処分、始末、用済み。
カーテンの閉め切った暗い部屋の中央で、椅子に縛り付けられ頭に袋を被せられた男。
「……で、これは一体どういうこと?」
それを遠巻きに眺めるのは我ら三人。
「喧嘩して出て行ったかと思えば、それから一時間と経たずに戻ってきて、その挙句よりにもよってこの場所に敵を連れて来るだなんて!
ちゃんと納得出来る理由があるんでしょうねぇ?」
不満げに腕を組み、冷ややかな視線をウェインへと注ぐロイ。
「俺だって戻ってくるつもりは無かったさ」
ロイの言葉を背中に聞かせながら、鋸や槌といった何やら物々しい道具を、ひとつひとつ丁寧にテーブルの上へ並べていくウェイン。
ゴト……。
ゴト……。
その音はヤケに耳に残り、言いようのない不安を掻き立てる。
「っ……」
だがこの場で最も恐怖しているのは言うまでもなく彼だ、彼はこれから自分が辿ることになるであろう未来をほぼ正確に把握していた。
「そもそもコイツはなんなのよ、何処から引き摺ってきたわけ?」
「もちろん奴らの拠点だ」
「なんですって……?」
目を見開き、組んでいた腕を解くロイ、ポカーンと口を開けたまま顔を横に振る。
「なんだってそんな無謀なことを……」
「無謀じゃない、ちゃんと勝算があってやった事だ、考え無しのお前と一緒にするな」
普段のロイならばここで食ってかかったのだろうが、よほど彼の言葉が衝撃的だったのか、未だショックから立ち直れずにいるようだ。
「進めてた盗みが、街で突然起きた`騒ぎ`のせいでご破算になり、お気に入りの隠れ家がぶっ壊されたうえトドメにお前との言い合いだ
頭に来るだろういい加減、だからこの辺りの地形から集団が隠れ潜むのに適している場所を総当りにして、一網打尽にしてきたってワケだよ」
「そんな事をする奴だとは思わなんだ」
それまで黙っていた私だが、ロイの復帰がどうやら見込めなそうなので代わりに声を出した、実際驚いたのは私とて同じことだ。
「普段はな、俺はなるべく危険な賭けはしないんだ、だが今回ばかりは流石に我慢ならねぇ、テロリストだか何だか知らんが必ず全員に後悔させてやる」
そう言って、男の顔に被せられた麻布を剥ぎ取るウェイン。
「そうだろ、テロリストさんよ」
`テロリスト`そう呼ばれた男はキッと反抗的な目をウェインに向けた。
こういった手合いは大抵、他者の思想に染められた意思無き兵士だ、自らが傾倒し心酔するモノを貶された際の憎悪は凄まじい。
「俺が知りたいのはお前達のバカな頭についてだ」
一層嫌悪の感情が濃くなった、彼の目には確かに恐怖が浮かんでいるが、それを遥かに上回る怒りのパワーがある。
「もちろん知ってるだろ?
下らねぇ爆弾を作って、下らねぇ爆発を起こして、それで民衆の心をどうこうしようとか言うガキの誇大妄想を本気で信じているマヌケのことだ」
「黙れッ!」
尊敬する者に対する侮辱、自分達がやろうとしている事への間違った解釈、どれもこれも連中が死ぬほど嫌がる内容だ。
ウェインの口は止まらない。
「女ひとりロクに捕まえられないような組織が、そんなご大層な計画を成し遂げられるかよ、俺ひとりに拠点を潰されてるようじゃ到底無理だろうな」
ガタッ!ガタンッ!男は今にも拘束を破壊しそうな剣幕で暴れ出した。
「があああああああッ!殺すッ!貴様ら必ず殺してやるッ!教養のない愚か者にはあの方の目指す理想が理解出来ないのだ!資格の無い者は全員——」
ガッ……!
