第320話 何故選ばれない?

「なるほどねぇ~~~~……ふっふっふ。んじゃ、次はパオロだな」


「むっ、俺か………………むぅ…………」


パオロもヨセフと同じく、そういった話題に不慣れということもあり、パッと思い浮かばない。


「………………イブキ、だろうか」


「へぇ~~~……その心は?」


「お淑やか、と言えば良いのか? ヨセフと同じく曖昧な表現になってしまうが、落ち着いていて……尚且つ芯のあるところが良いなと感じた」


これまた妹が女性として評価されたことに対し、兄であるシドウは上機嫌になる。


「な~るほどな~~~。お淑やかで芯があるってなるとぉ……確かにイブキが当てはまるか」


「うむ。とはいえ、俺もヨセフやエリヴェラと同じく、そういった話や感覚に慣れていない故、本当にパッと思い浮かんだイメージと言うか」


「解ってる解ってる。今更だが、確かにそれもそうかって思ったよ。にしても、クリスティールパイセンにイブキ、デカパイの三人か…………それはそれで、フラベルト学園の人間としてはウェーイ? って感じかもしれねぇけど、そっちのステラとかレオナはなんでそういうのに入らねぇんだ?」


クリスティール、イブキ、ミシェラの三人が選ばれる可能性はあるだろうなと思ってはいたが、ステラとレオナが選ばれないのは意外だった。


「イシュド。確かにステラ様とはこうして関わらせてもらっているが、私としては雲の上の存在……というのは少し言い過ぎかもしれないが、それに近い存在なのだ」


「俺としても、同じ感覚だな」


侯爵家の令嬢。

まず、これだけでもヨセフとパオロとしては高嶺の華といった存在であり、加えてその強さと存在感……それらの要素から、もはやそういった存在として考えてはならないといった思いすら憚れる女性。


それが、ヨセフとパオロから見たステラ・ファスティーウという女性である。


(学園に、ただのアイドル的な存在がいるってわけじゃなく、ガチのアイドルがいるって感じか……まぁ、それなら解らんくもないな)


同じ人間であり、同じ学生……共通点と言えばそこだけであり、生活している空間が違う。

そう感じさせる存在であると認識してるのであれば、ヨセフやパオロのステラに対する考えも理解出来る。


「二人からすれば、高嶺の華過ぎるってわけか」


「うむ……付け加えるなら、そういった恋愛感情よりも先に、敬意を持ってしまう」


「敬意ねぇ…………お前らの思考や道先? とかを考えれば、そうなるのか」


フィリップも何となくではあるが、二人の考え方が理解出来なくもなかった。


「んで、エリヴェラはどうなんだよ」


「お、俺は…………勿論、ヨセフやパオロ先輩みたいに恋愛感情よりも先に敬意を持ってしまう。後、入学してからよく気に掛けてくるっていうのもあって……あんまりこういう事を言うと他の学生たちから良い顔をされないんだけど、姉の様に思えるんだ」


恥ずかし気に話すエリヴェラを見て、どこかほっこりさを感じるイシュドやシドウ。


知り合ったばかりの時であればまだしも、ヨセフやパオロもエリヴェラの実力を既に認めていることもあり、ステラを姉の様に感じているエリヴェラに対し、あれこれ文句を言うことはなかった。


「姉みたいな感じかぁ~~~……それなら、確かに恋愛対象とかには入らねぇか」


「そうなんだよね。なんて言うか、敬意と同じで先に感謝がくるというか」


「おっけーおっけー、なんでステラが選ばれねぇのかは解った……んで、なんでレオナは選ばれないんだ?」


イシュドから見れば……あくまで、イシュドの私的感覚的には全然そういう対象に思える女性である。


「がさつって言うか、大雑把過ぎる感じ……もしくは、あまりにも貴族令嬢じゃない感じがするからじゃねぇの?」


フィリップはフィリップで貴族令息らしくない代表の一人ではあるが、その意見は……割と近いものであった。


「そうなんか、お前ら?」


「そ、それはだな……いや、その…………」


「むぅぅ……どう、言うべきか……」


この場に、先輩であるレオナはいない。

別の場所でミシェラたちと楽しく女子会をしており、聞かれることはないが……それでも、どこでどう回って彼女の耳に入るか解らない。


特別後輩にはパワハラ気質という訳ではないが、それでも下手な事を言ってしまうと、なんとなく後が怖いと感じる。


「あ、あれだ……エリヴェラがステラ様に感じた、姉の様な感覚に近いというか……」


「う、うむ。そうだな、そういった感覚に近い存在だ。だからこそ、そういった対象には入らないのだ」


「ふ~~~~ん~~~…………大雑把で振り回されるから、先輩や友人としてはともかく、そういった異性の対象としては見れねぇってわけだな」


「「っ!!!」」


なんとかオブラートに包んで言葉を選んだものの、二人の内心をイシュドはズバリ言い当てた。


結果、二人は体から冷や汗がドバっと流れ始めた。


「まっ、レオナは振り回すっていうか……相手を尻に敷きそうなタイプっぽいからな。それが嫌な野郎からすれば、そういう相手として見れねぇってのも納得だな」


「「…………」」


百パーセント、何故レオナがそういう対象に入らないのか言い当てられ、二人は完全に意気消沈した。


「エリヴェラも似た様な感じか?」


「ん~~~……レオナさんもステラさんと似てて、タイプの違う姉って感じだから……そういうところも、あると思う、かな」


実際のところ、本当にエリヴェラは二人ほどほぼほぼレオナをそういう対象として見れないという訳ではないが、それでも目を掛けてもらっている、日頃から世話になっているという思いから、やはりそういった対象として捉えることはなかった。


「世話になってると感じるから、か……そういう理由もあるんはあるみてぇだからな……とりま、なんで二人が選ばれなかったのか理解出来た」


「それは何より、だ…………しかし、あれだな。イシュドは……こういった話に関しても理解が深いのだな」


「こっちに来るまでは、実家に仕えてくれてる奴らだけじゃなくて、冒険者たちともしょっちゅう喋ってたからな」


野郎らしい下品な会話をすることもあれば、割とピュアな話をすることもあった。

そのため、ヨセフたちのステラ、レオナに対する思いを聞いても、それは違うんじゃないかという否定的な考えは欠片も浮かばなかった。

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