第155話 覚えてないのか?
「……あなた達、容赦なく注文したわね」
「他人の金で食う飯が一番美味いという言葉があるぐらいだからな。当然と言えば当然だろ」
クリスティールがイシュドたちを案内した店で……ガルフも含め、遠慮なく料理を注文した。
「んで、会長パイセン。俺らに声を掛けたって事は、話しがあるんじゃねぇの」
「ふふ、バレバレでしたか。イシュド君の言う通り、今日はあなた達に話があって声を掛けたの。実はね……教師たちの話も踏まえた上で、イシュド君たちにはクエストを受ける権利を与えることになるの」
「「「「っ!!!!????」」」」
「ほ~~~~ん」
驚きを隠せない四人と、すんなりとクリスティールの言葉を受け止めたイシュド。
「なっ、あなた何故そんな落ち着いてられますの!!!!」
「なんでって、俺らが例外的な存在だから、教師連中も俺らがそのクエスト? を受けても良いって判断したんだろ」
「あら、イシュド君は知っていたのね」
「うちの実家に仕えてる騎士が教えてくれたんだよ。王都の学園では、二年生から冒険者ギルドで働く冒険者たちの依頼書と似たクエストがあるって」
元々知っていた訳ではない。
それにフィリップたちは……何故かイシュドらしさを感じた。
「その通りです。本来であれば、学年が上がって二年生になってから受けられるものですが、イシュド君とガルフ君、フィリップにミシェラ、そしてイブキさん。後、ここにはいないけどアドレアス様もクエストを受けても問題無いと判断されました」
「アドレアスの坊ちゃんもか…………どんまい、って感じだな」
「どうして、イシュド」
「だってよ、あいつだけ許可されたってことは、あの坊ちゃんの腰巾着共はそのクエストを受けられねぇってことだろ」
「……あっ」
特例中の特例として、まだ夏休みが終わったばかりの一年生に許可を出したのだ。
学年全体で見れば上位に入る実力を持っていたとしても、腰巾着共だからといって、無理矢理同行することは出来ない。
「あの……何故、私まで? 私は激闘祭というものに参加してないのですが」
「留学する際、教師の一人と全力で戦ったとお聞きしました。その教師の評価曰く、フィリップたちと遜色ない実力を有していると判断したようです」
「そう、なのですか」
クリスティールの説明に、フィリップはレグラ家での試合内容を思い出し……心の中でうんうんと何度も頷いた。
(同じ一年の中で、俺の動きに対して一番対応してきたのはどう考えてもイブキだった。対応力や、一撃必殺の威力とかも考えれば、妥当だろうな)
ミシェラとガルフも、あの激闘祭に参加してないイブキが何故、と思うことはなく、自分たちがクエストを受けられるならイブキも受けられて当然だと思っていた。
「つってもよ、会長パイセン。俺……別に実家以外の騎士になるつもりはねぇぜ」
退屈を紛らわす何かになるとは考えていた。
しかし、イシュドはクエストを受けて評価が上がったとしても、実家に仕える騎士以外になるつもりは欠片もなく、他の騎士団でも……といった気持ちが芽生える可能性は完全にゼロ。
「ていうか、クエストを受けるにしても、それなりに面白れぇ依頼じゃないとな。それとよ、そのクエストを受けてる間、学園での勉強とかどうなるんだよ」
「クエストを受けている間、座学や実技を受けなくても問題ありません。公欠扱いというやつです。座学に関しては、教師たちが洋紙に内容を纏めてくれます。加えて、あまりにもクエストを受けている期間が長ければ、座学の試験が免除される場合もあります」
「ほ~~~ぅ。座学試験の免除、か。そいつはありがてぇっちゃありがてぇな」
イシュドはレグラ家の人間だからといって嘗められないようにするため、入学試験の座学の為に頑張って知識を詰め込んだが、普通に座学は好きではない。
学園で授業を受けてる際も、常にさっさと終われと思っている。
「とりあえず受けても良いかなとは思った。んで、俺ら四人がいる前でそれを伝えたって事は、俺らでパーティーを組んで挑めってことか」
「その通りです。その……本当はアドレアス様とも一緒にパーティーを組んで欲しいのですが」
「絶っ、対に嫌だ」
「やはりそうですよね」
絶対にイシュドがどうこうせずとも、向こうから問題を持ってきてしまう。
その未来が見え見えであるため、クリスティールもあまり強くは言えなかった。
「つか、あいつの場合二年生の中にも組みたいって思う連中はいるだろ」
「…………分かりました。元々強制出来ることではありませんからね」
「そりゃ助かるぜ。にしても、俺らがパーティーねぇ…………実家での実戦で似た様なことやってたけどよ」
言葉を続けようとしたところで、注文した料理が続々個室に案内され、部屋の中に美味さが充満する。
「うん、美味っ!!!! っと、話しが途切れたな。俺らがパーティー組んだら、どう考えてもフルアタッカーっていうクソバランスが悪いパーティーになるな」
「「「「…………」」」」
全員、魔力が扱える以上、斬撃や刺突の遠距離攻撃は行える。
しかし……傭兵のフィリップは弓だけではなく魔法も使えるが、得意とする武器はやはり接近戦系の武器。
イブキは武家の嗜みとしてそこら辺の弓術士よりも弓が扱えることが出来、馬などの騎乗獣に乗っての狙撃も可能。
だが、やはりメインの武器は刀による斬撃や突き。
そしてイシュドも言わずもがな、ダントツで得意なのは接近戦系の武器を使った攻撃。
「仮に俺がタンクをやるとして……遠距離攻撃担当はイブキか?」
「バランスの取れたパーティー構成をつくるのであれば、そうなるでしょうね」
「だよな~~」
はっはっは!!!! と笑うイシュドだが、他四人は全く笑えてなかった。
「んだよお前ら、無茶苦茶テンションガタ落ちじゃねぇか」
「あ、当たり前でしょう! 自分の実力に自信がないわけではないけど、それでもバランスは最悪よ!!!!」
「…………バカだな~~~~。だからお前は胸に養分を吸い取られ過ぎなんだよ、デカパイ」
「なっ!!!! それは関係無いですわ!!!!!」
約一名だけ、イシュドの言葉に同意していた。
「お前ら、うちの領地にいるモンスターを相手に、どうやって戦ってた」
「どうやってって…………っ」
ミシェラ……だけではなく、ガルフたちも思い出した。
先日まで行っていた実戦。
参加していたメンバーは他にクリスティール、ダスティン、ディムナ、アドレアスの四人がいた。
そしてその四人は……全員接近戦が得意なアタッカーたち。
つまり、つい先日までミシェラたちは戦うモンスターを相手に、基本的にフルアタッカーのパーティー構成で挑んでいたのだ。
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