突然加えられた殴打により、発言は中断させられた。
ビチャビチャと血を垂れ流し、下を向いた頭を髪の毛を掴んで強引に引き上げるウェイン、そして彼は男の目を見ながらこう言った。
「——なら命を懸けて、組織の秘密を守れるよな?」
その声の何たる冷たさ、冷徹で冷酷で恐ろしげで、希望など欠片もないかと思わせるような非情な声、思わず背筋がゾクゾクとしてしまう。
それまで反抗的な態度を取っていた捕虜の男も、言葉に詰まってしまったようだ。
ウェインは男の元から離れ、そしてテーブルの上何並べた道具のうちひとつを手に取り、再び彼の傍へゆっくりと戻った。
「お前が真の戦士なら……」
ウェインが手にしているのは錆だらけの鉈だった。
「たとえどんなに苦しむことになろうとも」
彼はそれを見下ろしながら、男の前に立ってポツリポツリと言葉を置いていく。
「決して信頼を裏切りはしない、そうだろう?」
男は何も言わない、いや何も言えない、先程までは怒りで恐怖を誤魔化せていたが今はもう無理だ、ただ黙って固まっているしかない。
「お前の気持ちは分かる、お前がどれだけ連中に心酔しているかはさっきの態度で理解出来た、だから俺も……」
しゃがみこみ、目線の高さを合わせた上で、手元に落としていた視線をチラと上げ、表情の無い顔でこう言い放った。
「容赦しない」
すると彼は直ぐに立ち上がり、私達の方を向いてこのように言った。
「ここからは一対一で話し合う、悪いがお前達は出て行って貰えるか」
この言葉を含めて脅しの一貫であることを理解した私は、ロイを連れて大人しく扉の方へ歩いていき、ドアノブに手をかけて外へ出る。
部屋を出る前最後に見た男の表情は、とても使命に殉じて死ねるような覚悟を持っている者の顔には見えなかった。
「……アナタ、ああいうの平気なの?」
二階から降り、リビングに戻る道中で、ロイがそんなことを尋ねてきた。
「私、いつアナタがウェインに斬り掛かるかとヒヤヒヤしてたのよ、だって明らかにそういうの嫌いそうだしね」
「無論、良い気はしないさ」
好き好んでああいうことをしようとは思わないし、選択の自由があるのなら私はそれを選ばない。
だが……。
「アレに怒りを抱くには、私は少々汚濁の中を生き過ぎておる」
必要なら仕方あるまい、そうやって割り切れるようになってしまった今ではもう遅いのだ、今更私が彼を苦痛から救いあげたところで何の意味もない。
自己満足、自己陶酔、身勝手、偽善、本来当たり前のはずの善行を私は純粋な気持ちで行うことが出来ない、ならばそれはもう善意でもなんでもない。
信念を貫けぬ行いはすべきでは無い、迷いを抱えたまま他人を助ける事は出来ない、でなければそれはただの形を変えた悪意でしかなくなってしまう。
「……そう」
ロイは私の答えを聞いて若干俯き、ほんの少し自嘲気味に笑ったかと思えば、次の瞬間にはケロッとしてこんな事を言った。
「ほらっ、さっさと横になっちゃいなさい、なんたってアナタはまだ怪我人なんですから、また倒れられでもしたら大変だわ
薬の貯蓄も十分とは言えないし、そもそも治療用の設備も無いんですもの、無理して悪化でもされたらいよいよ見捨てなきゃいけなくなる
そんなの嫌よ私
アナタとはもっとゆっくりお話がしてみたいの、きっと私達良い友達になれると思うわ、だからこんな所で死ぬようなお馬鹿な結末にはならないでね」
「お主は前向きじゃな」
「足元見てたって迷子になるだけ、それならとにかく向かう先を見失わないように務めるのみ、私のモットーよ剣士さん」
ロイは一階にある空き部屋の前まで私を案内すると、『じゃあね』と言ってリビングに姿を消した。
「……では、少し休ませてもらうとしようかの」
