃とは断言出来ない。


「皆さん、あまり遠い先だけを見ていても仕方ありません。今は、直ぐに訪れる目の前のことだけに集中しましょう」


三年生であるクリスティールも、イブキたちの気持ちは理解出来る。


しかし、現在はそんな彼女たちを纏める立場ということもあり、リーダーらしくイブキたちの意識を目を向けるべき方向へ修正する。


「クリスティールお姉様の言う通りですわね」


「はぁ~~~……頑張るしかねぇって感じだな~~~~……あん?」


「っ…………フィリップ、あなたも感じましたか?」


「イブキもって事は……マジで、そういう事なのか」


何かを感じ取ったフィリップとイブキ。

そんな二人の反応から、クリスティールはまだ正確に何かを感じ取れてはいないが、直ぐにイシュドから預かった通信用の水晶を取り出し、ステラと連絡を取った。


「ステラさん、聞こえていますか」


『……はい。どうしましたか、クリスティールさん』


「私たちの方で気になる存在を感知ました」


『っ、分かりました。直ぐにそちらへ向かいます』


連絡を終了した後、直ぐにイブキが斬撃波を……アドレアスが風刺を天に放ち、ぶつけ合わせる。


敵にも存在を示してしまうことになるが、これでステラたちも即座にクリスティールたちの居場所を把握出来る。


「クリスティールパイセン、判断が早いのは有難ぇけど、まだ確定って訳じゃねぇっすよ」


「勘の鋭い二人が何かを感じ取ったのであれば、依頼の標的ではなくとも、厄介なモンスターとの遭遇で間違いないでしょう」


「Bランクモンスターとの遭遇であれば、彼らと共に戦った方が早いですからね」


標的と遭遇するまでの道中は、実戦経験を積み重ね、研鑽する時間に使いたい。

しかし、相手がBランクモンスターとなれば、それこそ万が一が起こりうる。


状況が状況ということもあり、アドレアスの言う通り、ステラたちと共に戦うのが最善の判断ではあった。


「遠距離攻撃の準備でもしてた方が良いか?」


「ん~~~…………あいつらは、むやみやたらに遠距離攻撃を放ってこないんじゃないっすかね」


「どうしてだ、フィリップ」


「ウルフ系モンスターに跨って行動するゴブリンたちからすれば、駆けまわれる場所、一瞬でも身を隠せる場所があった方が戦う方が易いじゃないっすか」


「ほぉ~~~、なるほどなるほど……それなら、戦闘が始まれば俺は思いっ切り薙ぎ払えば良いか?」


「……クリスティールパイセン、俺は悪くないと思うんすけど、どうっすかね」


レブトの武器は槍。

数ある武器の中でも攻撃範囲が広く、遠距離攻撃に関しても同じ。


切れ味はイブキの斬撃波に劣るものの、木々程度であればスパッと切断できる。


「そうですね……向こうが襲撃を仕掛けてきたとなれば、少しの事で直ぐに引くということはないでしょうっ!」


そうしましょうと言い終えた瞬間、クリスティールは正確に接近する者たちを感知。


(ふぅーーーー……ここは素直に、先程の私の判断を褒めても良さそうですね)


先程、クリスティールはフィリップとイブキが僅かな異変を感じ取った瞬間、直ぐにステラへと連絡を取った。


その判断の速さもあり、例の存在も近づいてきてはいるが、ステラたちも高速でクリスティールたちの元へ向かっていた。


「来ますわね」


「その様だね」


「すぅーーーー……はぁーーーーー……」


(あぁ~~~~、やだやだ。でも、依頼なんだし……キッチリ働かねぇとな)


「分散、しそうですね」


次の瞬間、複数の矢がイブキたちに向けて放たれた。


各々自身に飛んでくる矢だけを切り払い、うち落とし、無傷でやり過ごす。


「「「「「「「「「「ッ!!!!!!!」」」」」」」」」」


「レブトさん!!!」


「はいよッ!!!!!!!!」


視界で捉えることが出来た瞬間、レブトは槍に魔力を纏い、うっかりステラたちには当たらないように全力で薙ぎ払った。


「ケギャギャギャッ!!!」


「そうくると思っていました」


「同じく~~」


「「「「っ!!??」」」」


弧を描くように放たれた魔力の斬撃波は木々を切断しながらゴブリンライダーたちに迫るも、ゴブリンたちはウルフ系モンスターにに指示を飛ばし、宙に跳んで対応する。


それは見事な判断速度ではあるが、読み勝負では一手、イブキとフィリップたちが勝っていた。


宙に跳び過ぎれば、着地までの時間が掛かる。

それを読んでいたイブキの斬撃波と、フィリップの投擲が炸裂。


跳んだ全てのゴブリンライダーを仕留めるには至らなかったが、乗っているゴブリン……もしくはウルフ系モンスターを仕留めることには成功し、確実に戦力を削った。


「全員、ステラさん達の方に寄りますよ」


続々と現れるゴブリンライダーたちを適当にいなしながら、クリスティールたちは無事にステラたちと合流。


「お待たせしました!」


「最高のタイミングです。では……予定通り、いきましょうか」


「えぇ、やってやりましょう!!!!」


続々と姿を現すゴブリンライダーたちを前に、ステラたちの気合は……十分。


こちらはこちらで、激闘の火蓋が切って落とされた。

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