第18話 男のムラムラ嘗めんなよ
「仕方なかっただろうが。俺は今まで貴族社会に興味がなかったんだよ。十五になってからもモンスターを倒して倒して倒しまくる生活を送ると思ってたんだよ」
「では!! 何故そもそも急にこの学園に入学してきたのですか!!!!!」
「学園長から実家の方に、そろそろ一人ぐらい通わせろってお達しが来たんだよ」
「…………えっ?」
学園長、直々に学園に入学してほしいという頼みが来たというのは、予想を遥かに過ぎた返答だった。
「嘘だと思うか? 俺も嘘だったら良かったと思ってるよ。けどな、残念ながらこれが本当なんだよ。じゃなかったら、そもそも俺は頑張って勉強したりしてねぇ」
「そ、そうでしたのね……って! それとこれとは話が別ですわ!!!!!」
「チッ! 上手く逸らせなかったか」
まさかのカウンターに怯みはしたものの、直ぐに何故自身がイシュドに対して怒りを持っているのかを思い出す。
「ったく。んじゃ、てめぇは結局何がしてぇんだ? 言っとくが、俺にこの場であれこれ命令したところで、敬語を使えだのそういうしょうもない話は受け入れねぇぞ」
「あなたを試合で倒せば、話は別なのでしょう」
「ほぅ……一応、やる気はあるみてぇだな」
言う事を聞かせたいのであれば、力の差を解らせればいい。
イシュドに対する方法を金髪ツンツン縦ロール……ミシェラ・マクセランは見抜いていた。
「けど、俺は俺がスッキリしたいか、もしくは俺に利がない戦いをするつもりはねぇ。もし、てめぇがあのバカ二人みてぇに俺の忠告を聞かねぇなら……そうだな、お前の顔がお前だと解らないぐらいぐちゃぐちゃに殴る」
「ッ!?」
「それぐらいの覚悟を背負うなら、お前は何も賭けなくて良い。まぁ、何か賭けて戦うってなら…………まぁ、お前が用意するもんしだいな」
イシュドは中々に悪党らしい考えを思い付いたが、さすがに却下した。
ミシェラの胸は一番下から八つ目のサイズと、中々に強い万乳引力を秘めている。
めんどくささはともかく顔、他の腰や尻といった部分もイシュド好みではあるが、本当の意味でレグラ家の評判を落としそうなため、渋々諦めた。
「で、でしたら……い、一日私とデートする権利を差し上げますわ!!!!」
「…………ふざけてんのか馬鹿野郎。そんな面倒な権利いるかっての、クソデカパイ女」
「な、なんですってっ!!!???」
頬を若干赤らめながら、恥ずかしさを抑えて提案した賭けの内容を、あっさり一蹴されたデカパイ縦ロール。
勿論……というより、残念ながらデカパイ縦ロールことミシェラ・マクセランは本気だった。
しかし、これに関してはデカパイ縦ロールがあまりにも残念で高飛車過ぎる故の提案内容という訳ではなく……侯爵家の令嬢ということもあり、その美貌とスタイルが、実際のところ超モテている。
婚約の話がいくつも舞い込んではいるものの、憧れの存在であるクリスティールがまだ婚約していないという理由で、彼女もまだそれらの婚約を受けていなかった。
当然、これまでデートの誘いはいくつも受けてきたが、その全てを蹴って来た。
男性の知人友人がゼロという訳ではないが、彼らとそういった遊びに出かけることも……付き合いで今まで数回あるか否か。
しかも二人ではなく、男女複数人。
デカパイ縦ロールが提案したデートというのは、当然二人っきりでのデート。
それを本気で賭けの対象として提案したのだ。
だが、それはイシュドからすれば本当にふざけんなという話である。
「こちとら今まで訓練、実戦、訓練、実戦の繰り返しの日々を送って来たんだぞ。その生活に全く不満なんてねぇが、お前らみたいな女のエスコートなんて一回もやったことねぇんだよ。俺にとっちゃ退屈という名の拷問だクソデカパイ」
「そ、それは……って、あなた! その暴言は何ですの!!!!!」
「碌な提案が出来ないんだからクソデカパイで良いだろうが」
「全くよくありませんわっ!!!!!」
見てくれは十分であり、体つきは十二分。
そんな女性が朝から晩まで隣に居れば、歳頃の性欲耐えられるわけがない。
勿論、それを耐えるために理性がある。
イシュドも耐えようと思えば耐えられる自信がある。
しかし……それはある意味寸止めを食らっているのと同じ。
やはりふざけんなクソデカパイ女と暴言を吐きたくなる。
「うっせぇ、うっせぇ。ったく……んじゃ、その左手に付けてる指輪をよこせ。それ、ただの指輪じゃねぇだろ」
「ッ!! これは……」
「おいおい、俺はその指輪で構わねぇって言ってるんだ。こっちはお前に頼まれてる立場なんだ。別にこのまま受けなくても良いんだぞ」
「わ、分かりましたわ!!! 明日の夕方四時! 第二訓練場で試合を行います!!!!!」
「あいよ。んじゃ、おやすみ~~」
用が済んだらとっとと退散、解散。
当たり前といえば当たり前の流れなのだが……やはりクソデカパイ縦ロールの神経を逆なでる結果となった。
翌日の夕方過ぎ。
どこから聞きつけたのか、訓練場には多くの学生たちが集まっていた。
そのため、急遽教師たちによって頑丈な結界が張られ、試合の舞台が整う。
因みに、今回もガルフの隣にはイシュドが頼み込んだ結果、担任教師のバイロンが
立っていた。
「……ガルフ、簡潔に昨日何があったか説明してほしい」
「えっと、その……クリスティール先輩と昼食を食べた後、二人で王都を観光して、そのまま夕食を食べてから学園に戻って来たんです。そしたら、あそこに居る二人とミシェラ・マクセランさんがいきなり絡んできました」
「つまり、彼女が一方的に絡んで来たということか?」
「そうですね……どうやら、イシュドがクリスティール先輩と一緒に昼食を食べたり、クリスティール先輩やそのご実家? をそれなりと評したことが気に入らず、先日の夜、正門で絡んできました。あんまり本人の前では言えないんですけど、完全に私情なのでイシュドは悪くないと思います」
「そうだな。確かに今回もあいつに非はないと言えるだろう。そうか……そうだな。クリスティールに向かってあの様な態度を取れば、ミシェラが出てくるのは当然のことだったな」
生まれは違うのだが、ミシェラがクリスティールをお姉様と呼び親しんでいるのは、フラベルド学園の教師であれば周知の事実。
関りがない学生であっても、彼女たちの仲の良さやミシェラがクリスティールを超尊敬していることを知っている者は多い。
「ところで、ミシェラは対価を用意したのか?」
「はい。そこでもちょっと問題があったんですけど、なんとかなりました」
「そうか、それは良かった」
悪い意味? で男女平等であるのは間違いない。
そのため、一先ず予想していた結果にならずに済んで良かった、ホッと一安心であり、胃薬という名のクソ不味いポーションを飲む必要はなくなった。
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