怪我を抜きにしても疲労が溜まっている、海の上では十分な休息を取ることは出来なかったし、使える時間は有意義に消費しよう。
二階から聞こえてくる悲痛な叫び声に耳を塞ぎつつ……。
✱✱✱✱ ✱✱✱✱ ✱✱✱✱ ✱✱✱✱ ✱✱✱✱ ✱✱✱✱
——コンコンコン。
「もしもし起きてる?情報が聞き出せたそうよ」
仮眠を取っていた私は、ロイのそんな声に目を覚ました。
比較的グッスリ眠れた方だと思う、よほど疲れていたのだろう、柔らかいベッドだったとはいえ慣れない場所でこれだけ休めたら十分だ。
「今行く」
掛け布団を押し退けて体を起こし、軽くストレッチを行って調子を確かめたあと、一度頷いてケガの回復具合に満足する。
傍に置いていた刀を手に取り、腰に差し、扉を開けて廊下に出る。
「おはよう、よく眠れた?」
「驚く程にな」
「見かけによらず図太いのね」
二人並んでリビングに向かう、休息を挟む前と比べて足取りが軽い、もし次の瞬間戦うことになったとしても問題なく動けるだろう。
そんな私の姿を見て、ロイは怪訝そうな表情を浮かべる。
「アナタ、ひょっとしてもう動けるの?」
「あの脱出劇がもう一度こなせるくらいにはな」
「デサンタス……信じられないわ……」
聞き馴染みのしない言葉が聞こえてきたが、彼女の故郷の言葉だろうか?ニュアンスで何となく意味は分かるので尋ねたりはしないが。
「ウェインも大概だと思ってたけれど、アナタはやっぱり規格外ね、つくづく敵に回さなくて良かったと思うわ」
「敵か……」
私の成し遂げようとしていることが知れたなら、きっと状況も変わってしまうだろう、世の中を渾沌に陥れようとしているのは私とて同じなのだから。
そんな事を考えているうちに、我々はリビングに到着した。
「遅い」
そこには既に待っていたウェインが、椅子の上で不機嫌そうに机を叩いていた。
「私の長ーい足には、この家の廊下は狭過ぎて歩きにくいのよ」
やれやれと身振りをしながら、ソファの上に腰を下ろすロイ。
「言ってろ」
私は近くの壁に背を付けて寄り掛かる、万が一敵襲があっても迅速に動くためだ、前回のようなことがまた起こらないとも限らないからのう。
「場馴れしてるな、お前もマトモな出じゃないだろ」
そんな私の様子を見て、口元に笑みを浮かべたウェインがそんな事を言ってきた。
「かもな」
ぼんやりと誤魔化しておく。
あまり自分のことを不用意に話すべきではない、特にこの男に対しては。
こやつ今は味方でいるが、状況が変われば何の迷いもなく敵となるであろう、私を見捨てようとしたのもきっと厄介払いがしたかったからだ。
「そういえばアイツはどうなったの」
「生かしておく理由がもう無い」
「そう」
やっぱりな。
利用出来るうちは利用する、それが済んだら消えてもらう、分かりやすくも恐ろしい行動原理だ、こういった手合いは常に情報を集めている。
こちらとしても警戒せざるを得ない、隙を見せれば寝首を搔かれかねない、私の目的が英雄殺しであることは黙っていた方が良いであろうな。
「何か分かったの」
「知りたかったことが知れた」
「親玉についてか?」
『その通り』と彼は言い、前の方へ出て行って皆の視線を集めた。
そこから先、私の気が休まることは無かったと事前に言っておこう、彼が話終わるまでの間このアマカセムツギは動揺が表に出ないよう務めた。
何故ならそれは。
「奴の名前はミシェリア=クレセント、先の大戦にて最も多くの敵を殺した男であり、今の世の中では『英雄』として呼ばれている存在だ」
それは私の思いもよらなかった誤算、この街に来たのは確かに英雄殺しの為だが、それは今聞いた名前の者を倒す為では無い。
私が狙っているのはラトラス=レオーネという男だ、ミシェリア=クレセントは騎士団でも中々情報を集めることが出来なかった者の名だ。
