親族室使用料35000円(会員価格)延長料1日20000円
遺体を葬儀場へ移した。私ら家族も一度葬儀場へ向かう。
葬儀社は祖父、叔父、祖母の時も利用したところである。いつ連絡したのかと思っていたら、病院にいるときにすでに連絡をしたのだそう。
「夜中でも対応してくれるんやね」
「待機してる人がいるみたいやね」
そういうもんなのか、と感心した。人って急に死ぬからなあ。
会場は一番小さいところを指定した。警察署から遺体を移すときに、母が葬儀社の人に念のために重ねて言っていた。
葬儀場へ行き、親族控室に入った。叔父と祖母の時にも使った部屋なので、見慣れている。
父が奥に寝かされていた。
葬儀社の人が入ってきて、祭壇を整えていく。
線香は普通の線香と巻き線香が用意された。巻き線香は、一晩中火が付き続けるというものだった。これのおかげで、線香の火が絶えないようにと寝ずの番をしなくてもいいのだ。
前回、祖母の時には置いてなかった気がする。
いろいろと進化しているんだと感心した。
末期の水の説明を受けて、早速父の口を濡らす。ここでようやく父の顔を見た。
「寝てるみたいやなあ」
あんまり苦しんでなさそうな顔だった。
「おばあさんに似てるなあ」
「そうやろ」
父はずっと祖父似だと思っていた。しかし、この寝顔のような死に顔が祖母の時と重なったのだった。
「ここの兄弟、みんなおばあさん似や」
「いや、そんなことないけど」
叔母は確実に祖母似だとは思うが。叔父の死に顔はやけに祖父に似ていたのだった。
叔父が死んだとき、もう一人の叔父は弟の顔を見て
「親父に似とるなあ」
としみじみ言っていたのだ。そして、父と二人して若返った若返ったと繰り返していた。遺体をきれいにする際に数年ぶりにひげを剃られたからだ。
再び葬儀社の人と話をする。通夜と葬儀をいつにするか。
この日はすでに14時を回っていたので、通夜を行うことは無理だった。
お坊さんの都合もある。まずは連絡をと言われる。
明日、通夜が行えるという前提でさらに説明を受ける。
明日に通夜を行うと、葬儀の日が友引になる。気になさるのなら日をずらしますかと問われる。
「気にする?」
「気にしない」
「気にしない」
全員一致で、「気にしない」だった。最短でできることを希望する。
「もうだいぶ涼しくなってきましたので、遺体はそこまで痛まないでしょうが」
「いえ、早い方がいいです」
母は強く希望した。
「だって、それだけ長く置いたらドライアイス代も余分にかかるし、ここの部屋代もかかるし」
母は語る。言っていることはよくわかる。
すでに一日余分に部屋を使うことが決定しているのだ。それからさらにとなると、またお金がかかる。
「……一回家に遺体を戻した方が安かったのか?」
部屋の使用延長料と霊柩車使用料を天秤にかけてそう思った。
「いいや! そんなことない!」
母は強く否定した。
確かに、祭壇を家にも用意して、布団も用意してとなるとお金がかさみそうである。布団も祭壇も使いまわせれば、費用は抑えられるかもしれないが……
なにより、配偶者の母の希望が通ることが一番である。
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