幼馴染と普通の恋人

二髪ハル

プロローグ 

鉄也てつや。恋愛ってしたことってある?」

「……?」

 部屋に遊びに来ていた幼馴染の筒井つつい 紅羽くれはが突拍子なく聞いてきた。

「ないよ」

「……だよねぇ」

 そのまま紅羽はだらっと俺の漫画の方に目を向けていた。

 俺、中村なかむら 鉄也てつやはというと恋愛なんて16年間したことがない。

「なにどうした急に」

「……まぁ、普通に恋愛って興味あったから鉄也はあるのかなーって」

「紅羽の方こそ恋愛経験あるんじゃないか?」

「ないない」

 紅羽が首を思いっきり横の方に振っていて髪がユサユサと左右に揺れていた。

「……それで紅羽は恋愛したいのか?」

 現実の恋愛自体。あまり紅羽と話したことがないから興味本位的な気持ちはある。

 ゲームを一旦止め、紅羽の方に視線を向けた。

「あるね……」

 あるんだな。意外といえば意外ではある。

「なに好きな人でもいるのか?」

「好きな人? …………まあいるね」

「マジかよ!?」

 なんかこっちまで嬉しい気持ちではある。

「なにだれバスケ部の人? それとも野球部か? サッカー部?」

 運動部ばかりが多いが大抵顔立ちがいい奴らだから紅羽的にも好きになったんだろう。

「違う違う」

 否定された。

「それじゃあ生徒会長とかか? イケメンだし」

「違う違う」

 それも違ったらしく首を振っていた。

「じゃあ誰なんだ?」

「……普通に恋愛するなら鉄也かなって」

「え?」

「……」

「……」

 数秒間。本の方を向いていたがパタンと閉じてこっちの方を向いていた。

「マジで?」

「うん。恋愛するなら鉄也がいい。知らないに色々と合わせて疲れるよりも鉄也とこうしてダラける方が気を使わなくて好きだし」

「けどわかる気がする。知らない奴に合わせて別れるって話を聞くし。中にはアニメのキャラを付けただけで毛嫌いして。付き合うのを嫌がる人が居るぐらいだからな。自分から勝手に降りて文句を言う奴なんかと付き合うつもりはないけどな」

 紅羽が小さく頷いてくれた。

「そういった人なんかと付き合わない方がいいよ。苦しいの自分だから。勝手に趣味を辞めさせてオシャレを念押ししたら着ても、付き合わないのが現実なんだから。それだったら鉄也が好きなのに熱意を注いだらいいよ」

「だよなアニメの話をしても普通に紅羽と変わらない日常の方が好きだな」

「……恋愛わからないけど。これからも宜しくね鉄也」

「あぁ、宜しく紅羽」

 お互い小さく頷いていた。

「……」

 こうして紅羽と変わらない恋人として日常が始まった。

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