「……英雄、英雄ですって」
「奴はどうやらこの街に居るらしい、なんでもとある学校に教師として勤務しているんだとよ」
——それが今、手の届くところにいる。
「よくそんなこと聞き出せたわね?」
「色んなやり方があるのさ」
表情を固める、姿勢を弛める、反応が表に出そうなのを必死に押し殺す。
絶対に悟られてはならない。
「それで、親玉の名が知れてこれからどうするのだ」
ここまで口を閉ざしたままというのも変だ、故に当たり障りのない至極当然な疑問を口にする、実際私も気になっていた所でもある。
「もちろん逃げるに決まってるだろ、いくらなんでも分が悪過ぎる、万に一つも勝ち目は無いしこれ以上首を突っ込んでも殺されるだけだ」
「……そう、ね」
反論するかと思われたロイも、大人しく彼の意見に賛同してみせた、それほどまでに『英雄』の力は強大であるということの証明だ。
「でも世界的な爆破テロでしょう?逃げ隠れしたところで被害に遭わないとは限らないわ、そもそも私は連中に狙われているしね
……しくじった、まさかこんな事になるなんて、いつかツケが回ると思っていたけどこんなに呆気ないものなのね……」
彼女の心は折れてしまっている、今までその瞳には強い希望が宿っていたが、ウェインの話を聞いてそれは消え去った。
「ロイ、俺は元々仕事が失敗した時点でこの街を離れるつもりでいた、ここから相当遠い場所に俺だけが知る秘密の隠れ家を持っているんだ
海の上の隠れ家だぜ
お前に会いに行ったのは初めからお前をそこに逃がそうとしての事だった、だからそう絶望するな、あそこならきっと爆撃からでも逃れられる」
「……」
ロイは何か言いたげな表情でウェインのことを見つめ、結局その言葉は飲み込んで、空元気という表現が良く似合う笑顔でこう言った。
「そういう楽観的な事を言うのは本来、私の役目なのにね」
どうやら方針は決まったようだ。
残る問題は……
「じゃあウェイン、彼女も一緒にお願い」
ロイのひと言で、場の空気が凍り付いた。
それは目には見えない凍結であり、きっと発言者である彼女自身にも伝わらないものであろう、だが確かにこの場にはそれがある。
敵意、拒絶、警戒、そういった種類の冷たい風、私はこんな身の上なので害意に敏感だ、ウェインはどうやら私を招き入れるつもりは無いらしい。
そしてそれは私とて同じことだった。
「悪いが、遠慮しておくよ」
「でも……!」
片手を上げて静する。
「元々私は部外者なのだ、これ以上共に居ては余計な混乱を招くだけ、今まで独り身でやってきたのでな、こちらとしても身ひとつで居た方が何かと楽だ」
明確な拒絶の意思、ロイは私の決意が変わらないということを悟ると、非常に不満げな態度をしながらも大人しく引き下がってくれた。
「ごめんなさい、本当に」
「言っただろう?厚顔無恥であれと、お主が気負う必要は全く無いし、そもそもこうなったのは私が自らの意思で首を突っ込んだからだよ
再び自分勝手をさせてもらうだけじゃ、だからお主が言うべきは謝罪の言葉ではなく根拠の無い脳天気な励ましじゃ」
ロイはおかしそうに笑い、良い笑顔を私に向けて言った。
「なにそれ、とても傷付くわ」
その顔にもう絶望は無い、ただ先を思う弾丸娘の姿があるだけだ。
「ようやく厄介払いが出来たぜ」
「迷惑を掛けたな」
ウェインの方も特に私を惜しむことは無い、むしろこうなってくれて良かったと言わんばかりの態度をとっている。
そのおかげでロイから蹴りを食らってしまうのだが、私はこの結果に満足していた。
「行動するなら早い方がいい、港に俺の船が停めてあるからそれで行こう」
「えぇ、じゃあ私は荷物を纏めてくるわ」
