大切な友人ですよ?
冒険者は依頼を受ける際、基本的に複数人でパーティを組んで向かいます。一人でできることなんて限られていますし、とくに野営なんて一人じゃ絶対できませんから。
私もだいたいの場合は友人を誘ったり、友人に誘われたりして仕事を始めることが多いです。私一人でもどうにかなりそうなら、転移でぱっと行ってぱっと帰ってくることもありますが。楽なので。
とは言え、どうしても人数が必要になる場合の方が多い。そこで、冒険者ギルドの友人たちから、暇のありそうな数人に声をかけるというのが、私のよくあるパターンです。
けれど、案外暇を持て余している冒険者って少ないんですよねえ。その上冒険者ギルドって男ばっかりなものですから、数少ない女性たちと、比較的信用のできる男衆しか頼れません。
いい依頼があったのに同行できる仲間が見当たらず渋々諦める、ということも少なくない。
そんな中、私とだいたい境遇が同じで、かつよく暇そうにしているので、しょっちゅう同行してもらう友人がいます。私と同じく冒険者ギルド準登録の魔術師、トミダ君です。
彼は魔術の腕も申し分ないですし、歳の割に落ち着いているので、向う見ずな無鉄砲さもなく、安心して同行することができるのです。
私と彼は魔術師ギルド内では「魔術師なのに戦いたがる変人」と思われています。まあ間違ってもいないでしょう。
ただ私たちの考えが全く同じかと言われると、実はそうでもなくて。
私は冒険者になりたいという目標のために、魔術師になったクチです。根っこの憧ればあくまで「冒険者」なので、そりゃあ戦いたいでしょう。
しかしトミダ君は「魔術師なんだから魔物を相手に戦うものだろう!?」という考えを持っているのです。酒を飲むとよくそう零しています。そんな考え方をしているからか、一部の冒険者が簡易魔術を使うことをえらく喜ぶのです。簡易魔術の開発にも積極的。
正直、私もこの考えはイマイチ理解できていません。彼は「魔物を魔術で屠ってこそ魔術師」だと言いますが、一体どんな環境で育てばそんな思想を持つようになるのでしょうか……。そこそこ育ちは良さそうですが、親によっぽど変な教育でもされたんですかねえ。
私は変人でもまだ理解の余地のある方だと思うのですが、彼はもっと根本的な部分で、感覚がズレているようです。
それはそれとして、冒険者兼魔術師仲間として気が合うのも確かなので、よく一緒に依頼を受けます。
食事やら寝床やらに変にうるさいところを除けば、だいたい普通の人ですから。「何考えてんだこの人」と思うことは多々あっても、大きなトラブルに発展しないというのは、冒険者の中では結構ありがたいことなのです。
これは蛇足ですが、彼は現在恋人を募集しています。せっかくなので広めておいてあげましょう。私は友達思いなのです。
顔立ちは異国風ですが悪くないですし、腕っ節もある上に魔術師ギルド所属なので収入もわりと安定しています。この前受付嬢を相手に玉砕をかましていたので、慈悲を恵んでやらんでもないという方は是非。
いや、良い人なのですよ?だから、そのうちいい相手が見つかるだろうと思っていますし、こうして応援もしています。
それなら、お前が付き合ってあげればいいだろって?
それは読者様、まあ、まあ。あまり残酷なことは、明言しないでおきましょうよ。
強いて言うなら、それとこれとは話が別、というやつです。
(エスメラ)
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