第9話 タブレットを操作しろ!

「お、きたきた、きたよ」


 ご先祖様が中古のタブレット端末をのぞいて言った。


「あれ、四人いるな」

「四人?」


 俺とほのかさんもご先祖様と一緒になってタブレットを見る。

 もちろん、画像そのものはご先祖様の魔力によって送られてくるのだが、端末は冒険者が落としていったタブレットを使っているらしい。


「すごく便利だよな、タブレットって」


 と、ご先祖様はニコニコ笑顔でそういった。


「電源はどうやってとっているんですか?」

「ああ、生体電池なんやこっち来て見てみ」


 コードを辿っていくと、ダンジョンの隣の玄室に、一頭の巨大なオオカミの魔物が横たわっていた。で、その魔物のお尻の穴からコードが伸びている。


「たまにこういう魔物がダンジョンに潜り込んでくるんや。そしたらつかまえてな、こうして生かさず殺さずの状態にして生体エネルギーを電気に変えて利用しているんや」


 うわ。なんかこう、残酷……。


「あのー。もしかしてこれ、人間でもできます?」


 ほのかさんが俺が思っていたのと同じ質問をしてくれた。


「もちろんや! ケツの穴にプラグさせばええんやで」


 ない胸を張るご先祖さま。

 うわ、こえー。

 さて、タブレット端末を三人で眺めていると。


「うーん、これは和彦と春樹と、美香子ちゃん……。あとひとりは……?」


 つややかな黒髪のショートボブの女の子。

 俺はその顔に見覚えがあった。

 桜子さくらこだ!

 俺の、幼稚園の頃からの幼馴染で、俺にとっては男女問わずたった一人の友達だ。

 なんで桜子が和彦たちと一緒にここに……?


「ちょっとズームして音量上げるぞー」


 ご先祖様がタブレットの液晶をなぞる。すると会話が聞こえてきた。




『ねえ和彦君。慎太郎君はこのダンジョンで……えっと、……だよね?』

『ああそうだ、慎太郎はここでモンスターに襲われて食われて死んだ。だけど、もしかしたら遺品の一つも残っているかもしれない』

『うん、あたし、必ず慎太郎君の遺品をお母さんにもってかえってあげるんだ……』




 うう……。

 桜子お……。

 お前はなんていいやつなんだ。

 桜子は俺が死んだと思って、遺品回収にきてくれたんだな。

 ちょっと感動してると、ほのかさんが叫んだ。


「あ、危ない! 桜子さん、逃げて!」



 タブレットの画面の中で、桜子が和彦に羽交い絞めされていた。

 春樹がさわやかな笑顔でいう。


『まあ、その前にボクたちと気持ちいいことしようよ……気持ちいいのはボクらだけで、桜子さんは痛くて怖いだけだろうけど』




「あいつらぁぁぁ! ご先祖様、なんとかして桜子さんを助けてあげてください!」


 と俺は叫んだ。

 ご先祖様は答えて言う。


「いや今はお前がダンジョンマスターやで。ほら、ここをタップしてみ」


 そのとおりにすると、画面にはいろんなアイコンの一覧がでてきた。そのとなりには数字が書いてある。


「この数字は必要なマナや。マナとはぶっちゃけあたしの魔力。あたしのマナをつかって、このタブレットごしにモンスターをけしかけたり、トラップを発動できたりする」


 なんて便利なもんがあるんだ!

 タブレット万歳!


「現代科学の勝利ですね!」

「いや魔力だっていってんやろ」


 でもアイコンの意味がよくわからん。

 でもとにかく時間がない。

 桜子を助けなければ!

 俺はタブレットの適当なアイコンをタップすると、さらにその横に数字がでてくる。


     保有マナ99999

     消費マナ1

     0/99999


「これは99999匹まで召喚できるっていう意味や。弱いやつほどマナの消費が少ないからいっぱい召喚できるし、強い奴は一匹だけとかある。あたしのマナは消費しても時間とともに回復するんや。ソシャゲと似たようなもん」

「じゃあこれは?」

「コウモリやな」


 吸血コウモリのモンスターかなにかだろう。

 おれはあせっていたので、そのアイコンに99999と打ち込んだ。

 よし、行け! 


「おい、わがかわいい子孫、慎太郎よ。それはほんとにただの草食性のコウモリやぞ、あたしが登場するときの演出用。5~6匹まわりに飛ばしてそれっぽくするだけ」


 そんなこといわれてももう遅い。俺はすでに確定ボタンをタップしていた。



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