「世話になった礼だ、私も手伝おう」
「ありがとう。あ、荷物の中に紛れ込んだってダメだからね!連れて行ってあげないんだから!」
「ははは」
そんな冗談を言えるくらいには、彼女は回復していたようだった……。
✱✱✱✱ ✱✱✱✱ ✱✱✱✱ ✱✱✱✱ ✱✱✱✱ ✱✱✱✱
——暗い夜道。
この辺には街灯が無く、本来であれば月明かりを頼りにするしかない、右も左も今にも怪物が飛び出してきそうなほどに不気味だ。
そんな中をひとりで歩く、
さくり、さくり、さくり。
砂利が靴底で擦れる音、着物が立てる衣擦れの音、あるいは規則正しい呼吸音やリンリンという虫の鳴き声、この場における音の種類は実に少ない。
人は居ない、こんな場所に賑わいはない、『街』と呼ばれているのはここではなく、ここから数キロ離れた場所のことだ。
雲に隠れていた月が顔を出す、光柱が差し込み辺りが照らし出される。
だが私にとっては夜も昼も変わりは無い、ただ見え方が違うだけで視界に支障はない、遠くのモノだってよく見えている。
——無論、気配も。
「やはり来たな!」
おもむろに私は立ち止まり、片手を刀に引っ掛けダランとさせながら大声をあげた。
数秒、間があって、数少なかった音の種類に新たなる仲間が加わった。
「奇遇だな、剣士」
見慣れた姿、聞き慣れた声。
空から降り注ぐ月光が、彼の腰に吊るされた銀剣に反射し青白く輝いている。
「ロイのことは良いのか」
「アイツには先に島に行くように言ってある、俺は荷物を取りに来たんだ」
「`処分しに来た`の間違いではないかの」
トーマス=ウェインは我が行く手を阻むように立ち塞がり、その腰の剣をゆっくりと抜いて見せた。
「……かもな」
左右を建物に囲まれた直線の通路、逃げ道はなく、また隠れる場所もない、辺りに人の気配は感じられず邪魔立てが入る様な心配はない。
立ちはだかるのは手負いの剣士、しかしコンディションはすこぶる良好なようだ。
……話し合いが通じる雰囲気ではなかった。
現に彼は、その手に剣を持った瞬間から一切の言葉を発していない、己の胸の内を明かすつもりは無いという明確なる意思表示であった。
ただ剣山の針のような冷酷な視線が向けられる、そこに情は無く、温度は無く、おおよそ同じ人間だとは思えないほどに『違って』いた。
私が何処に行こうとしているのか、何を目的にしているのか、それすら最早どうでも良いのだろう。
トーマス=ウェインは決断したのだ、ただ目の前の女を必ず殺すと。
それ以外に必要なことは何も無い、ならばとうに言葉は不要。
私はこれからテロ組織を潰しに行く、たとえ同じ穴のムジナであったとしても、無差別爆破テロなどという所業は到底許容できるモノじゃない。
奴らの頭目が英雄であろうがなかろうが関係ない、私はハナから奴らの存在を許すつもりはなかった。
ロイの傍を離れずにいたのは、そうする事で彼女の命が危険であると判断したからだ。
だがその必要はもうない。
彼女はウェインが、責任をもって安全な場所に避難させているはずだ、そう確信することが出来なければこの男はここに現れたりしていない。
——鯉口を切り、刀を抜いてゆく。
誰かに刀を向けるのは、この旅が始まってからもう何度目になるだろう?
大勢切ってきた。
そしてこれからもう一人、切ることになる。
両手に重みを感じて立ちはだかる罪科と向き合う、来るはずのない待ち人を待ち続けるロイの姿を頭から振り払って、冷たく精神を閉ざしていく。
——あとはただ、殺すだけ。
「……いざ参る」
トーマス=ウェインは変わらず、新鮮な殺意が籠った眼差しを、私へ向けているだけだった……。
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