第36話 妖刀-血桜


ーーアーマータラテクトとの戦闘が始まった。


「弱点は火属性だから、俺とウルで弱点を攻める。前衛は蜘蛛の猛毒と足に注意して攻撃。アイリスは急所の頭を狙う感じで行こう!」


鑑定で得た情報を共有して戦闘に入る。アーマータラテクトの脚が前衛の二人に降り注ぐ。二人は落ち着いて、脚を盾で受流しながら距離を詰めていく。


「《火精霊-イグニル》 お願い!」


ウルの周りを飛んでいた火精霊からウルへと力が流れていくのが分かる。ウルは弓を構えて弦を張ると、弓の中心に炎が発現して放たれる。炎の矢は真っすぐアーマータラテクトへ向けて飛んでいき、前脚に突き刺さり炎上した。


『ギギギィィィィーーーーーー!!!!!』


アーマータラテクトから苦痛の叫び声が響いた。アーマータラテクトはターゲットをウルにかえ、前脚を振り上げる。


「貴方の相手は私ですよ!」


デザイアがすかさず《挑発》を始める。無理やりターゲットを取る。アーマータラテクトはウルからデザイアにターゲットをかえ攻撃を仕掛けた。アーマータラテクトの前脚は確かに頑丈で厄介だが、攻撃する速度はその分遅いようだ。あんな重そうな脚ならしょうがないとは思うけどデメリットが大き過ぎる。


デザイアは余裕を持って〈魔喰盾-GAIA〉で前脚を弾き、アーマータラテクトはその衝撃に態勢を崩してよろめいた。


この隙を狙わないのは勿体無い。俺はエクストラスキル『八星』で火精星を選び、前脚以外の脚を狙い撃ちまくる。8本の内3本をもぎ取った。それにならって、接近していたバラゴスも1本を落とし、負けじとウルが精霊魔法で脚を落とす。それで焦ったアーマータラテクトは周囲に猛毒を撒き散らし暴れ始めるが…


「悪いな!『無限竜の大胃袋ウロボロス』! 全てを喰らえ!!」


アーマータラテクトの撒き散らした猛毒は、掃除機に吸い込まれるように全てを喰らい尽くされた。驚愕して動きを止めているアーマータラテクトを見て終わりにしようと動く。『封影の鎖』を発動して前脚を拘束する。[不動の鎖]で物理耐性が高い鎖なので、そう簡単には壊せない。後は…


「アイリス! トドメだ!!」


前脚が拘束されているので、急所の頭ががら空きになり、アイリスの影の刃がアーマータラテクトの頭を貫くのに時間はそうかからなかった。アーマータラテクトは急所を狙われた事で見る見るうちに体力を減らしていき消えていった。落とした足はそのまま残り、ドロップ品として、<魔石><アーマータラテクトの鋼糸><アーマータラテクトの肉>〈猛毒珠〉を落として消えていった。


「面倒臭いけど、前脚も落としておけばよかったな? あの前脚は頑丈だから防具に使えたんじゃないか?」


「良い素材だとは思うがしょうがないじゃろ? 脚も消えると思っておったからのう。」


「それもそうだな。次があったら前脚も回収するとしよう。」


うん。問題無さそうだな。魔物は強いけど、皆の成長もあり苦戦せずにすみそうだ。


うん!?


「ちょっと待ってくれ! 近くに<宝箱>の反応がある。」


[ワールドマップ]に〈宝箱〉の反応があった。この広大な森で宝箱を探すのは至難の技だ。だけど、この能力のお陰で〈宝箱〉の位置は全て把握出来ている。


「おぉ! あったわ! でもこれ…[ワールドマップ]が無いと見つからないだろこれ…」


近くにあった、毒沼の中から<金の宝箱>が見つかった。反応が毒沼の中にあった時は見つけさせる気が無いだろうと心の中で呟いた。ただ俺は『無限竜の大胃袋ウロボロス』で毒沼を全て喰らって回収したから手間はかかっていない。〈金の宝箱〉には赤い鞘に納まった刀が入っていた。


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鑑定結果 『妖刀-血桜』

ランク 『伝説級』

効果 『血饗桜』『自己進化』『自己再生』

*長い年月人を斬り、魔物を斬り、血を浴び続けた刀は妖刀となり所有者を狂わせ続けた。それは…血を浴び続ける為に……

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「妖刀みたいだな。所持者を狂わせるらしい? 持った感じ問題無いレベルだけどね。」


さっきから頭で囁いてくる声だけど、俺にかかっている呪いに比べれば児戯に等しい。俺は刀に魔力を押し流し黙らせる。


(恭順するか? それとも喰われたいか? お前が選べ! あぁ…わかった。これから宜しく頼む。)


妖刀は恭順を選んだ。俺は刀を振るい、問題無いことを確認して探索に戻った。


巨大な4本腕の熊の<キラーベアー>や巨大な蟻の<キラーアント>の群れ、炎を纏った猪<フレイムボア>などの多様な魔物と戦闘を繰り返していった。今では、ウルと配置を変えて、俺は魔物に合わせて前衛と後衛を行き来きしながら戦闘に参加してる。


俺は外殻が硬い魔物とは相性が良い『救世と破滅の鬼帝』の効果で破壊するので硬さは意味をなさない。まぁ、キラーベアーのように力でおしてくる魔物も技で有利にたてるから問題はない。ただユニークスキル『無限竜の大胃袋ウロボロス』が多種多様の魔物を喰らい続けているため俺の身体も影響を受けている感じだ。


〈妖刀-血桜〉は斬った魔物の血を吸い斬れ味を増していく。それは《血饗桜》の効果で血で刀を強化する。斬れば斬るほど刀は斬れ味を増していくのだ。


スキル『真武術』の効果で初めて使う刀も何となく使い方がわかる。剣とは違い斬ることに特化した武器。


戦術を色々と試しながらも、スキル『指揮』の効果で皆との連携は精度が上がってきている。

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