第191話 ある種脅迫
「ルドラ・セレネディーです」
「ヘレネ・ブレヴァラよ」
水色のマッシュヘアー、クールな瞳と雰囲気を加速させる眼鏡イケメン。
赤色のショートウルフヘアー、烈火な瞳を持つ元気美女……あと巨乳。
(ほ~~~~ん…………ふっ。良いね……学園なんざガルフたちと一緒に行動する以外、クソつまらねぇと思ってたが、入学しなきゃ、こういった奴らと出会う機会はなかったんだもんなぁ……まさしく、世界は広いってやつだな)
一応ポーカーフェイスを保ってはいたものの、イシュドは心の中で割と凶悪な笑みを浮かべていた。
「それでは、授業を始める」
集中出来るか!? と、他の学生たちはツッコミたかったものの、バイロンの鋭く強制力のある眼光を飛ばされて抑えられるのがオチと解っているため、誰も文句を口にすることはなかった。
(…………クソが、やっぱりバイロン先生と会長パイセンの言う通りだったか)
時折感じる視線に鬱陶しさを感じながらも、無事に座学の授業は終了した。
そして休み時間……殆どの学生たちがフレアの事を気になっていた。
ただ、イブキの時とは訳が違い、貴族ではなく王族。
他国の者と言えど、どう接するべきか悩んでしまう。
そんな中、その王族であるフレアは席を立ちあがると、真っすぐ……ある学生の元へと向かった。
「初めまして、レグラ家のお方」
「…………どーも初めまして、カルドブラ家の王女様」
「「っ」」
ルドラとヘレネの額に、ピキリと青筋が走る。
しかし、二人ともフレアの護衛として留学に来た意味は理解している。
「イシュドさん、とお呼びしても良いでしょうか」
「別に構わねぇけど、俺は別にあんなた仲良くするつもりはねぇぞ、王女様」
「「ッ!!!!!」」
そこまでだった。
他国と言えど、王族が辺境伯家の人間にここまで丁寧に接する……通常ではあり得ない対応である。
その対応を、イシュドは真正面から興味ないと言い切った。
二人が目的を理解しながらも、怒りが沸点を越えるには十分な理由。
柄にこそ手を伸ばさず、魔力を纏うことも、スキルを発動しなかったが……強く拳を
握り、体から怒りが零れた。
「良いぞ、戦るか?」
「「っ!!」」
「俺はそこの王女様より、お前ら二人の方に興味がある」
先程までのダラけ、適当な態度をしていたクソ生意気な様子から激変。
闘気と狂気に満ちた笑みを浮かべ、奥に闘志の炎を宿す瞳が二人をロックオンしていた。
「俺は、基本的に強い奴にしか興味はねぇ。俺が学園内で関わってる奴らも、学生の中では見込みがある連中だけだ」
「「…………」」
「まっ、それでも俺的にはお前らと関わりたくないんだが……まっ、とりあえずあれだ。ルドラとヘレネだったか。お前ら、この二人と戦ってくれ」
「えっ……」
「……面白そうですね」
「話はそっからだ」
「「…………」」
無茶苦茶である。
二人はイシュドに対する文句を吐き出そうとするが、あまりにも吐き出したい感情が多過ぎるあまり、どの言葉を吐き出せば良いのか分からず……喉に詰まっていた。
「言っとくが、俺がお願いするのは一回だけだ。お前らにその気がねぇなら、今後も関わるつもりは一切ねぇ」
きょ、脅迫だ!!!!!!!!
現在、イシュド達のクラスに居る学生たちは、全員同じことを思った。
あのイシュド・レグラが、他国の王族に対しておそらく脅迫をしている。
クラスメートとして、目の前の蛮行を止めるべきだ。
そんな至極当然、当たり前過ぎる損得勘定抜きの感情が湧き上がるも……鋭い眼光で睨まれ、後ずさりしてしまう未来が思いっきり想像出来てしまう。
「んで、どうすんだ? 俺のダチと戦るのか、戦んねぇのか……どっちなんだ?」
「くっ……フレア様、どうか彼らと戦う許可を」
「お願いします、フレア様」
「勿論、許可いたします。イシュドさん、あなたのご友人と二人の試合はいつ行いますか」
「戦闘訓練の授業中だと……がっつり暴れんのはバイロン先生が許さねぇだろうから、今日の授業が全部終わった後、放課後だな」
「分かりました」
こうしてガルフとイブキ、ルドラとヘレナのタッグバトルが開催されることが決定した。
「どういうつもりなのか……言い訳はあるか?」
「イシュド君、先日から伝えていたと思いますが……何故あのような態度を?」
「………………」
昼食中、ガルフたちと食堂に向かう前にバイロンに拘束され、生徒会室へ連行されたイシュド。
フレアたちと一件は、丁度バイロンが教室を離れた時に行われたため、バイロンがその一件と結末を知ったのは数時間後だった。
(……飯があるのは不幸中の幸いか)
幸いにも、昼食は生徒会室に運ばれてきたため、イシュドにとって最悪は回避された。
「……いやぁ~~~、だってさぁ~~~バイロン先生ぇ。やっぱ無理だって、クソ面倒過ぎるって」
「まだフレア様に面倒な絡み方をされた訳じゃないだろう」
「バイロン先生、確かにあれだぜ。俺は一切社交界とかに参加してなかったから、腹の探り合いとかそういうのはクソ苦手っすよ。けど、向けられたことがねぇ視線を向けられれば、相手が何を考えてんのかある程度解るってもんすよ」
「…………やはり、お前との交流が狙いか」
「じゃないっすか」
王族であるフレア・カルドブラはイシュド以上に感情、思考を隠すことに慣れてはいるが、状況から計算して相手が何を考えているのか……それを察する力に関しては、イシュドも負けてない。
「カルドブラ王国で何が起きてんのか知らねぇっすけど、あんな俺に欠片も興味がねぇ、そもそも俺の好みじゃねぇタイプに狙われても、逆に萎えるってだけっすよ」
「……イシュド、さすがにそれを私たち以外の前で口に出すなよ」
世間一般的に見れば、フレア・カルドブラは超が五つぐらい付く美女。
しかし、世間一般に当てはまらないイシュドにとっては、護衛であるヘレナ・ブレヴァラの方がよっぽど興味が惹かれるタイプだった。
「とりあえず、もう過ぎた事だし良いじゃないっすか。向こうも下手に出なきゃいけない立場なんだし、どうこうしてこないっすよ」
「「…………」」
予想しているフレアたちの目的を考えれば、イシュドの言うことは間違ってないのだが……二人からすれば、だったら大丈夫だよねとは言えない。
それが一般的な反応であり、間違いなくイシュドの感覚がズレていた。
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